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進化し続けるホフステードモデル ~5次元モデルから6次元モデルに~

2014.05.14 宮森 千嘉子

こんにちは!

異文化経営/組織文化の専門家集団、
itimインターナショナルが運営する
「グローバル人材研究所」のサイトへようこそ!

itimの加藤真佐子と宮森千嘉子です。

このたび、ヘールトホフステードの
国民文化の5次元モデルが生まれ変わりました!

今日のブログでは、モデルの何がどう変わったのか、
現行モデルの成り立ちにさかのぼってお伝えしたいと思います。

ヒストリー
ホフステードの5次元モデルは、70年代に
世界各地のIBM社で働く社員の価値観、
動機付けに関する調査結果を
基に生まれました。

ホフステードは、当時としては膨大なサンプル(11万6千人)の
調査結果を統計分析し、
世界で初めて「国民文化」という曖昧なものを数値化して
比較理解するモデルを考案したのです。

これは当時としては画期的なことでしたが、
インターネットの時代になり、文化の研究者達は、
ホフステードが5次元モデルを考案した40年前には考えられなかった
膨大な量のデータを入手する事が出来る様になりました。

そこで、ホフステードは自分のIBMデータに基づく研究成果を
再検証できるデータベースを探し、世界価値観調査と
マイケル・ミンコフという研究者に出会いました。

世界価値観調査とマイケル・ミンコフ
世界価値観調査http://www.worldvaluessurvey.org)とは、
世界中の社会科学者のネットワークが組織している価値観調査です。

1981年にスタートし、現在までに6回の
世界的規模でのインタビュー調査が行われています。
この調査結果は、上記サイトで公開され、
誰にでもアクセス可能です。

それがインターネット時代の恩恵です。
しかし、膨大なデータはそのままでは意味を持たず、
科学的分析手法を使って初めて、意味のある情報を得る事ができます。

ホフステードにとって意味のある分析をしたのが、
ハンガリー出身の異文化理解と組織行動の研究者、
マイケル・ミンコフです。

彼は、世界価値観調査(WVS)を分析し、
次の3つの文化次元を見つけました。

1. 排外主義ー普遍主義
2. 壮大主義ー柔軟・謙虚さ
3. 放縦ー抑制

このうち、排外主義ー普遍主義の次元は
ホフステードの2次元目、個人主義ー集団主義と相関があり、
壮大主義次元は
ホフステードの5次元目、長期志向次元
強い負の相関があることがわかりした。

放縦ー抑制の次元はまったく新しい次元です。

この研究成果に興味を持ったホフステードは、
ミンコフとの恊働研究関係をスタートさせました。

その成果は、ホフステードの著書、
Cultures and Organizations(日本語訳:多文化世界)の
第3版(2010)に記述されています。

第3版は、ヘールト・ホフステード、
ヘールトホフステードの長男ヘルトヤン・ホフステードと
ミンコフ3名の共著書です。

ミンコフはまた、現在itim international の
シニアアドバイザーでもあります。

ミンコフのホフステードのモデルへの貢献
ミンコフのホフステードのモデルへの貢献は、
新しい第5次元と第6次元を見いだしたことです。

IBM調査に基づくホフステードモデルは
当初4次元だけでした。

のちに、中国人の価値観を基に作った
中国的価値観調査の回答を分析して、
第5次元「長期志向」(LTO)が見いだされました。
しかし、調査の対象はIBM調査よりずっと少なく、
23カ国のスコアしか得る事ができず、
5次元モデルの中では少し弱い次元でした。

世界価値観調査(WVS)で
長期志向と似た壮大主義の次元を
見つけたミンコフは、
長期志向次元と概念が似通っており、
明白な相関関係のある設問を使って、
ホフステードの第5次元と非常に似通った、
WVS長期的志向次元を見いだしました。

また、これまであまり比較文化の研究対象とならなかった、
人々の「主観的幸福感」を解明する
放縦ー抑制の次元を見いだしました。

itim international の新しい6次元モデル
itim international では、
ホフステード、ミンコフの最近の研究成果を
広くクライアントにご提供するため、
これまでの5次元モデルを
次のように変更することにしました。

1.第5次元のスコアを世界価値観調査から導き出されたミンコフのスコアに置き換え、名称を長期志向(LTO)から現実主義(PRA)に変更します。

5次元のスコアをミンコフのスコアに置き換える理由は、
まず第一にホフステード教授自身が
ミンコフのスコアを認めて使っておられるからです。

そして、現行の第5次元のスコアは23カ国のものしかないのに対し、
世界価値観調査に基づくミンコフの次元は93カ国のスコアが有り、
他の次元同様の幅広い国同士の比較ができるからです。

名称を長期志向から現実主義に変更するのは、
この次元には両方の要素があるのですが、
現実主義の方が多くの国の人々の実感にマッチ
しているからです。

2.放縦ー抑制 (Indulgence IVR) を第6次元として追加します。

放縦ー抑制次元の定義は、
「放縦の極は、
人生を味わい楽しむ事にかかわる
人間の基本的かつ自然な欲求を
比較的自由に満たそうとする傾向を表し、
対局にある抑制は、
厳しい社会的規範によって
欲求の充足を抑え、
制限すべきだという信念を示す。」です。

この次元は、ある社会の

1)人々の主観的幸福感
2)人々が人生は自分の思い通りにコントロールできると思う度合い
3)人々が余暇を重要だと思う度合い

を反映しています。

放縦の方は
道徳的規範が少ない、
外交的パーソナリティが多い、
楽観主義的などの特徴があり、
抑制の方は、その逆の特徴があります。

ちなみに、日本文化のスコアは、
0から100の分布で42。
スコアのある93国内で49番目。
世界のほぼ平均値です。

日本社会は建前は非常に抑制的ですが、
本音レベルやプライベートでは
結構放縦傾向が許されているから
この結果なのかも知れない、と解釈していますが、
皆さんはどうお感じですか?

第1から第4までのIBM調査に基づく次元には
何の変更もありません。

これら4次元の妥当性については
40年間を通じ多数の追跡調査がなされており、
時代を超えてその意義、実用性は検証されています。
旧5次元モデルの説明はこのブログにも載せていますので、
まだの方は是非ご欄下さい。

今回は少し固いお話になってしまいました。
最後までお読み頂き有り難うございます。

ホフステードとミンコフの最新研究結果を更に詳しくお知りになりたい方は、
G・ホフステード、G・J・ホフステード、 M・ミンコフ共著 岩井八郎、岩井紀子訳 有斐閣 「多文化世界」2013
(http://www.amazon.co.jp/多文化世界-違いを学び未来への道を探る-原書第3版-ヘールト-ホフステード/dp/4641173893/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1397807527&sr=8-1&keywords=多文化世界)
をお読み下さい。

次回は私たちも使っている
「異文化対応能力アセスメントツール IRC」の開発者の新著、
Intercultural Readiness: Four Competences for working across culture
の書評をお届けしたいと思います。

どうぞ、お楽しみに!


WRITER

宮森 千嘉子

Hofstede Insights Japan
代表取締役
マスターファシリテーター

サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。英国、スペインを経て、現在米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」(ファーストプレス)がある。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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