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コミットメント構築力

2014.03.25 加藤真佐子/宮森千嘉子

こんにちは!異文化経営/組織文化の専門家集団、
itimインターナショナルが運営する
「グローバル人材研究所」のサイトへようこそ!
itimの加藤真佐子と宮森千嘉子です。

今回は、私たちの異文化対応能力をスコア表示してくれる
アセスメントツール、
Intercultural Readiness Check (IRC)
が測定する3つ目のコンペテンス、
「コミットメント構築力」をご紹介します。

「コミットメント構築力」は、
私たちが「人間関係の構築および
様々な人々とその関心事項のとりまとめに
対する関心を持ち、自分が所属する社会的
環境にどれだけ積極的に関与しようとして
いるか」を診断します。

言い換えれば、この能力は受診者が共通の
目的や課題達成のために、課題の内容や
技術的側面だけでなく、どれだけ周りの
利害関係者と有効な人間関係を築いたり、
彼らを巻き込み、そのコミットメントを
取り付けることに関心を払い、利害関係を
調整する術を持っているか、を表します。

「コミットメント構築力」は、
「人間関係を構築する力」と
「利害関係者間のニーズの調整力」の
2つの要素で構成されています。

この能力は、異文化環境に限らず、
多かれ少なかれ利害関係が異なる人々と
共に成果を出す事が求められるあらゆる
ビジネス現場で必要な能力ですから、
国内でリーダーシップポジションに
ついた経験のある方は、
この能力のスコアが高い傾向にあります。

しかし、「異文化」というフィルターがかかると、
自分の文化圏で成果を上げていた、
人間関係構築の手段や利害の調整方法が
必ずしも功を奏しないため、
低スコアの方もおられます。

そこで、ここでは異文化環境で気をつけたい
ポイントをご説明します。

第一要素「人間関係を構築する力」とは、
「人間関係と様々な人脈作りにどの程度
努力しているか」を示します。

日本企業の多くは、定期的な人事異動により、
社員に多くの職場、職種を経験させます。
その副産物として、年月とともに社内に
幅広いネットワークも形成されます。
多くのビジネスマンがその人脈を使って
情報収集や相互援助を行っています。
しかしこうした社内人脈作りは、
会社にお膳立てされたものであり、
社員ひとりひとりが自分の
「コンフォートゾーン」(居心地の良い領域)
を超えて、話の合わない人、考え方の違う人と意図的に
ネットワークを構築することは
“当たり前” ではありません。

「井の中の蛙」になってはいけないと、
社外の勉強会や異業種ネットワークの場に
出て行かれる方も多いと思いますが、
そうした場でもやはり、話が合う人、
共感出来る人と時間を過ごしがちではないでしょうか?

異文化の人々は基本的に、物の見方や
考え方が違う人たちですから、異文化環境で
必要とされるネットワーキング能力は、
見知らぬ人,意見や考え方の違う人、
話が合わず疲れる人、などと積極的に関わり、
人間関係を意図的に構築して行く能力です。

そこでは、前回までに出て来た、
異文化への感受性と
異文化コミュニケーション力を総動員して、
ビジネスに必要な「人間関係」を
多種多様な人々と幅広く築いていかなければなりません。

海外のネットワークイベントで、紹介者がいないと、
知らない人に声をかけにくい日本人駐在員の方々を
よくお見かけします。自分から握手を求め、
自己紹介して話をスタートさせることが、
この能力を身につける第一歩です。

その練習として、国内でも様々な
ネットワーキングイベントに参加され、すでに
知っている方とは挨拶程度にして、敢えて知らない方、
立場の違う方と毎回例えば最低5人は話をする、
という課題をご自分に出してみてはいかがでしょうか?
外国人も参加しているイベントであれば、
是非外国人の方に声をかけてみましょう。

第二要素「利害関係者間のニーズの調整力」とは、
「様々な利害関係者のニーズと利害を理解し、
それらのニーズを充足するための
解決策を見いだす努力をどの程度行っているか」を示します。

上述のようにして、幅広い人々と人間関係を
築き、維持することは、特に目の前に
共通課題がなくてもやるべき長期的投資です。

しかし、現在のグローバルビジネス環境では、
会った事のない海外拠点のメンバーと,
即刻チームを結成し、結果を出す事が求められます。

こうしたグローバルバーチャルチームの場合、
時間的プレッシャーから、すぐ誰が何を
いつまでにやる、というアクションリスト
作りに取りかかりたくなりますが、
そんな時こそ、最初のミーテイングをお互いの
人間関係作りに投資することが、
そりがいの後の恊働関係、ニーズの調整に不可欠です。

ニーズ、利害関係の調整力も、もちろん、
国内ビジネスでも必要な能力です。基本的に、
いろいろな人の主義、主張の背景にある、
真のニーズに気づく事が、国内でも異文化環境でも
利害の調整の最初の一歩です。

利害の調整が、異文化環境で国内ビジネスより
複雑になるのは、例えば、

•    相手の主張に関し、文化的背景の違いから
来る誤解があり、彼らの主義主張の裏にある
真の意図、ニーズがなかなかつかめない。
•    ニーズは共有できたが、そこに至る方法や
手順が自分のやり方と大きく異なり、
相手のやり方も「アリ」だと気づけない。
•    自分のやり方が相手国では通用しないことには
気づけても、相手のやり方の長所に気づけない

などの理由が考えられます。

例えば、鈴木さんは、これまで国別に
行われていた顧客管理システムを世界共通の
システムに移行するグローバルプロジェクトの
リーダーだとしましょう。

移行は世界同時に日本本社の新年度開始の
4月1日と約束されていました。
しかし、年が明けても各国の足並みはなかなか揃わず、
本当に4月1日に稼働できるか、
鈴木さんは気が気でありません。

日本人の鈴木さんにとってこの締め切りは
厳然としたものですし、4月1日に世界共通の
システムが問題なくスムーズに稼働している
ことが当たり前です。

しかし、世界各国のプロジェクトチームメンバーの中には、
4月1日は単なる努力目標と捉えている人もいるし、
4月1日に何とか稼働させ、不都合は稼働してから
ひとつずつつぶして行けば良い、と考えている人もいます。
つまり、世界共通システム導入という目的は共有できているが、
そこに至るアプローチがずれています。

また、国によっては、上層部が顧客管理システムを
グローバル化する、と言えば事足りる国もあれば、
多くの社員と何故世界共通のシステムにするのか、
また世界共通システムの仕様はどうあるべきか、
かなり広汎な議論をし、社員の声を吸い上げないと

何も始まらない国も有ります。
世界共通システム導入が本社主導のプロジェクトでも、
それがそのまま実行されるとは限らない国もあり、
目的の共有に時間がかかります。

プロジェクトリーダーの鈴木さんは、以上の様な
異文化のメンバーのニーズやアプローチの違いに気付き、
配慮しなければ、各国メンバーのコミットメントを得た
プロジェクトの進行管理をしていく事が出来ません。

グローバルビジネスにおける利害関係者間のニーズ
の調整力とは、上述のような各国の事情に気付き、
配慮し、柔軟なアプローチで結果を出せる能力です。

さて、次回は四つ目のコンペテンス、
「不確実性への対応力」をご説明します。

是非読んでくださいね!


加藤真佐子/宮森千嘉子

- 加藤 真佐子 プロフィール -ファシリテーター在蘭日系企業で16年間人事業務に従事し、人事、マネージメントの前提、当たり前が各国で異なること、また企業の成長、市場の変化などにより、それまで機能していた組織文化が組織の足かせになり得ることを体験。同企業でホフステード・インサイツの異文化及び組織文化マネージメントアプローチをクライアントとして体験したことをきっかけに、独立してホフステード・インサイツに参加。異文化、組織文化ファシリテータ、コーチとして多様な文化的背景を持つ人々がより良き協働関係、組織文化を構築することを支援している。幼少期および学生時代の一部を米国で過ごし、現在オランダ在住。上智大学修士課程国際関係論終了。国際コーチング連盟認定コーチ。- 宮森 千嘉子 プロフィール -ファウンダーサントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人でコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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