The Culture Factor

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異文化対応能力の高い企業

2014.06.29 加藤真佐子/宮森千嘉子

随分と時間が空いてしまいました。
IRC(異文化対応能力アセスメントツール)の生みの親、
ウルスラ・ブリンクマンとオスカー・ヴァンベレンブルグ共著
「異文化適応能力:文化の違いを超えて働くための4つのコンペンス」
の内容のご紹介シリーズ3回目をお届けします。

異文化対応力の高い組織とは?

先回の記事では、ダイバーシテイを
肯定的に捉える文化を持ったチームは
異文化環境で高パフォーマンスを出せる、
という調査結果を紹介しました

今回のテーマは、
異文化対応力の高い企業
の条件を探ることです。
この本によれば、
トップ層で女性が活躍する会社では、
会社のあらゆる層で男女ともに異文化対応力が高いことが、
IRC受診者データベースから明らかになりました。

ダイバーシテイ・マネージメントが
企業の異文化対応力の鍵をにぎる。

ダイバーシテイ にはジェンダーだけでなく、
人種、宗教、年齢、職種その他様々な要素
がありますが、今回のデータ分析は、
ジェンダー・ダイバーシテイと
異文化対応力の関係に焦点を当てて行われました。

その結果、すべての業種で、
経営層に女性が多いほど、その企業の
異文化対応能力が高いことがわかりました。

一般的に女性は男性よりも強力な
ダイバーシテイ支援者であることから
女性が要職につけば企業は
ダイバーシテイの強力に推進するようになります。

ダイバーシテイは学習と統合の源泉

ブリンクマンとヴァンベレンブルグは、
職場でのダイバーシテイについての
エリートとトーマス*の以下のような
研究結果も紹介しています。

「ダイバーシテイ・マネージメント導入には、
経済的な捉え方もあるし、
政治的な捉え方もあるが、
ダイバーシテイ・マネージメントに
成功するのはダイバーシテイを
学習と統合の機会と捉えるアプローチをしている
企業のみである。」

この研究成果からブリンクマンとヴァンベレンブルグは
文化の違いを「学習と統合」の機会と捉える企業では、
すべてのメンバーが、
異文化対応能力を伸ばすことができる、
と結論づけています。

ダイバーシテイを学習と統合の機会と
捉えるアプローチは、IRCの4つ目のコンピテンス、
不確実性対応力
(文化の違いから発生する複雑さや
不確実性を恐れず、
学習と成長の機会として
新しい方法を試してみる力)
といえるでしょう。

あなたの組織のダイバーシテイ促進度チェック

現在、グローバル化促進努力の一環として、
日本でも外国人社員を採用される企業が
増えて来ました。
しかし、外国人を採用しただけでは、
ダイバーシティの数を増やすことはできても
ダイバーシティを活かすことにはなりません。
数を増やしただけでは
社員の異文化対応能力を推進することは難しく、
また組織に変化を起こすことも困難です。

ブリンクマンらの著書の見解を参考にすれば、
組織レベルでダイバーシテイを
「学習と統合」の機会と捉えられるかどうかが、
その鍵を握っています。

たとえば、あたなの職場について、
次のような点を考えてみて下さい。

組織を支配する多数派である日本人社員と
少数派である外国人社員が
お互いの違いから学習出来る様に、
どんな仕組みが用意されているでしょうか?

学習が知らず知らずのうちに
多数派から少数派への
一方通行になっていないでしょうか?

各国の人が個人的バックグラウンドを
共有できる場、機会が作られているでしょうか?

メンバーに持てる力を最大限に
発揮してもらうためには、
個人的、文化的背景や宗教的慣習等への
配慮が必要です。

多数派、少数派、多様なグループメンバー間の
意見交換から出て来た多様な声を吸い上げ、
組織変革の意思決定プロセスに
取り込む仕組みはあるでしょうか?

そして、経営トップが、そうした多様な声を
戦略や組織の変革に反映させ、
その事をメンバーにわかるように伝えているでしょうか?

ブリンクマン達は、
多様なグループメンバーからの声を吸い上げ、
組織の変革につなげるループが出来ており、
それがメンバーにも見えるようになっていれば、
「学習と統合」のループが継続的に回転して行き、
全てのメンバーが異文化対応能力を伸ばすことができる、
としています。

 

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以上、3回に分けて
IRC (異文化対応能力)アセスメントツールを開発した、
ウルスラ・ブリンクマンとオスカー・ヴァンベレンブルグ共著
「異文化対応能力:文化の違いを超えて働くための4つのコンペンス」
の内容をご紹介しました。

今回は、個人メンバーの異文化対応能力育成と
企業のダイバーシテイ・マネージメントとの関連についての
彼らの調査結果をご紹介しました。

彼らの結論は当たり前のことのようにも思われます。
「違い」の源はなんであっても、
自分と違うグループの人々への感受性、
彼らとの効果的コミュニケーションや
コミットメントの構築は、
あらゆるのダイバーシテイ促進に
不可欠な要素ではないでしょうか。

そう考えると、逆にグループや組織の
異文化対応能力の高さが
ダイバーシテイ志向のレベルの指標となる
という見方も出来るかもしれません。

 

日本企業のグローバル化を考える時、
どうやって組織レベルでの
異文化対応力を高めるかは、
大きな課題だと思われます。

 

そこで次回からは、
グローバル化を促進する組織文化
について考えてみたいと思います。

 

どうぞお楽しみに。

 

*Robin J. Ely and David A. Thomas, “Cultural Diversity at Work: The Effects of Diversity Perspectives on Work Group Processes and Outcomes”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


加藤真佐子/宮森千嘉子

- 加藤 真佐子 プロフィール -ファシリテーター在蘭日系企業で16年間人事業務に従事し、人事、マネージメントの前提、当たり前が各国で異なること、また企業の成長、市場の変化などにより、それまで機能していた組織文化が組織の足かせになり得ることを体験。同企業でホフステード・インサイツの異文化及び組織文化マネージメントアプローチをクライアントとして体験したことをきっかけに、独立してホフステード・インサイツに参加。異文化、組織文化ファシリテータ、コーチとして多様な文化的背景を持つ人々がより良き協働関係、組織文化を構築することを支援している。幼少期および学生時代の一部を米国で過ごし、現在オランダ在住。上智大学修士課程国際関係論終了。国際コーチング連盟認定コーチ。- 宮森 千嘉子 プロフィール -ファウンダーサントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人でコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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