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文化をツールとして活用するためのヒント(4)ー仕事の規律は厳格か、ゆるやかか

2017.01.18 宮森 千嘉子

こんにちは、宮森千嘉子です。前回に引き続き、ホフステードの組織文化の次元を解説します。

組織を読み解く6つの次元(切り口)

次元3 仕事の規律、コントロール (ゆるやか 対 厳格)


組織の中で仕事をどのように進めているかを示す次元です。イノベーション、クリエイティビティが重視される仕事の場合は規律をゆるやかにし、管理、正確さ、効率が求められる仕事の場合には規律の厳格な組織文化が必要とされます。組織文化が機能不全であることを示す危険領域の幅は0−15と狭く設定しています。スタートアップ企業の組織文化は往々にして一桁のスコアを出すことがありますが、こうした文化では組織のメンバーがだらしなく、仕事がずさんになるという傾向があります。スコアが15-45であれば規則は少なく、メンバーの革新性を促進する文化である可能性を示唆しています。一方で、財務会計や生産など厳格な仕事の規律が求められる職場でこの数値が出た場合は、計画通りに仕事が進められない可能性もあります。

ある大企業のR&Dでは、革新的なパテントや研究が進められているものの、それが商品化に結びつかないという悩みを抱えていました。この次元のスコアは10と非常に緩やかな組織文化でした。そこで所長は2年をかけ、スコアを30にする組織開発を実践し、今では商品化に結びつくパテントが徐々に増えてきました。

45以上のスコアでは厳格な仕事の規律を持つ文化で、業務を正確に実践することが求められます。45から100の間のどのあたりが最適な文化になるかは、組織の目的によって変動します。

原子力発電所では、関連するあらゆるリスクのため、厳格なスコアが出ると期待されます。しかし、ある欧州の国の原子力発電所で実施した組織診断では、35というむしろ緩い規律のスコアがとなり、半径100キロメートル前後の地域に住む者に取ってはかなり戦慄するような結果となりました。この発電所では、マネジャーは全てエンジニアで、リスクについて熟知しているがゆえに、リスクそのものを減らすためのイノベーションを追い求めていました。彼らは安全を強化する新しい機器を導入し、改良することに常に気を取られていました。組織の目的が真の安全の強化であるならば、厳格なオペレーションを可能にする文化が求められます。しかしここでは、「安全強化」を目的とした新しいイノベーションの促進に気を取られ、本来の目的達成とはかけ離れた組織文化が形成されていました。診断後、この発電所は安全強化のための新技術/イノベーションを追求する専門チームを立ち上げ、現場のオペレーションから「隔離」しました。その他のマネジャー、チームは日々のオペレーションにフォーカスすることを徹底し、厳格な組織文化を再構築することに成功しました。

次元4 職場の関心(上司/部署⇔仕事の中味、専門性)、同調圧力


この次元は、仕事をする過程で、組織のメンバーの関心がどこにあるかを測ります。組織への帰属意識は次回ご紹介する次元8でカバーします。

0から45の危険領域にスコアがある場合は、上司や同僚の顔色を気にしすぎて本来果たさなければならない職務を放棄する可能性を示唆しています。また、管理職は部下が成長し自分の能力を超えることを自身への脅威だと捉えるため、部下の育成に消極的です。部下の建設的な反対意見は自分自身への個人攻撃だと考えるので、部下の裁量範囲を減らすよう仕向ける傾向があります。こうした組織文化では、管理職自身も自分の能力を超える仕事をさせられ、昇進に当たっての適正な支援や教育を受けていないケースがしばしばあり、悪循環となっています。

定められたワークフローに対して常に批判的な態度を取ると仕事自体にダメージを与えるような組織、例えば製造現場などではスコア45-60が機能します。

「学習する組織」を作りたいのであれば、仕事の中味/専門性を重視する組織文化を構築することが重要です。一方、学習する組織が組織として機能するかどうかは、他の次元との組み合わせで見ていくことが必要です。専門家集団としてスコアが右の極に振り切れすぎると、他の部署との協力には無関心になる可能性を否定できないからです。

次回は次元5組織外への接し方(オープンなシステム対閉鎖的なシステム)と、次元6 経営の重点(従業員志向対仕事志向)をご紹介します。

 

組織文化診断

ホフステードの組織文化モデルは、6つの独立した次元(切り口)と2つの半独立の次元で組織文化を診断します。文化を可視化することで、戦略と文化を整合させ、組織のゴール達成を支援します。課題に応じて半日~2日程度のワークショップを作成・実施します。


宮森 千嘉子

ファウンダー

サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。英国、スペインを経て、現在米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」(ファーストプレス)がある。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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