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今日のテーマはAIの位置付けによって、生産性に格差が出るのではないかという懸念について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは! 今日もオフィスに向かう道すがら、ちょっと考えごとをシェアしようと思います。もうすぐ目的地に着くんですけど、その前に、最近読んだ新聞記事と自分の体験から浮かんだテーマを話してみたいなと。テーマは、AIが仕事の生産性をどう変えるか。特に、AIが「賢い友人」になったり「部下」になったりする話と、それが引き起こす格差について。歩きながら、ゆるく考えてみます。
AIがコードを書く時代が来た!
きっかけは、2025年5月9日の日経新聞の記事。「バイブコーディング」って聞いたことあります? 米シリコンバレーで始まったプログラミングの新手法で、生成AIに「こんなアプリ作って」と話し言葉で指示すると、コードをババっと書いてくれるんです。記事では、Yコンビネーターのスタートアップの25%が、コードの95%をAIで生成してるって。
で、僕、プログラマーじゃないんですけど、統計分析でR言語のコードを書く必要があって。1年前までは自分でチマチマ書いてたんですけど、今はAIに「この分析のコード書いて」って言うと、コードをサクッと作ってくれる。予想しないような世界になりました。 AIのコードは、今のところそれなりの頻度でミスがあるんで、人間がチェックして修正する必要はあるんですけど。それでも、作業時間は10分の1位になった実感。記事の中で米VCのジェニファー・リーさんが「AIで10倍の仕事ができる」って言ってるの、めっちゃ分かります!
でも、面白いのは、AIの使い方で人によって効果が全然違うってこと。そこから、ちょっと深い話に飛び込んでみます。
AIは「賢い友人」か「部下」か
世の中の人のAIの使い方、2パターンあるのかな?と最近思うんです。初心者と熟練者で、AIの役割が全然違う。
初心者には「賢い友人」。たとえば、Rのコードを初めて書く人。AIに「ねえ、これどうやるの?」って聞くと、「こう書けばいいよ!」って教えてくれる。アプリ開発で、エンジニアじゃない人がバイブコーディングで業務ソフト作るみたいなことも可能だと思います。コーディング知識ゼロでも、AIに聞きながら進めて行けばなんとなるんだろうと。めっちゃ詳しい友達が常に横に居て相談してるみたい。詳しい友人に聞けばどうすればよいか教えてもらえるから、初心者でも今まで出来なかったことが出来るようになる。
熟練者には「部下」。一方、熟達したプロのエンジニアだと、AIに「このタスクやって」と指示を出すんだと思います。たとえば、データ分析のコードを「こういう条件で書いて」ってお願いして、AIが作ったコードをチェックして、「ここ修正して」と次の指示を出す。カーソルみたいなツールは、出来る部下みたいで、「作業を先回りで提案」してくれるので、それを見て判断して指示を出して作業をどんどん進めて行く。
で、この「友人」と「部下」の違いが結構大きいんだと思います。賢い友人が1人いるのと、10人いるのって、生産性はそんなに変わらないですよね。どのみち、教えてもらうことは一緒だから。でも、部下が1人いるのと10人いるのでは、こなせる仕事の量が全然違う。熟練者は、大きな仕事をタスクに分解して、AIに「これやって、あれやって」って指示を出すから、生産性の向上が、初心者の比ではない。場合によっては100倍になることもあるんじゃないかって。
似たような印象を持ってる人、多いんじゃないかと思います。さらにここからちょっと気になる話に。
AIが広げる格差の影
AIのすごいところは、初心者もプロも助けること。でも、その助け方が違うから、格差が広がるんですよね。日経新聞で、レプリットのマサドCEOが「AIは初級プログラマー並みの仕事ができる。開発に必要な人数が減って、給料が下がる」って言ってるの、非常にわかります。初級の人はAIに仕事を置き換えられるリスクがある。
対照的に、熟練者はAIを「部下」として使いこなして、生産性をガンガン上げる。これ、格差が広がるってことじゃないですか。初心者はAIで楽になるけど、熟練者がAIをフル活用すると、差がどんどん開く。なんか、AI時代って「勝ち組と負け組」がハッキリしそうな気がして、ちょっと怖いですよね。
まとめ:AIと一緒にどこまで行ける?
というわけで、今日はバイブコーディングから始まって、AIの「友人」と「部下」、格差の話、未来の可能性まで、歩きながら考えてみました。AIが10倍、100倍の生産性をもたらす一方で、格差の影もチラつく。AI時代は、今のところ、初学者がどうやって熟達者になるのか、という成長の経路を、社会としてちゃんと確保することが重要なんじゃないかと思います。熟達者はAIを使って生産性を10倍にも100倍にもするのかもしれないけど、人間誰しもどこかの時代は初学者だったわけで、初学者が経験して成長する機会は何らかの形で担保される必要があります。
ちょっとどうなるか分からないけど、とにかく時代は凄い勢いで動いている。この先どうなるか、ほんとに目が離せさいので、僕も継続してこの問題はウォッチしていこうと思います。
この記事が面白いと思ったらSNSでシェアしてくれると嬉しいです。また、コメントがあればぜひ聞きたいです。今日は読んでくれてありがとうございます!また次の「歩きながら考える」シリーズの記事でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い