The Culture Factor

お問い合わせ

メールマガジン
登録

BLOGブログ

不満をお金で買い取る? AIで潜在ニーズを掘り起こす話 – 歩きながら考える vol.48

2025.05.23 渡邉 寧
「歩きながら考える」

今日のテーマは「不満コメントを買い取る」というサービスから考えるマーケティングリサーチの未来について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。

こんにちは! 今日も鴨川沿いを歩きながら、移動時間を使って考えごとをシェアしようと思います。もうすぐカフェに着くんですけど、その前に、最近読んだ新聞記事から浮かんだアイデアを話してみたいなと。テーマは「あなたの不満、買い取ります」っていうユニークなサービスと、AIを使ったマーケティングの未来。今の時代っぽくて面白いなと思ったので、ゆるく語ってみます。

不満を買い取るって、どんなサービス?

きっかけは、2025年5月2日の毎日新聞の記事。「あなたの不満、買い取ります」っていうサービスが紹介されてたんですよ。サービスは、ユーザーが日常の不満を投稿すると、企業がそれを買い取って、製品やサービスの改善に活かすっていう仕組み。たとえば、amazonの梱包に関して「古紙回収のために広げて畳むのが本当に面倒」みたいな、普段なら口に出さないような小さな不満を、スマホでサクッと送ると報酬がもらえるというもの。

これ、めっちゃ面白いなと思ったんですよね。だって、誰もが何かしら不満って持ってるじゃないですか。それを吐き出して、ちょっとしたお小遣い稼ぎができて、しかもそれが新しい商品やサービスに繋がるかもしれないなんて、なんか一石二鳥だな、と。記事では、企業側がこの不満データを使って、新商品開発に使っているって話が出てました。例えば、コロナのときに家での滞在時間が長くなって、飲み物をまとめて買って家に保管しておくんだけど、スーパーなどでペットボトルを買って家に持って帰るのが重い、というような不満があって。家の水道水にポンと入れればお茶などになるタブレットの商品開発の話などが紹介されていました。

つまり、潜在ニーズの発掘につながる、と。潜在ニーズって、「自分でも何が欲しいか分からないけど、言われてみたら欲しい!」みたいなニーズですね。AppleがiPhone出したときみたいに、誰もスマホを求めてなかったけど、使ってみたら「これ最高!」ってなるあの感じ。

不満から潜在ニーズをどうやって見つける?

こういう潜在ニーズを見つけるのって、めっちゃ難しいですよね。だって、ユーザーが「こういうの欲しい!これが不満!」ってハッキリ言ってくれるならニーズの理解は簡単だけど、潜在ニーズって本人も気づいてないから、企業側も見逃しがち。普段は意識しないような不満が聞き出せれば、そこから、その不満の解消をニーズとして、商品やサービスの開発は出来る。だから、昔は、フォーカスグループとか、ユーザーインタビューでユーザーの不満やニーズを探ってたわけですけど、時間もコストもかかるし、せいぜい数十人分の意見しか集められない。

でも、この不満買取サービス、今っぽいな、と思ったのがネットを媒介させているところ。スマホで気軽に不満を投稿できるようにして、めっちゃたくさんの人の声を集めると。昔とはちょっと違うユーザーニーズの理解に繋がりうるなと思います。報酬を払うから、普通だと意識されないような小さな声まで、ユーザーが「何か不満ないかな?」って自分の生活を振り返って投稿してくれる。これはデータとして面白い。

そして、気になる点は、AIが入ったら、これがどう進化するかってところ。

AIで不満を深掘りしたら何が見える?

この不満買取の仕組みに、AIを組み合わせたらどうなるか、色々と考えると、これまでとは違うデータの集め方とデータの内容になるんだろうな、と思います。たとえば、今のAIって、対話型のチャットボットとか、自然言語処理がめっちゃ進化してるじゃないですか。昔はデプスインタビューなどでインタビュアーが一人一人から聞き取りをしていたところが、これからはAIチャットボットがインタビューを行うこともあるんだろう、と。

イメージとしては、ユーザーが「カフェのWi-Fiが遅い」と言ったら、AIが「どんなときに遅いと感じましたか?」「どれくらい待つとイラッとします?」みたいな質問を自動で投げかけて、もっと詳しい背景を引き出す感じ。AIなら何千人ものユーザー相手に同時にできるし、言語の壁も関係ない。まずもって、自然言語データの量が桁違いに大きく、多様な意見が集まると思います。

こういう対話型のAIって、人の感情や動機をすでに上手に引き出せますね。たとえば、不満の背後に「忙しい朝に時間を無駄にしたくない」とか「友達との時間を快適にしたい」みたいな潜在ニーズが隠れてるかもしれない。AIがそれを直接分析して、企業に「こういうニーズがあるよ」って教えてくれるようになる可能性もある。

2025年の今、AIがこんな風にマーケティングリサーチを変えていくんじゃないかって考えるのは楽しいですね。

未来の研究:AIで不満をどこまで掘れる?

ここから、ちょっと研究の話。

今、AIチャットボットを使って、人の心理をどれくらい深掘りできるか実験してるんですけど、この不満買取の話とAIをガッツリ組み合わせたら、面白い研究テーマになりそうな気がしますね。ユーザーの不満をAIが対話的に掘り下げて、感情と紐づけたり購買動機との繋がりを検証したりする。どんな不満が実際の購買ニーズにつながりやすいか、みたいな分析を質問紙ではなくて対話データから分析する。

さらに面白そうなのは、昔のデプスインタビューを、AIで何万人規模でやったときの自然言語のビッグデータから何が出来るのかを考えること。コストも時間もかかった昔の方法を、AIが一気に変える可能性があるのであれば、そこから何が出来るのかを考えるのは楽しそうです。マーケティングリサーチのゲームチェンジャーになるんじゃないかと思いますね。楽しそう(笑)。

2025年はこういうテーマも追いかけて、実験の結果とか、ブログでシェアできたらいいなって思ってます。

まとめ:不満が未来を変えるかも

というわけで、今日は「不満買取サービス」から始まって、AIと潜在ニーズの話まで、鴨川沿いを歩きながら考えてみました。

もしこの記事が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです! 「自分ならこんな不満を投稿する!」とか「AIにこんな質問してほしい!」みたいなアイデアがあったら、コメントで教えてください。僕も、心理実験の進捗とか、またブログでゆるく話せたらいいなって思ってます。

カフェに着いたんで、今日はこの辺で。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。 また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

メールマガジン登録