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こんにちは!
異文化経営/組織文化の専門家集団、
itimインターナショナルが運営する
「グローバル人材研究所」のサイトへようこそ!
itimの加藤真佐子と宮森千嘉子です。
異文化を理解するフレームワーク
ホフステードの5次元モデル。
前回は
日本のグローバル化に大きなインパクトを持つ
「不確実性の回避」について説明しました。
今回は、いよいよ最後の次元
「長期志向 対 短期志向」を
ご紹介したいと思います。
この次元は、ちょっと特殊な位置づけに有ります。
というのも、他の4次元は、
いわゆる西欧諸国間でも大きなばらつきがありますが、
この五つ目の次元では、
西欧諸国はすべて短期志向傾向なのです。
そして、中国、香港、台湾、日本、
韓国、タイ、シンガポール等
東アジア諸国および
ブラジル、インドなど
多神教の伝統を持つ国々が長期志向傾向にあるのです。
調査対象国が23カ国と少な目なのが、
この次元の弱点ですが
洋の東西の文化の違いの一端を明らかにする次元として
存在意義があります。
この次元の定義は、
「ある社会が規範的かつ歴史的、短期未来志向を持っているか、
あるいは実用的かつ長期未来志向の視点を持っている度合い」です。
長期志向は将来の報酬を志向する徳、
なかでも忍耐と倹約を促します。
例えば、すぐに結果が見えず報酬もないが、
将来報われることを期待して
忍耐を持って励んだり
(例:日本の伝統的な年功序列制度)、
ボーナスをもらっても
すぐ今の楽しみのために使ってしまうのでなく、
倹約して将来に備えたり、
子供の教育など長期目標のために投資するのが
長期志向文化の特徴です。
長期志向は過去と現在に関する徳、
なかでも伝統の尊重、
「面子」の維持、社会的な義務の達成を促します。
反対に短期志向文化の特徴は、
隣の人が子供にピアノを習わせれば、
自分の子供にも習わせる、といった
社会が期待する規範に従い、
体面を大切にし、
個人的な安定と伝統を重んじることです。
今の面子を保つために
大きな出費をする傾向もあります。
(例:贅沢なウェディングドレス)
長期志向の文化は「現実主義的」
短期志向の文化は「規範的」
ともいえます。
短期志向文化圏に根を下ろす
世界三大宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)は、
唯一の真理の存在(神)の存在を基本としています。
信ずるか、信じないか、真実か否か、
が命題です。
長期志向文化に根をおろす
ヒンズー教、仏教、神道、道教などでは、
信じるか信じないかではなく、
儀礼や瞑想を行い
徳の高い生活をすることが課題です。
絶対神への信仰は、
規範的かつ科学的真理を追求する
分析的態度につながり、
東洋的な徳は
現実主義と統合的な思考につながりました。
ノーベル賞受賞の対象と成るような基礎研究は
(社会の裕福さ等他の要因を除くと)
短期志向文化圏から出る事が多く、
基礎研究の結果を統合して
現実的に使えるものにする応用技術は
長期志向文化圏から出る事が多いと言えます。
これまでご紹介してきた
文化を理解するためのフレームワーク
「ホフステードの5次元モデル」は
文化を相反する価値観を両極に配置した
5次元で理解しようとする
5次元モデルは分析的思考
西欧的思考の産物と言えます。
ビジネスやマネジメントの手法は
ほとんどすべて、短期志向の
アングロサクソン、主に米国で
開発されたもの。
アングロサクソンモデルでは、
会社を動かしているのは、
短期のボトムラインの利益、
四半期毎の株主利益です。
ビジネスのグローバル化で
このモデルが、世界各地に浸透しつつありますが、
長期志向の国々で、
伝統的に会社を動かしているのは、
長期的会社の存続そのもの、
そのための市場、
特に市場シェアの拡大です。
グローバル人材のあなたが
今使っているマネジメント手法を
他の文化にあてはめたら、
どんなことが起こるか、
想像してみてください。
これで、5次元モデルの簡単な説明は終わりました。
5次元モデルの利用例としてこのサイトから
「日本文化を更に深く理解する無料リポート」を
ダウンロード頂けます。
また、5次元モデルについて
もっと詳しく御知りになりたい方は、
ホフステードの最新著の日本語翻訳版
「多文化世界 — 違いを学び未来への道を探る 原書第3版」(有斐閣)を参照下さい。
次回のブログでは、
ローバル人材のあなたに必須の「異文化対応力」を
自己診断できるアセスメントツール、
Intercultural Readiness Check (IRC)について
書いて見たいと思います。どうぞお楽しみに。
加藤真佐子/宮森千嘉子
- 加藤 真佐子 プロフィール -ファシリテーター在蘭日系企業で16年間人事業務に従事し、人事、マネージメントの前提、当たり前が各国で異なること、また企業の成長、市場の変化などにより、それまで機能していた組織文化が組織の足かせになり得ることを体験。同企業でホフステード・インサイツの異文化及び組織文化マネージメントアプローチをクライアントとして体験したことをきっかけに、独立してホフステード・インサイツに参加。異文化、組織文化ファシリテータ、コーチとして多様な文化的背景を持つ人々がより良き協働関係、組織文化を構築することを支援している。幼少期および学生時代の一部を米国で過ごし、現在オランダ在住。上智大学修士課程国際関係論終了。国際コーチング連盟認定コーチ。- 宮森 千嘉子 プロフィール -ファウンダーサントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人でコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。