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文化とマネジメントの専門家集団であるHofstede Insights Japanのファシリテーター/コンサルタントは経歴も個性も様々。自身の異文化体験について、また日々感じていることをリレー形式で書いてまいります。
Rena Sofue
こんにちは。ファシリテーターの祖父江玲奈です。
かつて私がコンサルティング会社にいた頃、多国籍メンバーによるプロジェクトを数多く経験しました。日本国内での多国籍プロジェクトでは、多数派を占める日本人の商慣習が主流となることも多くあります。言語や商慣習のカベが立ちはだかり、多国籍メンバーと、異文化との摩擦に慣れていない日本人との軋轢が大きく、プロジェクトが空中分解しそうになる経験を何度かしました。
多国籍プロジェクトの一つはアメリカを中心とした海外先進事例を日本に持ち込むことを目的にしていました。商慣習の違いはもちろんですが、アメリカ人・オーストラリア人たちからは日本人の曖昧な表現に文句を言われ、状況を理解しないアメリカ人との論議に疲れたクライアントとの板挟みに苦しみました。なぜアメリカ人は日本の商慣習をリサーチしないのだろう?なぜオーストラリア人の交渉担当は私をしょっちゅう呼び出すのだろう?なぜ日本人のリーダーは作業計画を展開するだけなのだろう? 当時は多くの疑問と自分自身の能力不足に悩んでいました。
ホフステードモデルを知った今の私から見れば、計画と役割を重視する日本人の進め方と、背景を含めて意思疎通を図ることを重視するアメリカ人やオーストラリア人の期待が、大きくずれていたのだろうと思います。多くの疑問は価値観の差から生まれたものであり、解決の方向性を知りさえすれば、より効率的・効果的にチームを組むことができたでしょう。
後に転職した日産自動車では、グローバルビジネスは日常になっていました。でもそんなビジネス環境でも、文化は表面的な制度や習慣の違いに着目されやすく、価値観としての違いについては、(学術的なアプローチ以外は)感覚値や経験値としてしか語られていませんでした。ホフステードのモデルは、文化の数値化を通じて相対的に文化を理解できる点が非常に優れたツールだと思います。
多国籍チームには多くの可能性があります。ですが、多様なメンバーと感覚値だけで成果を出すチームが組める確率は高くありません。ホフステードのモデルを使うことで、より効果を発揮できるチームが作れるようになると思います。2カ国以上でのチームをお考えの方には、ぜひホフステードモデルをチームビルディングなどに活用していただきたいと思います。