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次に書こうとしている本を完結しない形式にしようと思っている理由 – 歩きながら考える vol.11

2025.03.26 渡邉 寧
「歩きながら考える」vol.11

今日は次に考えている本の企画について緩く語ります。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアをラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

みなさん、こんにちは。今日はちょっと歩きながら、今年書きたいと思っている本の話をしてみようと思います。最近、新しい本を書きたいなと思っています。テーマはホフステードを使った文化の話。昔、「世界史講義の実況中継」みたいな、予備校の先生の授業の口語調での解説を大学受験の参考書にしたものが有りましたが、その形式でホフステードをはじめとした文化理論の説明をするような本を書きたいなと思っています。

ただ、紙の本を今から出すというのは、デジタルの時代にどうなんだろうか、とちょっと思うところもあって、ただ単に出版して終わりにならない本の形態っていうのはありうるのだろうかと悶々と考えていて、そのあたりをゆるく話してみます。

ホフステードで日常を切り取る

まず、ホフステードの文化の知識があると、日常のものの見方が大きく変わります。これは、本当にそう。この前、ネットで見たアジア圏の記事で、上司が部下に強めに指示する事例の話があって、「ああ、これってホフステードで言うと権力格差の話だな」とか思ったり。逆に、Netflixなどでアメリカのドラマを観ているときに「自分の道を切り開け!」みたいな個人主義全開のメッセージが目立っていたりすると、それを文化に紐づけて考えたりします。

こういう、学術の知識と普通の日常の出来事が繋がる話が、ホフステードみたいな文化研究に関しては沢山あり、こういう生ネタは面白いですね。ホフステードの視点で、ニュースや企業のプロモーションみたいな「生ネタ」を切り取るコンテンツは、せっかく学んだホフステードの知識をアップデートする上で役立つと思います。毎日何かしら新鮮な事例が出てくるから、読者も「へえ、こういう見方もあるんだ」って気づきがあると思うんです。

ホフステードで日常を切り取るイメージ

本なのに完結しないってどういうこと?

そんなことを考えたときに、本のあり方ってどうあるべきなんだろうか?と思うわけです。この手の生ネタは鮮度がありますね。昔の映画やニュースの話を今されても、なんだかちょっとピンと来ないかもしれない。そう考えると、時間がたっても色あせないコンテンツは本の中で伝え、「生ネタ」は追加コンテンツとして後から足していくという形式が良いのかもしれない。

普通、本って一度出したらそれで完結じゃないですか。でも、ネット時代って、ブログとかポッドキャストみたいに、リアルタイムで情報が更新されるのが当たり前になってる。そう考えると、デジタル時代の本は「コンテンツが完結しない」という方がむしろ自然なんじゃないかと思います。

イメージは、紙の本をベースにしつつ、例えばQRコードでデジタル版に飛んで、そこでは最新の国際情勢や社会事象をホフステードで読み解いたコンテンツが追加されていく感じ。最近の教科書はそういう形式みたいですね。たとえば、2025年3月に本を出したとして、その後、中国で新しい政策が出たら、「これ、権力距離が影響してるよね」とアップデートする。読者が「あ、この本、生きてるな」と感じるような仕組みです。

実際、デジタル出版だとKindleとかでアップデート可能な本もあるし、Noteみたいに著者が逐次更新するプラットフォームもある。でも、今のメディア環境だと、紙の本は紙の本でパッケージとして情報をまとめ上げるということにも価値があるように見えるので、これとデジタルを連動させて、読者と一緒に進化させていくってのが良いのかはと思っています。

本なのに完結しないイメージ

実験してみる価値はありそう

まさに、現代の教科書がこの形式を目指しているように、正直、こういうアイデアって、これまでも誰かが試しているのだろうと思うし、うまくいくか分からないんですよね。でも、ただ本を書いて、「はい、終わり」とするより、情報の発信者と読者が、リアルタイムでネタを共有しながら考えを深めていけるような、なにか新しいやり方を試したいんです。そうしないと、なんか、もったいないじゃないですか。この時代に本を書くのであれば。

AIが進化した今なら、AIを上手く使うと執筆のスピードは爆発的に上がるし、ネット環境があれば、リアルタイムの情報を読者に共有出来るわけだから、本がどんどん育っていく感じが作れれば、ちょっと楽しそうじゃないですか?

まとめ:ホフステードと一緒に未来を歩く

というわけで、今日は歩きながら、「ホフステードで日常を読み解いて、完結しない本を作る」という次の企画を話してみました。

もし、「せっかくホフステードで本を書くなら、こういう内容が読みたい!」などアイデアがあったら、ぜひSNSでシェアしてコメントください。僕一人じゃ思いつかない視点、絶対あると思うので、一緒に考えてくれたら嬉しいです。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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