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中国型イノベーション?文化とイノベーションの密な関係 – 歩きながら考える vol.23

2025.04.15 渡邉 寧
「歩きながら考える」

今日のテーマは「イノベーションと文化」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)の毎朝ラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

こんにちは! 今日も買い物に向かう道すがら、頭に浮かんだことを話してみようと思います。テーマは「イノベーションと文化」。この間、スマホでニュース見てたら、中国の科学技術がめっちゃ進んでるって話が目に入ってきて、「いやー、中国凄いけど、文化的にはどう説明するんだろ」って気になっちゃったんですよね。2025年の今、科学や技術と文化は関係しうるのか? そんなことを、ゆるく語ってみます。

中国の論文、めっちゃ増えてる!

きっかけは、ちょっと前の朝日新聞の記事。3月17日だったかな、アメリカの有名な科学雑誌「サイエンス」の編集長、ホールデン・ソープさんが日本に来てて、インタビューで面白いこと言ってたんです。

今、中国の研究者が書く論文がバンバン増えてて、サイエンスやネイチャーみたいなトップ雑誌にガンガン載ってるって。10年前じゃ考えられない勢いなんですって。AIとかロボット、医療の分野でも、「これは中国が強い!」って領域が目立つようになってきましたよね。

でも、なんか不思議なんですよ。だって、過去の文化研究に基づくと、たしか、イノベーションって、権力格差が低く、個人主義の文化、たとえばアメリカとか北欧で起こりやすいって、多くの研究で言われてたと思うんですね。上下関係がフラットで、みんなが「自分らしく!」ってアイデアをガンガン出す感じ。

中国って、逆に権力格差が高く、集団主義の文化ですよね。アメリカや北欧とは文化的には真逆。なのに、なんでこんなにイノベーションが進んでいるのだろう? 昔の文化研究では説明出来ないことが起こっているのか?中国が特別な例外なのか?

なんか、頭の中で謎解きしてるみたいで興味深いですよね。2025年の今の時代環境を前提にしたイノベーションって、どういうパターンなのでしょうか。

マスクのポストで気づいた「イノベーションの種類」

で、そんなことを考えていたときに目に入ってきたのが、最近のイーロン・マスクのXポスト。4月初旬だったと思うんですけど、「中国が発明したものって何?」みたいな投稿してて、みんなが「火薬!」「羅針盤!」って歴史の話を投稿しているのを見ました。でも、マスクは「いや、最近100年で何?」って感じで切り返してて。

これを見て、「イノベーションの概念に幅があるんだな」って思ったんです。中国のイノベーションって、もしかしたらマスクが考えるものとはちょっと違うのかも。

例えば、AIやロボットの分野。最初に火をつけたのはアメリカかもしれないけど、中国は「この分野は重点領域!」って決めた瞬間、すんごい勢いでリソースを投下した。政府が「よし、AIに全力!」って決めると、他の予算をバッサリ削ってでも投資するという状況なのかもしれません。で、研究者やエンジニアにもガンガン予算を投下して、スピード感ハンパない。

この間、Xで見たインフォグラフィックスでも、中国からアメリカへの留学生がこの数十年くらいで爆発的に増えたというものを見ました。専門家のネットワークというのは非常に重要で、最先端の研究コミュニティにどんどん入っていって、そこで交わされる「次は何が熱い?」という情報をキャッチするスピードは、今の中国は非常に早いのかもしれません。

こうしたネットワークからの情報を元にして、国の戦略にバンバン反映させるみたいな。この「汗かいたネットワーク」と「権力による大胆で素早い投資」が中国のイノベーションの秘密なのかもって、歩きながら考えていて思いました。

仮にそうだとすると、それは「権力格差=高」で「集団主義」の文化的背景を持つ社会にとってのイノベーションの在り方になるんだろうな、と。

じゃあ、日本はどうする?

で、ちょっと振り返って日本を見てみると、なんかモヤっとするんですよね。昔はアメリカへの留学生、めっちゃ多かったのに、今は中国や韓国に比べるとだいぶ減っちゃってる。最先端の分野で、つながりがちょっと薄くなってる気がします。

さらに、国として「この分野に全部ぶっこむ!」みたいな大胆な投資って、なんか日本の予算の決め方だと難しそう。この間の国会での予算の議論見ていても、与党と野党の議論は「予備費の中に収まるかどうか」みたいなところで落とし所を探している感じがして、「大胆な」という感じではなかったですね。

こうなってくると、民間企業でのイノベーションを期待してしまいます。企業単位になってしまうと、幅広い分野に投資というわけには行かないと思いますが、少なくとも自社が重視している分野で、博士号持ってる人をガッツリ雇うなり社内で増やすなりして、海外の情報が密に入ってくるようにネットワークに入り込んでいく。お金はケチらないで、みたいな。

日本の会社って、上下関係しっかりしてることが多いから、トップが「よし、この分野だ!」って決めれば、中国が国として行っているように大胆に動けるかもしれない。民間レベルで見ても、イノベーションも「汗かいたつながり」がカギなのかなって思います。

まとめ:イノベーションの未来、どっちが勝つ?

歩きながら考えてたら、文化に基づいたイノベーションの進め方には、それぞれの文化にあったパターンがあるのかもって思えてきました。アメリカみたいな「極めてユニークな個人」がきっかけとなって進んでいくのは個人主義的なパターンだし、中国みたいな「汗かいたネットワーク」と「トップダウンの投資」で進めていくのは、高い権力格差のパターンということなのかもしれません。

もし皆さんの中で、「中国のイノベーションの背景にはこういう文化が有る!」とか「日本、こうすればイノベーション進められる!」みたいなアイデアあったら、ぜひSNSでシェアして教えてください。

というわけで、今日は「イノベーションと文化」を歩きながら考えてみました。中国の謎と日本の未来について、ゆるく話してみたけど、どうだったでしょうか? 最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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