The Culture Factor

お問い合わせ

メールマガジン
登録

BLOGブログ

「歩きながら考える」

今日のテーマは「へりくだる」ことの文化差に関して。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題を平日(月~金)の毎朝ラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

こんにちは! 今日も移動時間を使って、ちょっと日米交渉について思ったことを話していこうと思います。テーマは「外交での文化のギャップ」。最近、毎日新聞(2025年4月18日)の記事(「立憲・野田代表 赤沢氏の「格下」発言に「自分で言っちゃいけない」」4月18日)で、赤沢亮正経済再生担当相がアメリカでの通商交渉中にトランプ大統領に「格下も格下、直接話してくれてありがたい」と言ったって話題が気になって。で、立憲民主党の野田佳彦代表が「そんなこと言っちゃいかんよね」と批判したんですけど、これを文化的観点からちょっと考えます。

日本人の「謙虚さ」がアメリカで誤解される瞬間

まず、赤沢さんの「格下」発言の何が問題だったのか、そもそも問題なのかどうか、ちょっと振り返ってみましょう。

赤沢さんは、トランプ大統領とベッセント財務長官との通商交渉で、トランプさんが突然飛び込んできた状況でこの発言をしたらしいんです。日本だと、こういう「自分を下げる」言い方は、謙虚で好感度アップなコミュニケーションになることが多いですね。相手に敬意を示す「謙譲語」の文化が、私たち日本人には染み付いてるじゃないですか。

でも、これがアメリカだとどうなるか。アメリカは個人主義で男性性が高い文化。強い個人が戦い合うことを良しとする文化です。そういう文化の外交の場で「自分は格下」と言うことで「この人は謙虚で立派な人だ」と思われるとは、ちょっと思えません。逆に、交渉相手に「この人は、自信がないのか?」って思われてしまう可能性が気になります。まあ、もちろんアメリカの人の価値観にも個人差はあるので、絶対とは言えませんが、言わなくても良い発言かな、とは思います。

このギャップ、意識したほうが良いと思いませんか?日本では「良い人」と思われる可能性があるが、アメリカでは「頼りない」ってなる可能性がある。これ、文化の違いがモロに出る可能性があって、注意した方が良い点だと思います。

身近な例で考える:あなたも「格下」意識がつい出てしまうかも?

この話、外交だけの話じゃないんですよ。たとえば、職場でアメリカ人の同僚とプレゼンする時、つい「いや、私なんて大したことないですけど…」って前置きしちゃうこと、ありません? 日本の会議だと「謙虚でいいね」ってなるかもしれませんが、アメリカだと「自信が無い話をなんで聞かないとならないんだ?」って印象を持たれるかもしれません。あ、私自身、これやっちゃったことあるなって、今思い出しました(笑)。

外交でどう振る舞うべき? プラスサムゲームのヒント

じゃあ、赤沢さんはどうすればよかったのか。文化的に言えば、割と話はシンプルです。

たとえば、赤沢さんが「格下」って言うんじゃなくて、「日本はこういう強みを持ってるから、これをあなたの政策に組み合わせれば、必ず双方にとって得になるはずだ。私はそういう話をトランプ大統領とした」と、オリジナリティがあり、かつ短期的に明確なメリットを作り出したということを自信満々で言えば良いんです。

アメリカは「個人主義」で「男性性が高く」、「短期志向」の文化なので、そういう「個人の」「具体的で」「自信に基づいた発言」は文化的に自然かつ好意的に受け取られる傾向が高くなります。

この考え方、実は私たちの日常にも応用できる。たとえば、上司に企画を提案する時、「いや、こんなん大したことないですけど…」って言うより、「このアイデアでチームの成果が絶対上がります!」って堂々と言った方が、通りやすいこと、ありますよね。外交もビジネスも、結局は「どう自分をプレゼンするか」になりますね、アメリカの文化を前提にすると。

まとめ:文化のギャップを笑いながら学ぶ

というわけで、赤沢さんの「格下」発言から、日本とアメリカの文化ギャップについて歩きながら考えてみました。日本の謙虚さがアメリカで誤解される瞬間って、外交の舞台でも、ビジネスの現場でも、日常でも起こりうる。

2025年は日米関係が「トランプ関税」で難しい局面になることも多いと思いますが、この困難な状況を、文化の視点で見ると何が見えるか、引き続き追いかけたいなと思ってます。もしあなたが「私も海外でこんな誤解やっちゃった!」とか「外交官ならこう言うかな?」ってアイデアあったら、ぜひ教えてください。また、この記事がちょっとでも参考になったと思ったらSNSでシェアしてくれると嬉しいです!

最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

メールマガジン登録