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今回は、民主主義を補強するためにAIを使う方法についての一案について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日は暑い日、夕立の後の烏丸通を家に向かって歩きながら、参議院選挙の議論を見ていて思ったことを話してみようと思います。SNSでの政治議論とAIの可能性について、ゆるく考えてみました。
SNSの政治議論、どうしてこんなに荒れるんだろう
参議院選挙が続いてますよね。減税の是非とか、外国人受け入れ政策とか、米をはじめとした食料安全保障についてどうあるべきかとか。候補者たちはそれぞれの主張を掲げて戦ってるわけですけど。
でもSNS見てると、候補者や支持者の、ののしり合いが、いくらなんでもひどいんじゃないかって感じること多くないですか?議論っていうより、もう感情的な攻撃の応酬になっちゃってる。ここまで感情的になると、対話できる部分も対話できなくなっちゃうんじゃないかなって思うんですよね。
もちろん、人の喧嘩って見てて楽しいっていうエンタメの要素もあるから、激しくぶつかること自体が必ずしも悪とは言えないかもしれない。社会の興味を喚起するって意味では必要悪なのかも。でも、行き過ぎると対話ができなくなって、合意も遠のくし、創造的な解決策も見えなくなっちゃうと思うんです。
僕たち有権者が本当に知りたいのって、現状がどうなってるのかとか、政策AとBそれぞれを選んだらどうなるのかとか、そういうことじゃないですか。でも今の討論番組見てても、そういう理解が深まる気がしないんですよね。
政治に関する討論が深まらない理由、考えてみた
どうして理解が深まるような議論にならないのかなって考えてみたら、政治に関する討論って、いろんなレベルで構造的に難しいんじゃないかと。
まず候補者同士の場合、特に選挙期間中なんて、自分のイメージ守らなきゃいけないじゃないですか。失言したら即炎上だし、相手の攻撃もかわさなきゃいけない。結果として、話をすり替えたり相手の揚げ足取ったりする議論が多くなっちゃう。
それから支持者同士も、譲歩したり妥協したりする姿勢を見せることが、自分の支持している候補者の役に立つとは思わないかもしれない。だから強硬な主張をし続けるってことがあるんじゃないでしょうか。
結局、政治家もその支持者も建設的な議論になりにくくて、一般の有権者は「あの候補者は感じ良さそう」とか「ディベート上手いな」とか「あの陣営の勢いがある」みたいな印象論になっちゃう。肝心の政策の中身はよくわからないまま。これじゃあ、有権者として必要な情報が得られないですよね。
AIエージェント同士の議論って面白いかも
そこで思いついたのが、AIエージェントを使った議論っていうアイデアなんです。
例えば、「増税派AI」と「減税派AI」を作るとか。「福祉充実派AI」と「経済成長優先AI」でもいい。それぞれのAIに、各政党がこれまで出してきた政策とか、国会での発言とか、新聞や雑誌で言ってることとか、街頭演説の内容とか、全部学習させるんです。
もちろん、特定の政党を代表させるのは問題あるかもしれないから、「どちらかというと福祉を重視するAI」とか「どちらかというと規制緩和を重視するAI」みたいな感じで、いろんな立場のAIを用意する。
人間の政治家と違って、AIなら選挙に落ちる心配もないし、イメージ気にする必要もない。純粋にデータと論理だけで議論できるじゃないですか。
外国人受け入れ問題だったら、労働市場への影響はこうです、社会保障の負担はこうなります、文化的な課題はこんなのがあります、って。それぞれの観点から、感情抜きで議論できる。しかも記憶力は完璧だから、細かいデータも正確に扱える。これ、めちゃくちゃ面白そうだと思いません?
実はもう始まってる:Habermas Machineの例
調べてみたら、AIが民主主義の議論に活かされてる例って、もうあるんですよ。
例えば、Science誌に載った研究で「Habermas Machine」っていうシステムがあります。これ何してるかっていうと、人間の議論を仲介してるんです。
具体的には、まず参加者が自分の意見を書く。そしたらAIがみんなの意見をまとめて「グループステートメント」っていうのを作る。参加者はそれを見て「ここはちょっと違う」とか批判を書く。AIは批判を取り入れて改訂版を作る。このプロセスを繰り返すうちに、みんなが納得できる文章ができあがるとのこと。
研究結果を見ると、AIが仲介した場合、参加者の意見が共通の立場に収束して、グループ内の分断が減ったそうです。しかも、多数派の意見だけじゃなくて、少数派の声もちゃんと取り入れてた。最初は多数派寄りの提案するんだけど、批判を受けて修正していくうちに、少数派の意見も重視するようになるらしい。
これって、まさに理想的な民主的議論の一つじゃないですか?人間よりAIの方が民主的って、なんか面白いですよね。
エンタメから始めるAI時代の民主主義
でもまあ、いきなり「政治にAIを活用しましょう」って言われても、ピンとこないし、メリットもよくわからないっていうのが現状だと思うんです。
だから、まずはエンターテインメントから始めたらどうかなって。民間で興味がある人たちや、この領域のちょっと変わったことが好きな研究者なんかが、こういう場を作るってのはあるんじゃないかと思います。
ロボットバトルみたいなノリで、いろんな立場のAIエージェントを作って、公開ディベートをする。「増税派AI」と「減税派AI」が、それぞれの立場から論理的にバトルする。観客は「おお、福祉充実AIが鋭い指摘した!」「でも成長重視AIの反論も説得力あるなあ」「規制緩和AIが横から新しい視点を!」みたいに楽しめる。その後の熟議ではHabermas Machineみたいな合意形成AIを使うのも良いかもしれない。
エンタメとして楽しみながら、でも同時に、複雑な社会問題の構造を理解できる。何が本当の争点で、どういう解決策があり得るのか。感情論じゃなくて、データと論理に基づいた議論を通じて。
こういうの見てるうちに、「なるほど、この問題ってこういう構造なのか」「自分の価値観はこっちに近いな」って、自然に理解が深まっていくんじゃないかなって思うんです。
まとめ:テクノロジーで民主主義をアップデート
というわけで、今日は選挙期間中のSNSの荒れた議論を見て感じたことから、AIエージェントのディベートっていうアイデアまで、歩きながら考えてみました。
テクノロジーって、使い方次第だと思うんですよね。SNSが建設的な議論の場になりきれてない現状もあるけど、うまく使えば、民主主義をもっと豊かにすることだってできるはず。
AIエージェントのディベート大会。これ、日本の民主主義に新しい風を吹き込むかもしれません。少なくとも、今のSNSの不毛な攻撃の応酬よりは、ずっと建設的だと思いません?
もしこの話が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアしてください!「AIに政治任せるのは怖い」とか「いや、人間よりマシかも」とか、みなさんの意見も聞いてみたいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い