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外国人の香水と日本人の怒り:なぜ匂いだけは我慢できないのか – 歩きながら考える vol.112
今日のテーマは、外国人の強すぎる香水がどうして嫌なのかという話。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。
*文化以外のテーマも含むシリーズ全編は、筆者の個人のページでご覧いただけます。
こんにちは。今日は駅から家に向かって歩きながら、ちょっと気になってることを話そうと思います。最近、インバウンドの観光客が増えて、いろんな文化摩擦の話を聞きますよね。騒音とか、マナーとか、混雑とか。でも、実は一番日本人の怒りの琴線に触れやすいのって、「香水」なんじゃないかって思うんです。今日はその話を、歩きながら考えてみます。
カフェで隣に座った人の香水がきつすぎた話
先週のことなんですけど、いつも行くカフェで仕事してたら、隣に座った方の香水がすごくきつくて。部屋に入ってきた瞬間から、もうその香水の匂いで空間全体が充満しちゃうくらいのレベルなんですよ。
で、僕、普段は文化の違いとかにはかなり寛容な方だと思うんです。声が大きいとか、集団で騒がしいとかは、まあ文化の違いだよねって。混んでる場所が嫌なら、時間帯ずらせばいいし、騒音が気になるならノイズキャンセリングイヤホンつければいい。自分の行動を調整することで、なんとか対処できるじゃないですか。
でも、香水だけは違うんですよね。もう、ひたすら食らうしかない。カフェで注文しちゃった後だと、席も変えられないし、出るわけにもいかない。マスクしても香水の匂いって通り抜けてくるし。この「調整不可能」な感じが、めちゃくちゃストレスなんです。
日本人は「相手に合わせる」のが得意なはずなのに
ここで、ちょっと文化心理学の話をしますね。ロスバウムら(タフツ大学の教授でした)が1982年に提唱した理論に、Primary Control(一次的コントロール)とSecondary Control(二次的コントロール)っていうのがあるんです。
一次的コントロールっていうのは、環境を自分の思い通りに変えようとすること。一方、二次的コントロールは、自分を環境に合わせて調整することなんですね。で、アメリカなどの西洋文化では一次的コントロールが重視されて、日本を含むアジア文化では二次的コントロールが重視される傾向があるって言われてるんです。
つまり、日本人って「二次が一次」っていう、表現的にはちょっとこんがらがった状況なんですよね。相手に合わせることが第一で、環境を変えるのは二の次。実際、騒音とか混雑とかは、自分の行動を変えることで対処してる。これってまさに二次的コントロールですよね。
でも、香水に関しては問題があって。環境への適応行動がとりようがない上に、かといって「香水控えてくれ」っていう一次的コントロールは慣れていないから、すごく居心地が悪いんです。得意な方法も苦手な方法も、どっちも使えない。これがストレスの原因なんじゃないかなって思うんです。
京都の飲食店でも起きている香水問題
実は京都のカフェとか飲食店でも、この香水問題って結構話題になることがあるんですよ。で、「外国人のお客さんはなるべく遠慮してもらって…」っていう態度を取る店がちょいちょいあります。
店側の気持ちもわかるんですよね。いったん店に入れちゃうと、二次的コントロールはできないし、かといって一次的コントロールで「香水控えてください」って要望出すのもストレスだし。特に京都の和食店なんて、料理の繊細な香りを大切にしてるから、強い香水は本当に困るんだと思います。
日本では「スメルハラスメント」、略して「スメハラ」っていう言葉もあるくらいで、強い匂い全般が「他人に迷惑をかける行為」として認識されてるんですよね。欧米だと香水は自己表現の一つだけど、日本では配慮不足ってことになっちゃう。この文化的なギャップって、すごく大きいと思いません?
お互い気持ちよくおいしいものを食べるために
というわけで、今日は香水と文化摩擦について、歩きながら考えてみました。一次的コントロールが苦手な日本人にとって、二次的コントロールも効かない「香り」の問題は、実はオーバーツーリズムの中で一番厄介な問題なのかもしれません。
じゃあ、どうすればいいのか。僕は、気づいた時に教えてあげるのが一番いいんじゃないかと思うんです。外国人の友達や同僚に、「日本のレストラン、特に和食店では香水控えめの方がいいよ」って。最初は嫌な顔されるかもしれないけど、お互い気持ちよくおいしいものを食べたいじゃないですか。
文化の違いって、知らないと摩擦になるけど、知ってれば配慮できる。香水の問題も、そういう「知ってもらう」ことから始まるのかなって思います。
もしこの記事が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアして、コメントで教えてください。みなさんは強い香水の人が隣に座った時、どうしてますか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。家に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い