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デンマークの
ヒュッゲ(HYGGE)のご紹介
vol.7幸せの国デンマーク
ヒュッゲとマインドフルネス
幸せの国デンマークの価値観である、ヒュッゲ(hygge)。
ヒュッゲはデンマークの一番新しい輸出品だね、という表現をしている英語の記事は数多くあり、おもちゃのレゴ以来の世界規模への輸出品とまで言われています。
イギリスでは2015〜2016年にヒュッゲへの関心が高まり、2016年には多くのヒュッゲに関する書籍が出版されました。ヒュッゲという単語は英語に”輸入”され、現在では普通に使われるようになりました。(日本では海外の関心の高まりを受けて、2017年に多くの本が日本語訳で出版されています)
なぜイギリスを筆頭に、世界中でヒュッゲが着目されているのか。
実は、マインドフルネスと大きな関わりがあるのです。今回は、その背景をみていきたいと思います。
マインドフルネスから始まった「心の状態」への関心
マインドフルネスは、瞑想などを通じて「今現在の体験に対して、評価することなく意識を向けること」を指します。
マインドフルネスな状態になることで、集中力が増し、創造性や幸福感、健康、リラックス感が高まると言われています。瞑想による効果が科学的に(神経科学の研究で)証明されたことにより、欧米で積極的に取り組む人が増えています。
アメリカでは、スティーブ・ジョブスが瞑想を取り入れるなど、シリコンバレーで空前の禅ブームが起こり、なかでもグーグルが2007年に開発したマインドフルネス研修プログラムSearch Inside Yourselfが評判となりました。2012年にグーグル社外にも提供されるようになったことで、マインドフルネスは一躍有名になりました。
イギリスでは、2015年にMINDFUL NATION UK(マインドフルな国 イギリス)というレポートが議会に提出され、国家プロジェクトとして心身の健康、教育、労働環境、司法においてマインドフルネスを推進していくという提案がなされました。
マインドフルネスが大きく関心を集めることになった理由の一つは、
ということです。
それまで仕事の成果は、仕事の内容(タスク)と、仕事をする人のスキルや習熟度が重要と考えられていました。しかしそれだけではなく、やる気やリラックス度など、心の状態がその成果に大きく影響するという新しい価値観が登場したのです。心の状態が良ければ、充実感を得ることができ、退職率なども減少するなど、副次的な効果も生まれます。
そうして2010年代前半にかけて、心の状態への関心がだんだん高まっていきました。
世界幸福度ランキングに見るデンマークへの関心
世界幸福度レポート(World Happiness Report)は、2012年に始まりました。国連の持続可能開発ソリューションネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)が156カ国を対象に調査・発表しています。
世界幸福度レポート(World Happiness Report)
世界幸福度調査の「幸福度」とは、自分の幸福度がどれくらいの段階にあるかを答える世論調査によって得られた数値の平均値で、主観的な幸福度です。この幸福度に対し、GDPや社会保障、健康寿命など他の要因といかに関連しているかを分析しています。
記念すべき第1回、デンマークは世界第1位!そして翌年も連続第1位!
ほぼ毎年発表されるランキングで、2016年にも1位、それ以外でも常に3位以内をキープしています。ここ3年ほどは1位フィンランドに次ぐ2位となっています。北欧諸国やオランダ、カナダなど常にトップ10以内にいますが、トップ3から落ちたことがないのは、デンマークだけです。
これまで世界ではGDPなどの経済的な豊かさや社会保障の充実など、さまざまな形で社会の発展を目指してきました。しかし、経済大国がトップ10に入らないという事実は、その社会の発展は人々の幸せにつながっているのか、人の幸福度はどうやって向上させていくことができるのか、という大きな問いを投げかけています。
実は、一気にヒュッゲへの注目が集まったのは、それまでに「マインドフルネス=心の幸福度を伸ばす取り組み」への関心の高まり、そして普及という背景があったからなのです。
マインドフルネスとしてのヒュッゲ
ヒュッゲは、毎日の生活の中で、小さな幸せや充実感、心地よさを感じることを大切にする意識です。幸福感を感じる「心の状態」をどのように意識できるか。
マインドフルネスでは、瞑想などを通じて、今この瞬間に意識を向けていく(未来の心配や過去を悩むのではなく)のですが、ヒュッゲは幸福感やリラックスを感じているかどうかに意識を向ける、まさにマインドフルネスです。
そして、ある意味、とても取り組みやすいマインドフルネスだといえます。
なぜなら、美味しいものを味わう感覚や、ゆったりした心地よさに対して意識を向けていくものだからです。
例えば料理を作っている時、材料の香りや切る時の感覚に意識を向けて、その瞬間を楽しむ。
また、ソファで毛布にくるまって丸くなり、温かいコーヒーを手に、その暖かさとゆっくりとした感覚に意識を向けながら、のんびりと本を読む時間を楽しむ。
デンマークのヒュッゲで大切にされているのは、毎日ちょっとずつヒュッゲを感じること。
身構えて瞑想に取り組む、というのではなく、
毎日を少しずつ、小さな幸せを感じているか、「心の状態」を意識する。
そうすることで、少しずつマインドフルネスに近づいていけたら、きっと嬉しい効果がたくさんありますね。
小さな幸せを、毎日少しずつ。
幸福感の人生貯金を、みなさんもぜひ。
祖父江 玲奈
ファシリテーター
中央大学総合政策学部卒業。アクセンチュアにて、組織戦略、組織設計、人材開発戦略を中心とするコンサルティング業務に従事。多くのインターナショナルプロジェクトに参画する。その後、日産自動車株式会社にて、女性のお客様をターゲットとした商品開発を担当。グローバル共通/地域固有でのお客様調査、また男女差の科学的分析に基づいて多くの提案を行い、商品を実現した。商品開発でのアイディア創出プロセスにおいて、論理的・俯瞰的視点による多面的分析力、また画像/ビジュアルイメージやプロトタイプを通じた複合的な情報収集(キュレーション)のプロセスが、新しい商品像を生み出すために非常に重要であることを発見。イノベーションを生み出すアイディア創出方法を構築中。
青山学院大学ワークショップデザイナー講座 修了。デンマークデザインスクール KaosPilot Creative Leadership course 修了。シータヒーリング認定インストラクター/プラクティショナー