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- 1.AIによる同時通訳・翻訳があれば英語学習は不要?
- 2.それでも人間が外国語習得をする意味
- 3.最近のクラウドツールを活用した英語学習の方法How to
- 4.使用するツールは下記の通りHow to
- 5.まとめ
※英語学習のHow toにだけ興味がある方はHow toの項目だけお読みください
1.AIによる同時通訳・翻訳があれば英語学習は不要?
「英語」というものに、社会人になってから悩まされ続けてきました。
仕事においても研究においても、英語が出来ないとどうにもならないわけです。しかし、母語である日本語のように道具として英語をうまく使いこなせるわけではありません。よって、常に「能力にフタをされている」感覚が消えません。
そんな中、最近は機械学習/ディープラーニング技術によって、翻訳・通訳のツールに大きく進化が見られます。第二言語として英語を使うユーザーにとっては、非常に助かる状況になってきたのではないでしょうか。
AIによる同時通訳も現れ始めています。2022年段階では、翻訳スピードと訳文の精度にはまだ課題が見られるツールも多いのですが、時間の問題で解決されるでしょう。ディープラーニングによって極めて自然な同時通訳が可能になる世界は、もう間もなく訪れるだろうと思います。
遠くない未来では、自分が普通に日本語で話した内容が、相手の言語にリアルタイムに通訳され、相手の言語もリアルタイムで日本語に通訳されるようになるでしょう。バーチャル空間ではごくごく自然にそうした会話になると思いますし、実空間でも、なんらかのデバイス(ARデバイスやイヤホン)を通じてそうした会話が実現するのだろうと思います。
2.それでも人間が外国語習得をする意味
そう考えると、英語を始めとした外国語学習は不要になるのかもしれません。
個人的には、そういう時代になってもおかしくないと思います。必修科目として国民全員が英語を学ぶのではなく、選択科目の一つとして自分で選択した人だけが英語を学ぶという形式でもよいのかもしれません。
一方で、どんなにリアルタイムの翻訳・通訳テクノロジーが発達したとしても、第二言語学習自体はなくならないと思います。理由は2つあります。
1つ目は、自分の発言には責任を持たなければならないからです。完全に翻訳・通訳デバイス頼みになり、自分の発言の翻訳を理解できないのであれば、自分の発言には責任が持てなくなってしまいます。
2つ目は、言語学習は自己変革の契機になるからです。言語を学ぶという行為は、単に道具の使い方を学ぶだけに留まらず、異なる社会の価値観と意味の体系を学ぶことにも繋がっています。
たとえば、私が英文を書いてネイティブの校正を受けると、多くの場合、動詞を中心としてより「強い」表現に修正されます。「こんなに強い表現でよいのだろうか?」とか「こんなに言い切ってしまってよいのだろうか?」と逡巡してしまうこともあるのですが、これは文化の差です。北米では、自分の意見をはっきりと強く打ち出して、相手に影響力を与えることは好ましく、日本人が「強い」と思う表現が北米では普通と感じられることが多々あります。
このことは、言葉が単に「通じる・通じない」という次元の話ではなく、生き方全般につながってくる話です。異なる言語を習得することは、極端な話、異なる生き方を習得することでもあります。
以上を考えると、テクノロジーがより発達する未来においても、仕事や学業で本格的に外国語を使う環境にある人は、これまで同様、言語習得トレーニングは行う方ことになるでしょう。
3.最近のクラウドツールを活用した英語学習の方法
そうなってくると、気になるのが時間と労力です。
言語習得には膨大な時間がかかります。翻訳・通訳テクノロジーがより発達する将来を考えると、語学学習の投資対効果にはシビアな目を注がざるを得ません。
翻訳・通訳の道具がテクノロジーの力で革命的に進化したのだから、同じ様に人間が言語を学ぶプロセスもテクノロジーの力で変革したいものです。今回は英語学習を例にとって、最近のクラウドツールを活用した英語学習の方法を考えてみたいと思います。
下記に示すのは、筆者自身が最近行っているスピーキングのトレーニング方法です。効果検証は、今後筆者自身が身をもって実証していく必要がある段階です。ただ、明らかに昔とは異なるトレーニング方法になったことは確かで、その事自体が面白いなと感じています。私としては、他の3技能も含めて、より効果的な新しい言語学習トレーニングの方法が開発され一般化されていくことを強く期待しています。
まず、Speakingのトレーニングを考える上で、私は下記のように考えています。
- Speakingトレーニングを考える上での私の基本的な考え方
4.使用するツールは下記の通り
上記の4つのプロセスを回すのは昔は大変でした。しかし、今はテクノロジーの進化で非常に楽に、かつ安価に行う事ができるようになりました。
自分の知識の「外部化」と、アップデートした知識の「内面化」の繰り返しをいかに効率よく出来るかということがポイントになり、まさにここでテクノロジーが使えます。
使用するツールは下記の通りです。①~③のそれぞれのステップに対応しています。他にもツールは色々とあると思いますが、下記に挙げるものは私が実際に使ってみて、精度や効果性が確立していると感じるものになります。(*ちなみに、下記ツールのベンダー/企業とHIJは一切の利害関係はありません。評価はあくまで筆者の感想です)
1 の使用ツール:Otter
まずは、自分の表現パターンの棚卸しです。何らかの素材を英語で説明するのが良いと思います。TOEICのS&Wの教材なんかでも良いと思います。私は自分のプレゼンスライドを使っています。自分のプレゼンスライドを使うのはプレゼン練習にもなるし、表現パターンの増加にもなって一石二鳥です。
ここで使うクラウドサービスがOtterです。Otterは、英語の会話をそのまま文字にしてくれるトランスクリプションのサービスです。時間制限はありますが、今のところ、英語学習で使う分には無料版でも問題ないと思います。
Otterはトランスクリプション作成の精度が非常に高く、私の日本人発音の英語でもかなりの精度で正確なトランスクリプションを作成してくれます。自分のスピーチを録音しながら、即座にトランスクリプションを作成してくれるので、自分のトランスクリプション見ながらプレゼンを聞き返すだけでも色々な気付きがあります。
編集はGoogle Docsの方が何かと便利なので、Otterでトランスクリプションを作成したら、それをテキストでダウンロードし、Google Docsにコピペしておきます。
2 の使用ツール1:DeepL
次に使うのがDeepLです。DeepLの翻訳は、非常に自然な訳文となることが多く、私が知る限りGoogle翻訳等の他のツールよりも自然さが際立っています。
自分のトランスクリプションを見ながら、「もともとはこういうことが言いたかったんだよな~」という日本語を入力してみて、そこから訳出される英文と比較してみます。どうして自分は現在の発話をしたのか。DeepLが訳出した訳文とはどう違うのかを考えること自体が、表現パターンの修正に繋がります。
AIが先生になる感覚でしょうか。「そうか~、そういう表現の作り方があったか~」と反省しながらトランスクリプションを修正します。
2 の使用ツール2:ProWritingAid(もしくはgrammaly)
DeepLを使って、オリジナルのトランスクリプションを修正したら、それをProWritingAidに入れます。ProWritingAidは文法ミスの他に、より明確な表現が出来る場所やより強い表現に入れ替える可能性を提案してくれます。
こうした修正提案を見ると、自分が間違いやすい文法と、改善できる表現のクセに気づくことができます。冠詞の使い方や単数形・複数形の区別は、日本人にとっては大変間違いやすい項目です。ネイティブも感覚的に使い分けているところがあるため、繰り返し繰り返しフィードバックを受けて感覚をつかんでいくしかありません。そのフィードバックをAIが出してくれるのは大変助かります。
ProWritingAidと似たサービスにgrammalyというものがあります。私は仕事柄両方使っています。おそらくgrammalyの方が有名だと思いますが、自分の文体や表現のクセを直すという目的だとProWritingAidの方が適しているように思います。
3 の使用ツール:オンライン英語レッスンサービス(例:Eigox)
AIのクラウドサービスである、DeepLとProWritingAid(Grammaly)も役立つフィードバックをくれますが、これだと足りません。
現状のAIは、そもそも何が言いたかったのか、という意味のレベルから根本的に違う表現を提案してくれません。その為、よりこなれた表現を見つけるためには、やはりネイティブにフィードバックを依頼することが必要です。一段高い自然さの表現になおしてくれます。
プルーフリーディングの専門家にお願いするがベストなのかもしれませんが、コストの問題があるので、頻度高くこのプロセスを回す場合はオンラインの英語レッスンサービスを使うのも良いオプションだと思います。
オンライン英語教育会社はいくつもありますが、第一言語が英語の先生を探す必要があります。どこの会社を使っても良いと思いますが、個人的には上記のEigoxで良い先生を探しました。ここで、Google Docsのトランスクリプションを編集モードで校正してもらいます。
ちなみに、下記は私の実例で、ホフステードモデルの特徴を説明したスライド1枚を例に、直してもらったトランスクリプションです。
5.まとめ
今回は、最近のクラウドサービスを組み合わせてSpeakingのトレーニング方法をアップデートするとどのような方法の可能性があるのかを見てみました。
昨今のテクノロジーの進化とそれに伴う道具の進歩は著しいものがあり、より効果的な学習方法が今後も可能になっていくと思います。外国語の学習は非常に時間がかかるものであり、挫けそうになるわけですが、AIのクラウドツールは、インプット(≒自分の入力)に対して即座にアウトプット(≒修正提案や訳文)を出してくれます。このフィードバックのスピード感が若干ゲーム的で、昔に較べて遥かに楽しく効果的に語学学習が出来る環境になっているのではないかと思います。
皆さんも色々と試される中で、より効果的な学習法を見つけたら共有いただければと思います。
渡辺 寧
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程在籍。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。