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外国人採用は待ったなし|異文化人材が働きやすい組織を作る2つのステップ

2018.10.01 渡辺 寧

外国人採用が増えている

厚生労働書が平成29年に発表した外国人雇用状況の届出状況まとめによると、平成29年10月末現在での外国人労働者数は約128万人で、これは届出義務化以来、過去最高の人数だそうです。(出所 厚生省

前年同期比較では約19万人の増加であり、前年比18%増という高い伸びを示しています。産業別労働者数を見ると、製造業で働く労働者が全体の約3割を占め最も多くなっています。また外国人労働者を雇用する事業所でも、22%が製造業になっており事業所数でも製造業が最多となっています。

製造業をはじめとして、企業の外国人採用が増えている大きな理由として、国内の生産人口の減少が挙げられています。

下の図は総務省国勢調査と国立社会保障・人口問題研究所のデータによる、日本の人口推移/予測ですが、そもそも日本の人口が2005年以降減少に転じてます。

出所 総務省

2011年以降は非正規での就労機会の多様化によって就労人口は横ばいから微増ではあるものの、非正規比率が上がることにより雇用者1人当たりの労働時間が減ることもあり、長期的には日本の雇用者の労働力は減少傾向にあります。 

人口減だけでない、外国人採用に頼らざるを得ない日本企業の現状

こうした、日本国内の労働力不足を背景とした外国人採用とともに、企業の積極的な事業拡大に外国人スタッフが欠かせないという企業側の思惑もあります。

私自身も、コンサルティングのプロジェクトの中で、海外のエンジニアを大量に採用するという仕事をしたことがあります。この時は、将来的に成長が見込まれる産業セクターで、高度な技術と経験を有したハイクラスのエンジニアが圧倒的に日本に足りず、海外からハイクラスのエンジニアを大量に招聘せざるを得ないという事情がありました。

また、企業の海外展開を考える際に、日本人マネージャーの力不足ということもしばしば指摘されます。

少し前の調査ですが早稲田大学コンソーシアムが行った海外拠点における日本人マネージャーと現地人マネージャーとの比較調査があります。この調査において、日本人マネージャーが現地人マネージャーよりも優れている項目はなく、ミドルマネジメントにおいては過半数の項目で日本人マネージャーは現地人マネージャーよりも劣っているという評価がなされました。出所 企業の海外展開の要諦ーグローバル・リーダーに求められる「グローバル・マインドセット」を、いかに醸成していくのか

外国人採用の増加の背景には、海外拠点の状況を考える際に現実的な問題として、自社の既存日本人スタッフにマネジメントを任せることが難しいという事情もあり、将来的な海外事業拡大のために外国人採用を増やしておきたいという企業側の思惑もあるようです。

日本企業を取り巻くこうした環境変化、すなわち、生産人口の減少は今後も続き、海外市場の重要性も上がることを考えると、企業における外国人採用の動きはより高まっていくことが予想されます。

日本の組織は採用した外国人にとって働きやすいのか?

外国人社員の増加が継続的に見込まれる一方、日本の企業組織は果たして外国人にとって働きやすいのか?という疑問が中々解消しません。日本語の障壁の問題もさることながら、過度にリスク回避的なマネジメント傾向や、不明瞭なコミュニケーションなど、日本文化の特殊性が常に見えない障壁として外国人採用の前に存在します。

私が外国人エンジニア採用支援のプロジェクトを行った際にこんなことがありました。

採用基準の管理と語学サポートの為に、私自身も外国人エンジニアの採用面談に同席をしていたのですが、ある面談の際に、採用担当の日本人エンジニアがヨーロッパ系の候補者に対して、「日本は「和」を重んじる国です。あなたは「和」を重んじますか?」と質問したことがありました。 その時の候補者は、一瞬戸惑った後に「私はチームプレーを重視します」と答えました。それを聞いた日本人エンジニアはほっとしたような表情を見せていました。私は、横でこのやり取りを聞きながら、果たして日本人エンジニアが言いたかったことがヨーロッパ系の候補者に伝わったかどうかははなはだ疑問だな、と思いました。

日本人は「グループ」は作れるが「チーム」作りが上手くない、と言われることがあります。タックマンモデルに代表されるように、欧米(米国・英国等)ではチームとは意見の食い違いや対立といった混乱期を経て形成されていくと考えます。この際、意見の対立は避けるべきことではなく、むしろ積極的に行うべきことと考えられます。

日本人エンジニアが言った「和」は、どちらかというと意見対立を避けて、足並みをそろえてプロジェクトを進めたいという意図のものであり、欧米系候補者が言った「チームプレー」とは意味が違いました。この考え方の違いは文化特性から来ている側面が大きく、外国人採用後も中々難しい問題として立ちはだかっていました。

2段階の組織整備で、外国人採用を組織力向上に繋げる

こうした文化の差による、外国人採用後の組織運営の難しさは、どこの国出身の人を採用しても必ず直面する問題です。日本文化は良くも悪くも、どの国の文化とも似ておらず、よってどこの国の人を採用しても何らかの文化的な摩擦が発生します。

今後更なる増加が見込まれる外国人採用を組織力向上に確実につなげるためには、待遇やキャリアパスの整備、外国人社員への支援体制の構築といったハード面の増強とともに、文化に関わる働く環境というソフト面の整備が不可欠です。

このソフト面の増強は2段階に分けて行います。

まず、最初の段階は純粋に「お互いの文化の違いを知る」ということです。

外国人採用において関係してくる国民文化は、それぞれの国によって異なります。しかし、日本の場合、なぜか外国人採用や採用後の処遇に関して、「外国人社員に対してはこのように対応すべき」という画一的で単純なアドバイスがまことしやかに語られることが多いように思います。

例えば、「日本人は表現が曖昧なので、外国人に対してははっきりとしたコミュニケーションをするべき」といったことが良く言われます。こうした注意が必要な場面があることは否定しませんが、外国人であれば誰であっても「日本人相手にコミュニケーションを取る時よりも、はっきりとしたコミュニケーションを取るべき」と考えるのは間違っています。なぜなら、国民文化によっては、はっきりとした表現を日本文化以上に嫌う文化もあるからです。

外国人採用後の組織増強を考える上では、こうした単純なルールを流布するのではなくて、日本文化とは一体どのような特徴を持っていて、採用した外国人のそれぞれの出身文化とはどのように違うのか、ということを体系立てて理解し、お互いに認識することが大切です。ホフステードの国民文化6次元モデルは、国によって異なるこうした包括的な異文化理解に役立ちます。

ホフステードの国民文化6次元モデル=軸に基づき文化の違いを知る

 

その上で、お互いが合意できる組織文化を作っていく

お互いの文化の違いを知る」という第1段階の共通認識をまずきちんと作ることが出来たら、その上で第2段階として、「目指すべき組織文化」についての合意を取っていきます。

国民文化が異なるのは仕方のないことで、そこには良い・悪い、もありません。しかし、企業が組織の存在目的を達成するためにはその目的達成を促進する文化を作る必要があります。企業文化が「目的達成を促進するかどうか」は「まとまり」によってもたらされます。つまり、その組織のメンバーがどの程度、自組織の文化の共通認識を持っており、それにコミットしているかによって、企業文化の強さは変わるということです。

このプロセスでは日常的な対話が必要となります。出身国が異なり、それぞれが幼い時から親しんだ文化はそれぞれ異なり、その為、各自が自然と感じる価値観は違うことは十分に認識した上で、「私たち」としてどのような文化を作り、その文化のもとで仕事を進めていきたいか/行くべきか、ということについて共通認識を作っていく。その継続的な繰り返しによって組織文化は次第に「まとまり」を獲得していき、強いものとなっていきます。

外国人採用が増えるということは、組織の多様性(ダイバーシティ)が増加するということを意味します。この多様性マネジメントをきちんと行うことが、外国人採用増時代の組織力に直結していきます。


WRITER

渡辺 寧

Hofstede Insights Japan 取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。

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