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AI対話の心地良さと危険性:どこまで頼っていいんだろう? – 歩きながら考える vol.10

2025.03.24 渡邉 寧 博士(人間・環境学)
「歩きながら考える」vol.10

このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

歩きながら考えるvol.10AI対話の心地良さと危険性:どこまで頼っていいんだろう?

こんにちは。今日はまた歩きながら、「AIとの対話の心地良さとその危険性」について考えてみたいと思います。ちょうど今、京都の高島屋の前の四条通りの地下を歩いてます。地下にスーパーマリオの壁画があるあたりですね。スーパーマリオで遊んだのは小学生の時代でしたね。昔と変わらずに人気がある存在が居るというのは、僕にとってはなんだかとても嬉しいことです。

最近、AIとの対話が日常にどんどん入ってきてて、その便利さを実感する一方で、「これ、どこまで頼っていいんだろう?」と思うことが増えてきました。今回はそのあたりを、2025年の今だからこそ感じる視点で話してみようと思います。

AIとの対話の心地良さに慣れすぎる話

まず最初に、AIの対話力って、ほんとすごいですよね

例えば、私、ChatGPTとかGrok 3とかSesameとか、いろんなAIと話すのですが、基本的にAIは(今のところ)半端なく丁寧で優しいですね。どんな質問しても、「それは良い視点ですね」とか「そうですね、こういう考えもありますよ」って、いつも穏やかでポジティブな反応が返ってきます。一方で、ちょっと変わったオーディオモードのAIもあって、例えば、Grok 3の「議論モード」を試してみると、全然違いますね(参考記事:AIとの会話で感情が揺れる話:ChatGPTとGrok 3の違いに驚いた)。「そんな考え方じゃダメだろ」とか「もっとちゃんと論理立てろ」みたいに、ガンガン突っ込んでくる。これ、最初は腹立つのですけど、慣れてくると逆に面白いなって思う瞬間もあるんですよね。

これからも個性的な対話型AIがたくさん出てくるのだと思います。

未来のコミュニケーションはAIが主役?

ここからちょっと未来の話に飛ぶんですけど、AIがコミュニケーションのシェアの大きな部分を占める世界って、すぐそこまで来てる気がするんです。

今だって、友達と話すより、AIに相談する方が早いことってありそうですよね。例えば、仕事のアイデア出しとか、悩み相談とか。で、これがもっと進むと、人と人とのコミュニケーションの間にAIが入ってくることになりそうです。人と直接対話すると角が立つけど、AIを仲介させて、仲介AI同士で話してもらうとか。

教育でも、先生が一人一人に教えるんじゃなくて、AIが生徒ごとにカスタマイズした授業をしてくれる。面接でも、AIが相手の反応を分析して最適な質問を投げかけてくる。人と人との会話が、徐々にAIに置き換わっていくような未来に向かっているのかもしれません。

AIとのコミュニケーションイメージ

これ、ポジティブな面も大きいですよね。効率が上がるし、個別対応が可能になる。でも、同時に怖いなと思うのは、そのシェアが大きくなりすぎたとき、私たちのコミュニケーションってどうなるんだろうってこと。AIとの会話に最適化された人たちが増えて、現実の人間関係が薄くなったり、複雑な感情を扱えなくなったりする可能性ってないですか?このあたりの話は、アメリカのMITのシェリー・タークルという研究者が昔から警鐘を鳴らしていて、確かにそうだなと思います。

例えば、AIってこちらが話しかけると何らかの返答をしてきますね。人間みたいに「何も言わず黙ってる」とか「予測不能な感情を見せる」ということはまだ少ない。そういう曖昧さや深みが減った世界になったら、社会全体のコミュニケーションの当たり前が変わりそうです。

どこまで頼るか、どう向き合うか

で、結局思うのは、AIとの付き合い方にはしばらく注意する必要があるな、ということです。

私は個人的に、AIがコミュニケーションに入ってくるのはめっちゃポジティブだと思ってます。個別化の力はすごいし、時間やコストの節約にもなる。でも、その便利さに依存して、社会の中枢にAIを位置づけていることに関しては慎重になったほうが良い。中長期的に自分の心とか社会にどう影響するかわからないから、ちょっと立ち止まって社会的な議論と合意をしていく必要がある。

個人のコミュニケーションという観点で言えば、AIとの会話は不愉快な経験にはなりにくいので、その短期的な快適さに引っ張られて、気づいた時には「人と話すのが苦手な人」が増えてる、なんてことになりかねない。

どこまで頼るか、どう向き合うかイメージ

まとめ:歩きながら未来を考える

そんなことを考えてる間に、そろそろ家に近づいて来ました。AIの心地良さと、未来のコミュニケーションのシェアって、切り離せないテーマですよね。2025年の今だからこそ、このバランスをどう取るか、立ち止まって考えるタイミングなのかもしれません。

というわけで、今日は「AIの心地良さと未来の会話」を歩きながら考えてみました。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。この話が面白いと思ったらぜひSNSでシェアしてコメントで考えを教えて下さい。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!


渡邉 寧 博士(人間・環境学)

代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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