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ポピュリズム批判の前に、エリート層は何を成し遂げたのか – 歩きながら考える vol.116
今日のテーマは、トランプ大統領がホワイトハウスで総合格闘技UFCの試合を行うことを発表した件について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
*文化以外のテーマも含むシリーズ全編は、筆者の個人のページでご覧いただけます。
こんにちは。今日は駅から家に向かって歩きながら、ちょっと衝撃的なニュースについて考えたことを話してみようと思います。
日経新聞の8月20日の記事で読んだんですけど、トランプ大統領が2026年のアメリカ建国250周年記念で、ホワイトハウスで総合格闘技UFCの試合を開催するって発表したそうです。
ホワイトハウスに八角形の金網(オクタゴン)を設置して、プロの格闘技ですよ。史上初だそうで。正直、「え、マジで?」って思わず立ち止まっちゃいました。あの荘厳なホワイトハウスに格闘技のリング。すごいミスマッチ感ですよね。
記事によると、イギリスのバース大学のデイビッド・ムーン上級講師は「反エリートのポピュリズムに訴える手段」と分析しているそうです。確かに、MAGAキャップといい、今回の格闘技といい、支持層へのアピールは露骨ですね。
ちょっと待って、ポピュリズム批判だけでいいの?
でも、歩きながらふと思ったんです。これを「またトランプのポピュリズム」って片付けるのは、ちょっと違うんじゃないかって。
だって、なんでこういうパフォーマンスが効くのか。それは一般のワーキングクラスの人たちの中に、エリート層への不信感があるからですよね。で、その不信感って、実は図星かもしれないじゃないですか。
アメリカの格差、どんどん広がってます。エリート層は「我々が社会を良くする」って言いながら、結果として上の人たちだけがリッチになって、普通の人たちとの差は開くばかり。これで「エリートを信じろ」って言われても、そりゃ無理ですよ。
ポピュリズムって「症状」であって断罪すべき「原因」じゃないんじゃないか。ポピュリズム批判をする前に、そもそもエリート層は社会運営をちゃんとできたのか。そっちを問うべきなんじゃないでしょうか。
権力を持つ者の責任:ホフステードの視点から
この現象を、ホフステードの「権力格差(Power Distance)」という概念から考えてみましょう。
権力格差が高い文化では、一部の人が権力を握ることを人々は受け入れます。「その方が集団全体がうまくいく」という前提があるから。でも重要なのは、権力を握った人には、それと表裏一体の責任が生じるということです。
権力者が自分たちだけ豊かになって、集団全体を良くできなかったら?そりゃ、激烈なバックラッシュが起きますよ。今のアメリカで起きているのは、まさにこれじゃないでしょうか。
当たり前の話なんですけど、どうもこれが忘れられがちです。
日本だって他人事じゃない
で、これ、アメリカだけの話じゃないんですよ。
日本でも最近、エリート層やインテリへの風当たり、強くなってきてません?既存政党への不信感は相当の域にまで来ているように思います。これも結局、格差が広がっていることの表れだと思うんです。
政治を評価する時、GDP成長率とか株価とか景気指標を見がちですけど、本当に大事なのは「普通の人たちの家庭の暮らしが良くなっているか」じゃないでしょうか。この視点を忘れたら、日本でも「首相官邸で格闘技」みたいな極端なパフォーマンスが支持される時代が来るかもしれません。
というわけで、今日はトランプ氏のUFC開催から、エリート層の責任について考えてみました。ホワイトハウスの金網リング、2026年にどんな光景になるのか、ちょっと注目してみようと思います。
もしこの話を読んで何か思うところがあったら、ぜひSNSでシェアしてください。エリートの失敗を批判する「ポピュリスト」を批判する前に、エリート自身が果たしてきた責任について、みなさんはどう思いますか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。家に着いたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い