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ヒーローの違いが文化を映す:アンパンマンとアメリカ型ヒーローを比べてみた – 歩きながら考える vol.12

2025.03.31 渡邉 寧
「歩きながら考える」vol.12

今日はアンパンマンに見る文化的価値観について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。

こんにちは。今日はちょっと春の風を感じながら歩きつつ、「ヒーローの違いが文化を映す」というテーマで話をしてみようと思います。最近、毎日新聞でやなせたかしさんのアンパンマンについての記事を読んで、ヒーロー像って文化によって全然違うんだなって改めて感じたんですよね。そこから、アメリカのマーベルヒーローとアンパンマンを比べてみたら思うことがあったので、ゆるくシェアします。ちょうど3月31日からNHKでドラマ「あんぱん」が始まるタイミングだし、その予習も兼ねて歩きながら考えてみました。

アンパンマンとスパイダーマン、どっちがヒーローらしい?

新聞をパラパラと見ていて、「アンパンマン」という見出しが目に入ってきたんですよね。3月23日の毎日新聞に載ってた記事(「やなせたかしさんがアンパンマンに込めた『ほんとうの正義』とは」)。記事を読んで、やなせさんが「正義ってかっこいいもんじゃない、痛みを伴うものだ」って語ってたのが印象的でした。アンパンマンって、自分の顔をちぎって困ってる人に渡すじゃないですか。見た目は丸っこくて、焼き焦げついてて、マントもちょっと汚れてる。そんな「かっこ悪い」ヒーローが、自己犠牲で人を助ける。

これを読んで思い出したのが、アメリカのヒーロー。例えば、スパイダーマン。ピーター・パーカーは普通の高校生に見えるけど、実は蜘蛛の力でビルを飛び回って、敵をやっつけて世界を救う。めっちゃかっこいいですよね。アクションシーンなんて映画で見るとテンション上がるし、「自分にも秘められた力が眠っているかも!」って思っちゃうかもしれません。

この対比、歩いてて頭の中でぐるぐるしてたんですけど、アンパンマンとスパイダーマンって、ヒーローの「らしさ」が全然違うんですよね。アンパンマンは「誰かを助けるために自分が傷つき、その姿がアンパンマンらしさ」っていう感じでしょうか。スパイダーマンは「秘めた力で悪を倒す」っていうスタイル。どっちがヒーローらしいかって聞かれたら、好みによると思いますけど、文化の違いが垣間見えると感じます。

ホフステードの視点で紐解いてみる

で、ここでちょっと文化分析っぽい話を持ち出してみます。ホフステードの6次元モデルに照らし合わせると、ヒーロー像の違いを違った観点で捉えることが出来ます。ホフステードは、オランダの社会心理/経営学者で、文化を「個人主義」と「集団主義」、「男性性」と「女性性」と言った軸で分析します。

アメリカって、ホフステードのスコアだと個人主義が91と非常に高い文化。個人が優れた力で困難を乗り越えることに価値が置かれる文化なんですよね。だから、スパイダーマンみたいに「俺が世界を救う!」みたいなヒーローは社会の価値観にあっています。一人で戦って、個人が社会を救う姿がこころに響きやすい。

対して日本は、個人主義が46で集団主義寄り。アンパンマンは「自分が自分が」という個人を押し出すよりも「みんなを助けるのが当たり前」という姿勢で、自分の顔を差し出します。個人のためというより、むしろみんなのために動機づけられるヒーロー像が、日本の文化に響くのかもしれませんね。

振り子イメージ

3月31日から始まる「あんぱん」で見えてくるもの

で、ここでタイムリーな話。2025年3月31日からNHKで連続テレビ小説「あんぱん」が始まるそうです。アンパンマンの生みの親、やなせたかしさんと妻の小松暢さんをモデルにしたドラマだそうで、中園ミホさん作。主演は今田美桜さんと北村匠海さんで、アンパンマンが生まれるまでの「愛と勇気の物語」らしいです。

やなせさんがアンパンマンに込めた「痛みを伴う正義」って、このドラマでも描かれるんだろうなって期待してます。

実は、やなせさんの戦争体験がアンパンマンの背景にあるって話もあって。毎日新聞の記事で触れられていましたが、彼は「お腹をすかせた人を救うのが正義」って戦争で感じたらしいんです。それが、アメリカの映画などで見られる「敵を倒す正義」と全然違う視点で、ドラマでどう表現されるのか楽しみです。

振り子イメージ

自分の中のヒーロー像って何だろう

歩いててふと思ったんですけど、じゃあ私が好きなヒーローってどっち寄りなんだろうって。私はアンパンマンの「誰かのために頑張る」感じも好きだし、スパイダーマンの「自分の力で立ち上がる」姿にも憧れる。でも、やっぱりアンパンマンの自己犠牲的な優しさに心が動くかな。

みなさんはどうですか? 自分の好きなヒーローを考えてみると、自分の価値観が見えてくるかもしれない。ホフステードの軸で分解してみると、「私は個人主義寄りかな」とか「集団主義が好きなのかも」って気づきがあるかも。ドラマ「あんぱん」を見ながら、そんなことも考えてみるの、面白いんじゃないかなって思います。

おわりに

というわけで、今日は「ヒーローの違いが文化を映す」というテーマで、アンパンマンとアメリカ型ヒーローを比べてみました。3月31日から始まる「あんぱん」を前に、歩きながらこんなことを考えてたら、ちょっとワクワクしてきました。

もし「私ならこんなヒーローが好き!」とか「ドラマ楽しみ!」みたいな気持ちがあったら、ぜひSNSでシェアして感想教えてくださいね。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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