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正社員とスキマバイトの意外な対比:働き方の未来を考える – 歩きながら考える vol.16

今日のテーマは「スキマバイトとワーク・エンゲイジメント」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。
歩きながら考えるvol.16 正社員とスキマバイトの意外な対比:働き方の未来を考える
こんにちは。今日は移動時間を使って、「正社員とスキマバイトの働き方の違い」をテーマに考えてみたいと思います。昨日のブログで、「静かな退職」の話をしました(「静かな退職」は本当に悪者なのか?職場で歩きながら考えてみた – 歩きながら考える vol.15)。30代から50代の正社員の6割が「できれば働きたくない」と感じてるってやつですね。この話に加えて、スキマバイトの急増を報じた別の記事が出ていて。この2つの対比が面白くて、今日はその違いから見える働き方の未来について、ゆるく話してみようと思います。
スキマバイトの自由さと正社員の縛り
まず、スキマバイトの話を少し。たとえば「タイミー」みたいなアプリを使って、隙間時間に働く人が増えてて、2025年時点で登録者数が2200万人とも言われているそうです(出展:日経MJ 2024-8-3)。日本の労働人口が約6000~7000万人くらいだから、3分の1がスポットで働いてる計算。これはすごいですよね。で、面白いのが、正社員が副業で使ってたり、高齢者も参加してたりする点。朝日新聞に載っていた記事だと、ある70歳のおばあちゃんが「スキマバイトであと10年働きたい」と言ってて。その理由にはもちろん経済的な理由があるわけですが、嫌々働いているという感じがしなかったんですね。スキマバイトは、経済的理由でしょうがなくやっているのか、それとも何か働くモチベーションに繋がる要素があるのか。もしや、意外に仕事を楽しくする構造的な要因があるのではないか?と感じました。

一方で、正社員はどうでしょう。以前の記事でも述べましたが、「静かな退職」ってのは、ワークエンゲージメントが低くて、決められた仕事だけを淡々とこなす状態です。なんでこうなるのか考えてみると、日本の正社員って雇用の流動性が低いことが多いわけですね。1つの会社に長くいて、仕事の成果や影響がすぐに見えない。昇進とか給料アップみたいなフィードバックが来るのも何年も先だったりするし、そもそも評価基準が不透明。これ、モヤモヤすることありますよね。私も昔、正社員として働いていた頃、「自分の将来のキャリアどうなるんだろう?」って漠然とした不安を感じたこと、ありますよ。
でも、スキマバイトは全然違う。1日働いたら「ありがとう」って言われて、5時間で6000円みたいな報酬がすぐ手に入る。「日々決算」って感じで、フィードバックが早いですね。それに、明日働くかどうかを自分で選べる。自律性があると言えばある。確かに、労働単価はそんなに高くない仕事が多く、全体としてスキマバイトだけで生計を立てようとすると、自律性なんて言ってる場合じゃなくて、長時間働かざるを得ず、長期的には疲弊してしまうかもしれない。ただ、仕事の構造的にフィードバックが早い・自分で決められる(自律性が高い)という点に関しては、今後の仕事のあり方を考えるうえで着目しても良いかもしれません。
自律性とフィードバックの違いが鍵
ここでちょっと深掘り。正社員とスキマバイトの違いって、大きく2つあると思うんです。1つは「自律性」、もう1つは「フィードバックのサイクル」。
正社員だと、労働契約で「明日も出社」が決まってる。選択の自由がほとんどなくて、「行きたくない日でも行かなきゃ」ってなる。これは仕組み上、自律性が奪われている状態です。一方、スキマバイトは「明日やるかやらないか」を自分で決められる(すくなくとも仕組み上は)。心理学の「自己決定理論」でも、自律性がモチベーションを上げることが分かってるから、スキマバイト的な働き方の仕組みの方が、もしかしたら意欲につながりやすい要素があるかもしれない。
フィードバックも大きい。正社員だと成果が年収や昇進に反映されるまで長い。「頑張っても評価が来年」とかだと、正直、本当に自分が評価されているのかどうか分からず、やる気に繋がりにくくなるかもしれません。でもスキマバイトは、働いたその日にお金が返ってくる。短いサイクルで成果を実感できるから、「次もやろうかな」って思えるのかもしれません。
正社員にスキマバイトの仕組みを取り入れる?
ここからが未来の話。「このスキマバイトの良さを正社員に取り入れられないか?」と思うわけです。
以前のブログで、中国の調査で、スキマバイトみたいなアプリのマネジメントを受けるのは、普通は厳密な管理がされそうで自主性を奪われそうなものなのに、アプリのマネジメントと自主性が正の相関を示しているという話をしました。賃金水準の問題は有るにせよ、仕事の構造としてスキマバイトの何が人々のやる気に繋がるのかということは注目しても良いかもしれません。
もし、正社員が「今日の午後だけ働く」など、誰にも気兼ねすることなく選べたらどうでしょう?実際、コンサルタントとかプロジェクトベースの仕事だと、これに近い働き方してる人もいますよね。アウトプットに関してはコミットして、いつ働くかは本人が「自分が最もパフォーマンスが上がる」と考える方法に委ねる。
この働き方が出来る職種は限られるという考え方も有るかもしれませんが、本当にそうなのかは、ちゃんと考えても良いように思います。例えば、バックオフィスの経理処理とかでも、仕事のマイルストーンを厳格に決めて後は自由とか、毎月・毎週・毎日の中で「この時間に関しては全員勤務」だとしても、残りは状況次第で対応する、みたいな。コアタイムの働き方により柔軟性を与えるということなのかもしれません。

もう1つ、給与を「日々決算」にしてみるのも面白いかもしれません。月収を日数で割って、「今日の成果はこれくらい」って見える化する。現金で払うかどうかは別として、バーチャルでもいいから即時性があれば、「今日頑張ったな」って実感できるんじゃないかと思うんです。
昔の働き方では、安定のために自律性をある程度手放してたけど、それが今は逆効果になってるなら、新しいやり方を試す価値はある気がします。
まとめ:働き方の選択肢を増やす
色々考えると、結局「働き方の選択肢」が誰に対しても担保されている状況を目指すことが、大事なんじゃないかって結論に至ります。自律性をある程度犠牲にしても安定が欲しい人にとっては、そういう選択肢が選べることが大事だけど、社会が個人主義化する中で、「自律的に働ける」ことに価値を見出す人の数は増えているように思います。そういう人たちにとっては、日々「自分の意思で選択できる」ことが大事だし、「即時フィードバック来る」ということも大事です。
スキマバイト並の自由度で働ける仕組みが、正社員にも少しずつ入ってきたら、70歳のおばあちゃんみたいに「あと10年は働きたい」と堂々と言える人が増えるかもしれない。
もしみなさんの中で、「私ならこんな働き方してみたい」とか「正社員でも自由が欲しいな」って思うことがあったら、ぜひSNSでシェアしてコメントください。あなたのアイデア、聞いてみたいです!
というわけで、今日は「正社員とスキマバイトの対比から見える働き方の未来」を歩きながら考えてみました。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い