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「Appleそれはないでしょ」と思ったけど、ちょっと思い直した話 – 歩きながら考える vol.202

今日のテーマは、Appleの初売りでがっかりした体験から文化差について考えてみた件。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。
(*文化以外のテーマを含む全てのブログは筆者の個人Webサイトで読むことが出来ます)
こんにちは。今日は新年早々にあった、ちょっとがっかりした体験について話そうと思います。結論から言うと、最初は「Apple終わってる」と思ったんですけど、歩きながら考えてたら「いや、これ自分の問題もあるな」と思い直したという話です。ゆるく聞いてください。
Apple Storeで商品を受け取れなかった話
1月2日、Appleの初売りでApple Watchを買い替えようと思って、京都のApple Storeに引き取りに行ったんですよ。オンラインで購入して、支払いも済んでて、引き取り用のメールも持ってる。あとは店頭で商品を受け取るだけ。
ところが、10分くらい待ってようやく自分の番が来たと思ったら、「身分証明書を出してください」と言われまして。持ってないんですよね、スマホだけ持って来たので。「身分証明書がないと引き取りできません」と言われて、そのまま手ぶらで帰ってきました。
いや、もちろん購入時のメールには書いてあったんだと思います。でも、僕としては「え、今この時代に?」という驚きがあったんですよ。
というのも、本人確認の技術って、今すごく変わってきてますよね。オンラインでは「パスキー」と呼ばれる、パスワードに頼らない認証方式が急速に広まっていて、Apple自身がこれを推進している。2025年6月からは日本でもiPhoneのAppleウォレットにマイナンバーカードを搭載できるようになったそうです。技術的には、スマホをかざすだけで本人確認が完結する時代が来ているわけです。
ちなみに僕、その場でiPhoneを持っていて、Face IDで解除できて、購入したApple IDにログインしている状態だったんですよ。Apple IDで買った商品を、そのApple IDの持ち主が、Face IDで本人確認されたiPhoneを持って取りに来ている。これ以上の本人確認って何があるんですかね?
なのに、求められたのは運転免許証やマイナンバーカードという「プラスチックカードの目視確認」。世界一のテック企業の店舗で、この対応か、と。正直、「Appleさん大丈夫?」と思いました。

これって日本の文化の話かもしれない
これって、日本の文化的な問題なのかもしれません。ホフステードの文化次元で言うと、日本は「不確実性の回避」が高い。決められたルール通りにオペレーションを回すことを重視する傾向がある。Apple Storeって表面的にはフレンドリーでカジュアルな雰囲気なんだけど、その裏では「身分証明書の原本確認」というルールが厳格に運用されていて、臨機応変な対応はしない。よくある日本的な硬直性が出ちゃってるのかな、と。
そういう意味で、Appleって大企業病になってきてるんじゃないか、という気もしました。AI開発でも遅れていると言われているし、iPhoneもiPhone 8くらいから中身そんなに変わってない気がする。2000年代前半に日本企業がガジェット界隈から脱落していったように、今度はAppleが脱落していくのかな、なんて思ったりして。
でも歩きながら考えたら、自分も相当日本人だった
ただ、帰り道を歩きながら考えてたら、もう一つ気づいたことがあって。
Appleってアメリカの会社ですよね。個人主義の文化。本来なら、「それはおかしいんじゃないですか?」と交渉すればよかったのかもしれない。「Face IDで開いたこのiPhoneで、購入したApple IDを確認できますよね?これで本人確認にならないですか?」と。
でも僕、言わなかったんですよ。「店員さんを困らせるのも悪いな」「すごく感じのいい人だし」「自分がもう一回免許証持って来ればいいか」と思って、遠慮して引き下がってしまった。
これ、めちゃくちゃ日本人っぽい行動ですよね。相互協調的というか、集団主義的というか。相手に配慮して、自分が折れる。
つまり、「ルール通りに運用する日本的な店」と、「遠慮して何も言わない日本的な客」が出会って、過渡期の不便がそのまま温存されてしまった、ということなのかもしれません。店側だけを批判しようと思ったけど、よく考えたら自分も同じ文化の産物だったな、と。

次は「こんなやり方ではどうでしょう」と言ってみよう
というわけで、今回の学びとしては、次に同じような場面に遭遇したら、ちょっと言ってみようかなと思っています。
もちろん、いきなりアメリカ人みたいに強く主張するのは僕の性格に合わないので、すごく日本人っぽく、遠慮がちに、配慮を示しながら。「あの、こんなやり方ではダメですかね……このiPhone、Face IDで開いてますし、購入したApple IDも確認できると思うんですけど……」みたいな感じで。
文化ちゃんぽんというか、日本的な配慮とアメリカ的な自己主張のハイブリッドですね。それで通るかどうかはわからないけど、少なくとも「言わずに帰ってモヤモヤする」よりはいいかなと。
というわけで、今日は初売りでのがっかり体験から、文化の話まで考えてみました。最初は「Appleさん、それはないでしょ」と思ったけど、結局、店も自分も「日本人だったね」という着地になりました。
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渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い