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大阪万博2025:行く価値とモヤっと感 – 歩きながら考える vol.33

2025.04.30 渡邉 寧
「歩きながら考える」

今日のテーマは「大阪万博2025」ついて。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題を平日(月~金)の毎朝ラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

こんにちは! 今日は駅までの移動時間を使って、最近の「大阪万博2025」の体験について話してみようと思います。先週、開幕から10日ほど経った平日に、朝9時から夜7時まで万博会場を歩き回ってきました。濃い一日だったんですけど、そこで感じたことをゆるくシェアしたいと思います。万博に行くか迷ってる人、行ったけどどう評価するか考え中の人に、ちょっとしたヒントになれば嬉しいです!

万博に関して賛否両論の議論

まず、万博についてSNSやニュースを見ていると、なんか分断が起きてますね。賛成派は「経済効果は2.7兆円試算」とポジティブなのに対し、反対派は「メタンガス問題や予算超過、ほんとにこれでいいの?」って突っ込んでいる。支持政党の違いまで絡んでいて、分断の度合いが結構深いな、と思います。

まだ始まって間もないと言うこともあり、メディアでの議論は、これまで経済効果や投資対効果、安全性設計などのマクロなレベルの議論が中心でした。一方で、これからは、万博に行った人の「どのパビリオンが良かったか」というような感想が増え、ミクロなレベルでの議論が増えていくと思います。

まず、この「マクロ」と「ミクロ」の2つの視点は分けて考えるべき、と思います。

マクロ視点に関しては、夢洲の開発や関西経済の活性化、万博後に予定されてる統合型リゾート(IR)の建設など。経済効果は約2.7兆円と試算されてるけど、入場者数の着地や建設費用の見込みのブレなど、政策の良し悪し、専門家がしっかりチェックする必要があると思います。メタンガス検出の懸念も報じられていて、換気やモニタリングで対応してるみたいだけど、気になりますね。こういうマクロな議論は公共政策の良し悪しを見る上できちんとしてほしい。

一方、ミクロ視点は、来場者が万博で何を体験して、何を得るのかという話。パビリオンのコンテンツや展示が、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」にどう応えてるか、効果的なのか、というような視点。マクロの評価がネガティブだとしても、ミクロの評価はポジティブということはあり得るし、その逆もある。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というように、マクロの評価でミクロの評価を決めつけたり、逆に、ミクロの評価が良かったからと言ってマクロの評価も良しとするのはおかしいと思います。

シグネチャーパビリオンは良かった

そんなわけで、マクロな議論をSNSで見つつ、ミクロな感想を得たかったので、私は実費でチケット買って行ってみました。ミクロの評価は自分で行ってみないと出来ないですよね。で、ここから先は、私の個人的なミクロな感想。

まず、シグネチャーパビリオンは良かった。万博には各国パビリオン(セルビア、カンボジア、中国、フランス、ポルトガル、アラブ首長国連邦、チリ、バングラデシュに行った)と、クリエイターが手がけるシグネチャーパビリオンがあるんだけど、個人的にはシグネチャーパビリオンの方が記憶に残りました。

一つ目は、生物学者の福岡伸一さんがプロデュースした「動的平衡」のパビリオン。生命って、環境と分子や原子を交換しながら、秩序を保つ「動的平衡」のプロセスで成り立ってるという話の展示でした。エントロピーが拡散する中で、生命はそれを逆転させるみたいな話。LEDライトやVRで、生命の進化やつながりが視覚化されてて、「おお、動的平衡ってこういうことか!」って、スッと内容が理解できました。

二つ目は、小山薫堂さんの「Earth Mart」。食を通じて持続可能な未来を考えるパビリオンで、食文化と先端技術がミックスされて展示されてました。たとえば、世界の人がどんな食べ物をどれくらい食べているか、とか、未来の食品加工技術をイメージしたインスタレーションとか。食って毎日するけど、こういう視点で考えると、色々と再発見が。

各国パビリオンも悪くなかったけど、資金力の差がモロに出ているのがモヤモヤしました。大国は自国の偉大さやユニークさを押し出すけど、小国は自国の産業や日本との関係性を控えめに紹介する、みたいな。短い時間で国の魅力を伝えるのは、ちょっと難しそうだなって思いました。シグネチャーパビリオンみたいに、テーマを絞って先端技術で分かりやすく表現する方が、万博のテーマにはあっているように思いました。

グランドリングは今後も残る施設にしてほしい

もう一つ、多分、万博で最も記憶に残るだろうと思ったのが大屋根リング(グランドリング)。建築家の藤本壮介さんがデザインした、木造で芝生や植物が融合した巨大なリング。リングの上や周辺を歩いてると、木の香りと緑に包まれて、風が抜けて気持ち良かったですね。「壁」のような閉塞感もなく、日本的かつ現代的な建築を体感してる気分になりましたね。センスいいな、と素直に思いました。

このリング、万博の半年だけで使って、解体されちゃうとのことですが、ちょっと勿体ないなーと思いますね。木材の一部は再利用される計画らしいけど、こんな壮大なものを作って半年で壊すのはもったいない。レガシーとして今後も残すのは、コストやメンテナンスを考えると難しいんですかね。神社仏閣のような、木造の長期建築物として残ってくれると良いなーと思います。

夢洲の未来とマクロな疑問

マクロ視点に戻ると、万博の舞台・夢洲がどうなるのかは気になりますね。夢洲は大阪湾の人工島で、万博やIRで関西の経済を底上げする狙いがあるそうですが、果たして今回の万博やIRが効果的なのかどうか。メタンガス問題は、安全対策が進んでるとはいえ、準備段階で結構議論になってましたね。建設費も当初の予想より膨らんだという見込み違いも気になります。

まとめ:万博で自分なりの経験を

というわけで、今日は大阪万博2025を歩きながら考えてみました。最後に、繰り返しになりますが、時間とコストに余裕があれば、大阪万博は行った方が良いと思います。結局、コンテンツの良し悪しは、自分で体験しないとわからないから。行ってみて、「うーん、微妙だった」って思うかもしれないけど、それも自分だけの評価だから、行ってみて気付く価値じゃないかと思います。

そのうえで、そうした個人のミクロな評価と、マクロな評価は混ぜない。万博が個人的に面白かったからと言って、経済効果や安全性、コストの見込みの問題への評価がポジティブになるわけではありません。ここは冷静でありたいと思います。

最後まで読んでくれて、ありがとうございます!この記事が参考になったと思ったら、ぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです。 また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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