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外国人との職場をどう作る? 文化の違いを読み解く – 歩きながら考える vol.50

今日のテーマは「外国人との職場の作り方」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは! 今日も河原町あたりをぷらぷら散歩しながら、頭に浮かんだことをシェアしようと思います。さっきまでデータ分析してたんですけど、ちょっと疲れちゃって、気分転換に外に出てきました。で、今日のテーマは、5月22日の日経新聞で読んだ「外国人と共生する職場トラブル防ぐ4つのノウハウ」という記事。日本の職場で外国人労働者とどう働くか、めっちゃ大事な話ですよね。で、外国人との職場の作り方に関するポイントを、ホフステードの文化モデルで紐解いたら、少々思うところがありまして。歩きながら、その辺をゆるく話してみようと思います。
外国人労働者が増えてる日本、でも難しさも
まず、ちょっと背景から。日本、労働力不足が深刻じゃないですか。記事にも出てたけど、外国人労働者の重要度がどんどん上がってて、2008年は50万人くらいだったのが、今は200万人超え、将来的には300万人近くになりそうな勢い。この急増、めっちゃインパクトありますよね。でも、企業側は結構苦労してるところもあるみたいで。記事で紹介されていたアンケートに答えた受け入れ先企業のうち半数くらいの企業が、外国人労働者との間には「日本語の壁でコミュニケーションの難しさ」があり、2割くらいの企業が「文化や価値観の違いで難しさ」があると答えているようでした。
で、記事では、職場トラブルを防ぐ4つのコツが紹介されてたんですが、これ読んでて、「これはホフステードの文化次元とのひも付きが見えるな」と思ったんです。オランダの社会心理学者/経営学者のヘールト・ホフステードは、文化の違いを「権力格差」や「集団主義/個人主義」といった軸で分析しました。日本の職場で外国人と働くとき、このモデルを使うと、トラブルがどのような文化的背景から起きるのか、どう対応すればいいのか、めっちゃクリアになることがあります。記事を読んでいて特に面白かったポイントをいくつかピックアップして話してみます。
「わかりました」が危険信号? 権力格差の罠
まず、記事の1つ目のポイント。外国人労働者は「『わかりました』って言うけど、実はわかってない」問題。これ、めっちゃ興味深いですよね。例えば、外国人の従業員に仕事の締め切りや、仕事のやり方を説明して、「わかりました」って返事が返ってくる。でも、実際は全然理解してなくて、後でミスが発覚、みたいな。これ、ホフステードで言う「権力格差」が高い文化、アジアやアフリカ、中南米でよく報告されるパターンです。
権力格差が高い文化だと、部下が上司に「わからない」って言うの、心理的にめっちゃハードル高い。評価されるのが怖いし、集団主義だから、暗黙のコミュニケーションが当たり前で、「できない」ってはっきり言うのは勇気がいる。だから、わかってなくても「わかりました」と言う。一方、アメリカ等の権力格差が低い個人主義の文化だと、明白なコミュニケーションを行うことが当たり前なので、わからないのであれば、「私はそのやり方は知りません。どうやるんですか?」って質問することは本人の責任。この違い、多文化の職場でよく見ます。
で、大事なのは、権力格差が高い集団主義の文化だと、部下がわかってるのか、本当はわかってないのかを見極めるのも上司の責任である傾向があることですね。部下は「察してよ」って期待してる。だから、上司が「この間、わかったって言ったじゃん!」って怒っても、部下は心の中で「いや、それを見極めるのがお前の仕事だろ」って思ってるかもしれません。
「できるだけ早く」の落とし穴
次、2つ目のコツ、「『できるだけ』みたいな曖昧な言い方はやめよう」という話。これも、日本の職場あるあるですよね。「できるだけ早くやっておいて」って上司が言ったら、「できるだけ」っていつのこと?と部下に思われる、という話。日本の文化、ホフステードで言うと集団主義のスコアが46くらいで、ちょっと集団主義寄り。更に、権力格差は54でそこまで権力格差が高い文化というわけでもない。そのため、上司が明確な指示出しをして、部下の仕事ぶりを細かくチェックするというよりは、「いい感じでやっといて」で物事が進むことがある。一方で、こういう「内集団」だけで通用する「察してよ」系のコミュニケーションは、新しく来て必ずしも内集団メンバーになりきれていない外国籍メンバーには超難しいコミュニケーションになっているのかもしれません。
個人主義の文化、例えばアメリカやヨーロッパから来た人には、そもそも「察する」という文化的傾向が薄いから、明確な役割定義を求める傾向が高くなる。で、集団主義の文化、アジアとかから来た人でも、日本の独特な「内集団」のコンテキストは読めない。だから、「できるだけ早く」って言われても、「それ、いつまでの話?」となる。このズレ、めっちゃリアルだなって思います。
一括りにしないで! 外国の文化と言っても色々ある
ここまで来て思ったのですが、記事で想定してる外国人労働者って、たぶんアジア、中南米、アフリカとか、権力格差が高くて集団主義の文化から来た人の話なんだと思うんです。人数が多いのだと思います。でも、もしアメリカやヨーロッパから来た人だったら? 文化が全然違うから、対応のポイントも変わる可能性が高い。
ホフステードのモデルで考えると、例えばアメリカは権力格差は低く、個人主義。そのため、1つ目のポイントで挙げられていた「わかりました」問題は、そもそも起こりにくい。この違い、ちゃんと見ないと、せっかくの良いアドバイスが的外れになってしまうかもしれません。日本の職場がもっとグローバルになるなら、こういう「文化の解像度」を上げていくの、めっちゃ大事だなと思います。
まとめ:文化を学んで、職場を変える
というわけで、今日は日経の記事から、外国人労働者との職場トラブルをホフステードのモデルで考えてみました。権力格差や集団主義のレンズで見ると、なんで「わかりました」問題が起きるのか、なんで「できるだけ」が通じないのか、その文化的な背景がちょっとわかるのではないかと思います。そして、外国人労働者を一括りにせず、文化ごとの違いをちゃんと見ていくのが、これからの日本の課題だと思います。
この話が面白いと思ったらぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです。もし「うちの職場でも外国人いる!どうすれば?」とか「文化の違い、もっと知りたい!」って思ったら、ぜひホフステード・インサイツ・ジャパンにご相談を。最後まで読んでくれてありがとうございました!また、次の「歩きながら考える」シリーズでお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い