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韓国の分断と若者の憧れ:権力の物語を考える – 歩きながら考える vol.53

今日のテーマは、韓国でも目を引くようになった社会の分断と権力格差の関係について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日も通勤時間を使って、ちょっと考えごとをシェアしようと思います。もうすぐオフィスに着くんだけど、その前に、最近読んだ記事がめっちゃ気になって。2025年5月16日の毎日新聞の記事で、韓国の若者が保守派に熱狂してる話が出てたんです。特に20代・30代の男性が、ユン・ソンニョル前大統領の強硬な行動に憧れを感じてしまうらしい。なんでこんなことに? そこから、YouTuberや権力、日本の未来まで、歩きながら考えてみます。
韓国の分断が深刻そう
まず、韓国の状況から。ユン・ソンニョル前大統領が2024年12月に戒厳令を出して、国が大混乱したことが記憶に新しいですね。結局、議会で解除されて、2025年4月にユン前大統領は罷免されました。今、大統領選に向けて韓国は厳しい競い合いが進んでいるようです。政党間の対立はもちろんですが、世代やジェンダーでも意見がかなり異なるようで、これが深刻な社会分断に繋がりうるのかどうか、隣国のことだけに関心が高まります。
毎日新聞の記事で、ソウル教育大学のクォン・ジョンミン教授がインタビューされてて、そこで出てた話が興味深かったんですよね。教授の高校生の息子が、右派系のYouTuberを熱心に観ていて、「周りの友達はみんなユン支持だよ」って言っていたとのこと。どうも、韓国で、若い男性が保守派に惹かれる背景には複雑な理由がありそうです。教授は「権力への憧れ」が鍵だって言うんですけど、これが非常に興味深い。
YouTuberが若者の心を掴む
で、なんで若者がそんな風になるのか。記事によると、右派系のYouTuberがめっちゃ影響しているとのこと。ユン前大統領の戒厳令に関しても「強いリーダー」の象徴として扱うようで、若者に「今回の事件の背景には、実はこんなことがあった!」というストーリーを語っているのだそうです。自分もYouTube見るから分かるけど、「メディアは報道していないけど、実は背景にはこんなことがある!」という言説は、魅力的に見えますよね。 クォン・ジョンミン教授は、YouTuberが陰謀論とか大胆な話で若者を引きつけて、権力者の行動は「力強い指導者」として観られていると分析してました。
これ、日本でも似たようなケースを見るから、全く人ごとじゃないですよね。新聞やテレビなどのメディア不信と合わさって、陰謀論が伝播しやすい社会環境になっていると思います。
権力への憧れ、なんで生まれる?
クォン教授の話で一番興味深いと思ったのが、若い男性が「権力に憧れる」という話。教授によると、ユン前大統領の戒厳令みたいな強硬な行動が、若者には「パワーの象徴」として映るという話。なんか、強いリーダーが重大な行動を決断する姿が、ロマンティックに見えちゃうらしい。
オランダの経営学者/社会心理学者のヘールト・ホフステードは、国の文化を6つの次元で指標として数値化をする研究をしましたが、このホフステード指標だと、韓国の「権力格差」は日本より少しだけ高い(60 vs. 54)。つまり、人々は社会の中で権力を持つ人と持たない人が分かれるのは社会運営として自然なことだと感じる。そして、ピラミッド状の社会階層を上に上がることによって、人は力を手に入れる事ができると感じる。この文化的素地があると、強いリーダーに憧れる若者が増えるというのは自然なことなのかもしれません。
日本はどうなる? フラットな社会を
この話、日本のことも考えさせられるんです。権力格差の高い文化だと、組織や社会の階層を上がれば上がるほど、そのポジションに座れる人の数は少なくなっていく。ピラミッド状の組織を考えればわかると思いますが、権力者の「座席数」は限られる。
このような状況だと、少ない権力者の「座席」は、その希少性故に魅力的に映るのかもしれない。
その人々の憧れを上手く使って、社会を扇動するような人が出てくると、これはちょっと怖いな、と思います。
日本でも若者が極端なリーダーに惹かれる日が来るかもしれないな、とほんとに思います。ネットで過激な意見がバズってるのを見ると、「あ、これヤバいかも」って思うこと、ないですか? ホフステード指標を見ると、日本も権力格差はそこまで低い訳ではないし、韓国同様にちょっと「集団主義」傾向があるから、同じようなリスクはあると思います。
まとめ:若者の心を考える
というわけで、今日は韓国の若者が権力に惹かれる話から、YouTuberや社会の構造まで、歩きながら考えてみました。もし、この話が面白いと思ったら、ぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです。 「日本の若者はどんなリーダーに惹かれると思う?」とか、「YouTuberの影響、感じたことある?」みたいな意見も教えてもらえると嬉しいです。
オフィス着いたんで、今日はこの辺で。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い