BLOGブログ
マークシートの入試ってAIでアップデート出来ないの? – 歩きながら考える vol.6

このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。
歩きながら考えるvol.6マークシートの入試ってAIでアップデート出来ないの?
こんにちは。今日は「入試とAI」というテーマで、歩きながら考えたことをお話ししようと思います。大学入試の合格発表をしているみたいで、ニュースで報道していたのを聞いて、「そういや、AIが一般化した後も大学入試って今のままなのか?」と思ったんですよね。ちょっと歩きながら考えてみたいと思います。
マークシート方式はいつまで有効か?
今の大学入試って、どういう形式なんでしょうか。今調べると、大学入学共通テストは今でもマークシート形式なんですか? 僕が受験生だった頃も、大規模試験の場合はマークシートを使ってました。共通試験はマークシートだったし、学校によっては個別試験もマークシートでやってましたね。僕の世代だと一学年100万人以上いたから、全員が受けるわけじゃないにしても、かなりの人があの「黒丸を塗る」試験をやってたわけです。
で、このマークシート形式、効率的ではあるんですよ。受験者が多いと、機械でパパッと採点できるから合理的。
でも、よくよく考えると、この形式は変だと思うんです。アウトプットが「黒丸」って、現実社会で求められることはほぼ無い。

たとえば、大卒の人が多くつくデスクワークの仕事だと、アウトプットとして、書類を作ったり、プレゼンで人を説得したりするじゃないですか。でも入試だと、「4択から正しい丸を選ぶ」だけ。これって、アウトプットの形式が入試と現実社会でズレすぎだと思うんです。
更に言うと、マークシートって、社会全体の思考力や学びの効果を下げちゃってるんじゃないかとも思うんです。というのも、受験生にとってゴールは受験に受かることなわけだから、「正しい黒丸を選べるようになる」ことが大切で、その過程で無意識的に、記憶の整理も「4択用」に最適化されてしまうのではなかろうかと。現実の課題解決とは全然違うスキルが育っちゃってる感じがするんですよね。もちろん、すべてを入試のせいにするのはおかしな話ではありますが。
旧式テストの課題:現実とのギャップ
そう考えると、マークシートみたいな試験方式って、ちょっと学生に勿体ない学習時間を強いているんじゃないかと思うんです。学生時代に学んだことが、社会に出てから「使える形」に近づいていた方が絶対いいですよね。でも現状のテストって、果たしてその橋渡しができているのだろうか、と。
昔は仕方がない部分もあったと思うんです。受験者が多すぎて、一人ひとり面接とか成果物とか小論文で評価するなんてコストも労力も無理だったから。でも、その「しょうがない」がずっと続いてるのが課題なんじゃないかと思います。
AIで変革のチャンスが来た!
で、ここで登場するのが生成AIです。2025年の今、技術が進化して、入試を変えるチャンスが現実的に見えてきたのではないかと思います。
どういうことかというと、AIが「口頭試問の試験官」になれると思うんです。たとえば、受験者に質問して、答えを聞いて、さらに深掘りする質問を重ねて、それをテキスト化して評価する。これ、AIなら安価にできてしまう。もしくは、スクリーニング役として使って、AIが一次チェックした後に人間の試験官が最終確認する、みたいなハイブリッドもアリですよね。
これができると、入試が「話し言葉」や「長文の文章」のアウトプットに変わる可能性があるのではないかと思うのです。そうなれば、学生の学び方も「正しい黒丸探し」じゃなくて、「どう考えて、どう表現するか」にシフトする。現実社会に近いスキルが育つし、学習と実務の連続性がグッと高まる気がします。
AIの強み:個別化を安価に
学習におけるAIの1番革新的なところって、やっぱり個別対応が安価にできることだと思うんですよね。
たとえば、一人ひとりにカスタマイズした質問を投げて、その場で反応を見て、次の質問を変える。これを手動でやろうとしたら膨大なコストだけど、AIなら極めて安価にできてしまう。
入試って多くの人が受けるものだから、ここが変わると、社会全体の「何を学ぶか」「どう考えるか」「どう表現するか」が変わる可能性があると思うのです。教育の根っこが変わるって、めっちゃ凄いことだと思いません?
現代は個人主義の時代で、その傾向は年々強くなっていると感じます。個人主義文化の元では、個々人が何を考え何を発信するかが重要になるわけだから、その力を養う為にうまくAIを使ってほしいと思います。

まとめ:旧式から未来へ
とはいえ、一回固まった制度って簡単には変えられないですよね。人員の配置や実施のプロセスが、全て確立したテスト形式に合わせて作りこまれているわけだから。でも、技術的にはもう「AIで入試改革」の土台は出来ていると思うのです。慎重に考えないといけないことが多々有るとは言え、あとは、そちらの方向に舵を切るのか切らないのかという判断をするタイミングがかなり近い将来に訪れる気がします。
というわけで、今日は「入試改革のすすめ」と題して、マークシート問題とAIの可能性を話してみました。最後まで読んでくれてありがとうございます!
もし「AI入試、こうしたらもっと面白そう!」とかアイデアがあったら、ぜひこの記事をSNSでシェアしてコメントで教えて下さい。僕もまた歩きながら考えて、次につなげたいと思います。ではまた!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い