BLOGブログ
もう作業は全部AIがやる時代。人間は何をすればいいの? – 歩きながら考える vol.66

今日は、AIがほんとにすべての作業をするようになってきた状況を踏まえ、人間の仕事の今後を考えます。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)毎日お届けしています。
こんにちは。今日はお昼ご飯を作りながら、最近のAIの進化と仕事の変化について考えたことを話してみようと思います。各LLMが高速でアップデートを繰り返す中で、今年前半と比べてさらに明確に、何の仕事がなくなり、何の仕事が残るのかということがはっきりしてきました。今日はその話をゆるく展開してみたいと思います。
AIの進化でほぼ全ての作業がAIに代替された
まず前提として、僕の仕事の7割位は文章を作ることです。提案書を書いたり、プレゼンテーション資料を作ったり、契約書を作成したり、研究レポートや論文を書いたり。情報を集めて、分析して、文章としてアウトプットする。そういう仕事が全体の7割位を占めています。
今年の初めくらいまでは、AIがアウトプットを作り切ることは出来なかった。確かに下書きは作ることは出来る。でも、結局全体的に手直しが必要で、最終的には自分で書き直してたんです。ChatGPTもClaudeも、確かに便利だけど、「これじゃちょっとなあ」って感じることが多くて。情報を集めてもらったり、文章の下書きを作ってもらうところまではいいんだけど、そこから先の修正や改善は、結局自分でかなり手を動かす必要があった。
ところが、最近のLLMの進化で状況が一変しました。フィードバックに対する修正の精度が格段に上がったんです。下書きに対して、「ここをこう直して」って言うと、本当にその通りに、しかも文脈を理解した上で修正してくる。最終的に多少の手直しは必要だけど、その割合が本当に少なくなった。
その結果、今の僕の仕事は「①意思決定をして、②指示出しをして、③アウトプットを評価して、④フィードバックをする」という、この4つにほぼ集約されてきました。情報収集も、分析も、文章作成も、作業はAIがやってくれる。
組織ヒエラルキーの上層部の仕事が「民主化」される
で、これって誰の仕事かっていうと、昔のコンサルティング業界で言えば「シニアマネージャー」とか「パートナー」レベルの仕事なんだと思います。プロジェクト全体の方向性を決めて、チームに指示を出して、成果物をレビューして、フィードバックする。作業を行うのは、昔は人間のメンバーで、今はAIがメンバーのように作業を進めてくれる。
面白いのは、組織のヒエラルキーの上部にいた人たちしかできなかった仕事が、AIによって「民主化」されているってことです。かつては長年の経験と、多くの部下を持つことで初めて可能だった「意思決定とマネジメント」という仕事が、今ではAIを使うことで、より多くの人ができるようになった。
ただし、ここで重要なのは、こういう仕事が得意かどうかは、一人一人の個人の経験やスキル、能力に極めて大きく左右されるということ。意思決定の質、指示の的確さ、フィードバックの鋭さ。これらは人によって大きく差が出る。つまり、AIによって仕事が「民主化」された結果、逆に個人の能力差がより鮮明に現れるようになった。組織の中での役職や年次ではなく、個人の実力がダイレクトに成果に反映される。そういう意味で、個人主義的な傾向が強まっているのかもしれません。
人間がハンドルを握っている限り
今は「意思決定、指示出し、評価、フィードバック」が人間の仕事として残っていますが、これらすらAIができるようになる可能性は十分にあります。実際、AIの判断能力は日々向上していて、単なるツールを超えて、ある種の「判断」をする存在になりつつある。
今はまだAIはツールなんです。なぜなら、意思決定、指示出し、評価、フィードバックという仕事が人間に残っていて、この仕事が残っている限りは人間が手綱を握っている、ハンドルを握っているという状況だからです。AIがどんなに優秀になっても、最終的な判断と責任は人間が持っている。
ただし、この仕事をAIに引き渡す瞬間が近い未来に訪れるのかもしれません。この判断は、人間というより人類にとって非常に大きなものになると思います。この仕事をAIに引き渡すのであれば、人間社会がかなり大きく変わる。今までの先祖が積み重ね上げてきたものが根本的に変わるということを意味しています。
それがいい未来なのか、そうでないのかは、今は判断できません。だからこそ、日々AIの変化を見ながら、どう反応していくかを考えていきたいと思っています。
ラーメンを作りながら考える未来
というわけで、今日はラーメンを作りながら、AIがもたらす仕事の変化について考えてみました。作業レベルの仕事はほぼAIに移行し、人間に残っているのはシニアマネージャーレベルの仕事。でも、その仕事を人間が握り続けるのか、AIに渡すのか。それは、これからの人類の大きな選択になるでしょう。
この変化の中で、みなさんはどう感じていますか?「意思決定」という最後の砦を、人間は守るべきだと思いますか?それとも、いずれはAIに委ねる未来が来ると思いますか?
もしこの記事を読んで何か感じることがあったら、ぜひSNSでシェアしてくれると嬉しいです。皆さんの考えもコメントで教えてください。この大きな変化の時代を、みんなで考えながら進んでいけたらいいなと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。ラーメンも美味しくできたので、今日はこの辺で。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い