The Culture Factor

お問い合わせ

メールマガジン
登録

BLOGブログ

AI採用が教育を変える?民間企業から始まる改革の話 – 歩きながら考える vol.7

2025.03.18 渡邉 寧
「歩きながら考える」vol.7

このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

歩きながら考えるvol.7AI採用が教育を変える?民間企業から始まる改革の話

こんにちは。今日も帰り道を歩きながら、頭に浮かんだことをゆるく話してみようと思います。テーマは昨日話した「AIで入試が変わる」の続きなのですが、今回は「民間企業がAIを使って採用を変えたら、教育まで変わるのではないか?」という観点で話してみたいと思います。

マークシートと社会のズレにモヤモヤ

前回も話しましたが、マークシート形式の入試は、大量の受験生の合否を短時間で判断するという効率性の観点では良いと思います。ただ、なにせ「アウトプットが4択で黒丸を付ける」ことなので、社会で求められるスキルとはズレがあります。

で、前回、AIを使うと安価に入試の個別化が出来るので、もはやマークシートでなくても良いのでは?という話をしました。

とは言え、実際にはそう簡単には変えられないものなのだろうとも思うのです。テストセンターとか採点システムとか、いろんなものが今の制度にガッチリ紐づいてるから、いきなり「はい、マークシートやめます!」とはいかないのだろうとは思います。

まあ、入試方法を変えることによる明確なメリットを感じる人は、それほど多くは無いだろうとも思いますね。受験生にとっては、入試に受かることが問題で、入試の形式にはそれほど興味が無いかもしれません。大人にとっても、入試方式が変わったからと言って、少なくとも短期的には経済が良くなるわけでもないし、変えることの定量的なメリットが明確ではないので、大きなインセンティブは感じにくいでしょう。

じゃあこのままかっていうと、それもなんか勿体無い気がしますね。

マークシートイメージ

民間企業が先に動き出す予感

で、ふと思ったんですけど、AIを使った試験改革って公共教育からじゃなくて、民間企業から始まるんじゃないかと思うのです。たとえば、SPIとか入社試験の1次選考ってありますよね。基本的な能力でスクリーニングをかける目的では、あの手の試験も有効なこともあるのだろうとは思います。でも、それだけで人材の判断が出来ないから、面接やエントリーシートの評価などを行っているわけで、このプロセスをもっと効果的かつ効率的に行うインセンティブは企業にとっては大きいのではないかと思うのです。

インセンティブがあれば、即動けるのが民間企業の良いところ。採用プロセスを変えるのは割と自由にできるわけで、民間は割と柔軟ですよね。

AI面接がゲームチェンジャーに

実際、もう動き出してる例があって。例えば、プログラマーの採用で、一次面接をAIがやってる企業が出てきてますね。最近は、一般的な採用面接でもAIとの面談を使う事例もあるようです。元々は「採用に関わる社員の時間を節約する」というコスト削減が目的だったのかもしれませんが、やっていくうちに「AIの方が面接クオリティ高いのでは」と考え始めている企業もあるとのこと。

AIとの1対1の対話だと、論理的な受け答えとか、創造的な受け答えとか、面接だからこそ測れる部分が見えますね。AIが「君、学生時代のこの活動だけど、なんでこうしたの?」って聞いてきて、その応答に即して「なるほど、だったらこういう場合はどうですか?」みたいなことを聞いてくる(笑)。そんな面接が普通になる日も来るのだろうと思います。

AI面接イメージ

教育にも波が来るかも

で、ここからがポイントで。企業がAI面接を当たり前にしちゃうと、こう思う人が出てくるんじゃないかと思うんです。「採用試験でAIとガッツリ対話してるのに、なんで、未だに大学入試はマークシート形式なの?」って。確かに、学校は企業で働く為に通う教育機関ではないものの、学生が直面する就職活動での採用面談の方法が変われば、学校側も何かしらの形で影響を受けるだろうと思います。

たとえば、AIが「君の強みは?」みたいに、個人としての長所や強み、ユニークな考えを根ほり葉ほり聞くようになるのであれば、それは極めて個人主義的な社会での力量を試すことになりそうです。そういう力が求められるようになったら、入試でも「4択から正解を選ぶ練習」じゃなくて「自分の意見を言う練習」が増える方が良いかもしれない。民間から始まった変化が、教育に逆流してくるイメージです。

社会全体が変わるチャンス

これがもっと進むと、単なる「効率よく選別する試験」から脱却して、入試が、本当の意味で個人としての成長を促すきっかけとなり、それがゆくゆくは市民教育とか人格形成に役立つ学びのプロセスに変わる可能性もあるんじゃないかと思うのです。AIをうまく使えば、社会に出て役立つスキルとか、個人の成長をちゃんと伸ばせる仕組みができるかもしれない。

もちろんメリットだけじゃなくて、デメリットもあると思うんです。AIに偏りがあったら公平性が崩れるとか、技術にアクセスできない人が不利になるとか。でも、そういう課題を今のうちに考えておけば、社会にとって良い方向に持っていけるんじゃないかなって思うんです。

社会全体が変わるチャンスイメージ

民間企業の皆様、頑張って!

だから、私としてはこの流れを早く進められたらと思います。民間企業が「もうマークシートは時代遅れ」「AIで面接の効果が大きい」ってどんどん動いてくれたら、それが教育改革のきっかけになるかもしれない。歩きながら考えていて、「あ、民間企業の皆さんにちょっと頑張ってほしいな」という気持ちになりました(笑)。

もしこれがうまくいけば、未来の学生はマークシート塗る時間より、自分の考えを練って表現する時間が増えるかもしれない。なんか、そういう社会の方が楽しそうだなって思います。

まとめ:歩きながら未来を想像

というわけで、今日は「AI採用が教育を変えるかも」という話を歩きながら考えてみました。民間企業が先に動いて、それが教育や社会に波及するっていう見通し、どう思いますか?

もし「うちの会社、AI面接やってるよ!」とか「教育もこう変えたら面白いかも」っていう意見があったら、ぜひ記事をSNSでシェアしてコメントで教えてください。皆さんのアイデアも聞いてみたいです!

最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

メールマガジン登録