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このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。
歩きながら考えるvol.14AIで仕事は無くなるか?いや、むしろアウトプットが爆発的に増える?
こんにちは。今日は歩きながら、「AIで仕事は無くなるか」というテーマで考えてみたいと思います。最近、AIの進化がすごくて、特にChatGPTやClaudeのような、去年から使っていたサービスに加えて、新しい優れたサービスが次々と出てきて追いかけるのが大変です。
優れたサービスが次々に出て、「こんなことも出来るの!?」という驚きが続けば続くほど現実味を帯びてくるのが「AIが仕事を奪う」という話。「確かに無くなる仕事は多そうだなあ」と思いつつ、僕は、局所的には逆の動きも発生しそうだと思ってるんです。今回はそのあたりの話を中心にゆるく話してみようと思います。
AIが仕事を奪うは本当か?
AIと仕事の話って、ちょっと不安なイメージありますよね。「人間の仕事が全部自動化されて、無職になる人が増える」みたいな。実際、2013年の段階で、フライとオズボーンという研究者が、アメリカの702の職業のうち47%が自動化されるリスクが高いと予測していています。

一方で、AIを積極的に使って仕事や研究をしてみると、仕事が「無くなる」というよりは、人間のアイデアとAIが組み合わさることで「アウトプットが爆発的に増える」点に注目した方が良く、その結果として、領域によっては仕事は減らず、むしろ増えることになるのではないかと思っています。
結果、全体としては仕事は減るかもしれないけど、部分を見ると逆に仕事が増えるという点も見逃せないのではないかと思います。
具体例:研究やライティングでのAI活用でアウトプット爆増
たとえば、僕の仕事で言うと、ライティングという領域が仕事の一つなんですけど、重要なのは僕自身の「なんでこうなんだろう?」という興味や疑問なんです。この興味や疑問を起点に、AIを使うとどうなるか?それはもう、アウトプットが爆発的に増えるんですよ。
昔、何かまとまった文章を書くときは、自分の疑問について文献探しからデータ整理、構成作りまで全部自分でやってて、1本仕上げるのに何日もかかってました。でも、今は自分の抱いた疑問をAIに投げると、「こういう調査領域が関連していそうですよ」とか「こういうキーワードで情報を探すといいかもしれません」みたいな手がかりを教えてくれる。それを元に、例えば、僕が実際に文献データベースで探して、本当に重要な論文をすばやく見つけられるんです。そして、その論文を読んでいくうちに「じゃあ、このパターンはどうなんだろう?」って次の疑問が湧いてきて、またAIに「こんな疑問が出てきたんだけど」と投げる…
この循環が超スピーディーになるから、以前なら週に1本だった執筆が、今なら3~5本以上書けちゃうんですよ。アウトプットが3~5倍に爆増するんです!
研究論文でも同じで、「この研究テーマは重要だと思う」という核の部分があるならば、AIと対話しながら先行研究を探し、実験や調査の形式の形を作っていくことで、3ヶ月に1本くらいは下手したら論文投稿出来るのではなかろうか、という気さえしてきます。
アウトプット爆増時代の人間の役割
そして、ここが「仕事が減るのではなくて逆に増えるかもしれない」と思うポイントなのですが、アウトプット化のスピードが上がると、ワーク・エンゲイジメントが上がるわけなのです。
つまり、アウトプットするのが楽しくなってしまい、「もうちょっと頑張ってみようかな」と感じるようになる。結果として、働く時間が長くなる。
結局、アウトプットを爆発的に増やすための起点となる好奇心や問題設定が有るか無いかによって、AIが仕事を減らすか増やすかは変わってくるということなのかもしれません。AIは僕たちの「なぜ?」「どうして?」という疑問を探るための手がかりを提供してくれ、それが、高いワーク・エンゲイジメントに繋がる場合は仕事は増える。

一方、そういう仕事の仕方ではなく、決められた事務作業を決まったようにやることが求められるような仕事はAIによって代替される可能性が高くなる。
日本の場合は仕事は減る?増える?
世の中全体として、後者のような仕事をしている人の方が多いのであれば、確かに雇用は減りそうです。一方で、本当にそうなのかな、という気もしています。なぜなら、良くも悪くも、日本の雇用形態はジョブ型ではなくメンバーシップ型であることが多いからです。
ジョブ型の雇用では、人は、明確に仕事内容が定義されたポジションに応募して、採用されたら、もともと定義されていた仕事をきちんとこなし、もともと定義されていた対価を受け取ります。一方で、メンバーシップ型の雇用では、「きみ、良さそうだからうちで働きなよ」というように、なんの仕事をするかはさておき、ポテンシャルや人物重視で採用をし、仕事内容は組織内で臨機応変に変化します。
確かに、ジョブ型の雇用制度においては、AIによって必要なくなるポジションが出るのはわかるのですが、メンバーシップ型の場合は、AIが入ってくると臨機応変に仕事が変化する余地が大きい可能性もあるな、と思うのです。

未来への挑戦:加速してみなければわからない
マッキンゼーによる2017年と2024年のレポート内容に基づくと、AIによる仕事の変化は国による差があり、中国では12%、アメリカやドイツでは33%、日本は影響が大きく50%の人が新しいスキルを身に着けて新しい仕事に移る必要があると指摘されています。それがどのような形式で現実化するのか。転職をする必要があるのか、それとも組織の変革により新しい仕事が創出されるのか。実際に社会を進めてみないとわかりません。
ジョブ型の雇用制度の元では、AIを使って自分のポジションが閉鎖されてしまうのは不安なことなのかもしれません。一方、メンバーシップ型の雇用制度の元では、AIを目一杯使って、自分の仕事が減ったとしたら、生まれた余力で新しい仕事を作るということが、もしかしたら自然な流れになるのかもと思います。
つまり、僕たちにできるのは、極限まで有効にAIを使ってみて、その結果何が起きるのかを観察し、結果に対して対処することだと思うんです。
まとめ:まずは自分のアウトプットを増やしてみよう
というわけで、今日は「AIで仕事は無くなるか」を歩きながら考えてみました。僕の考えでは、AIによってアウトプットが爆発的に増えるのは間違いないと思います。それが良い結果につながるかどうかは正直わかりません。でも、悲観したり恐れたりするより、まずは自分のアウトプットを爆増させるようにAIを使ってみる。そして、そこから何が起きるか観察してみる。そんなアプローチが現実的なんじゃないかと思います。
みなさんはどう思いますか?AIが仕事を奪う派ですか? むしろ仕事が増える派ですか? それとも別の視点がありますか? 面白い視点だと思ったら、ぜひ、記事をSNSでシェアして、コメントで教えてください。いろんな意見聞けたら嬉しいです! 最後まで読んで頂きありがとうございました。また次回の「歩きながら考える」でお会いしましょう!

渡邉 寧
博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター
慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い