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ヘールト・ホフステード先生のご逝去を悼む

2020.02.19 宮森 千嘉子
(多様性という言葉が使われる1980年前最初の著作で先生が書いていた言葉。)

 

ホフステード先生が2月12日に天に召されました。ご家族に囲まれ、平和のうちに旅立たれたと伺いました。でも私の心は哀しみに満ちています。初めてお会いしたときから、あれほどの業績を残された方なのに、常に謙虚で学び続け、人との対話を大切にされオーセンティックな優しさを持ち、ウィットのあるユーモアにあふれたお人柄に魅了されました。

国の文化の違いを次元モデルで数値化する手法は当初物議を醸し出すもので、先生の最初の著作Culture’s Consequences は様々な編集者から16回拒否された後、1980年にようやく出版されました。
先生のお仕事は、マルクスやフロイトに次いでもっとも引用数の多い、社会科学での国際的スタンダードとなりました。

先生は文化人類学から社会学、経済学から政治学まで、鳥瞰的な視点であらゆる事象を捉え、関連付けて分析する知の巨人でした。元々は工科大学出身のエンジニアで、工場の現場で働くうちに技術プロセスの背後には社会と人間の仕組みがあることに気づき、行動社会科学の博士号を最優秀成績者として取得したのち、IBMに入社。人事リサーチ部門のヘッドとして従業員満足度調査を担当。スプレッドシートも統計ソフトウェアも存在しない時代に、116000人分のデータを分析し、1番大きな違いがあるのは国と国の差であることに気づき、そこから先生の文化とのジャーニーが始りました。先生は全ては「セレンディピティだったんだよ」と仰っていました。11 の名誉博士号と、オランダ最古で最も栄誉ある民間人の勲章Order of the Netherlands Lion, を授与されています。

先生が直接、ご自分で序文を書かれたのは、私と宮林さんの共著が最後になります。拙著のために質問に丁寧に答えてくださり、特別の対話にも応じてくださいました。なんと恵まれた日々だったのでしょう。共著者の宮林さんは訃報に接し「先生はただただ、異なる価値観を持ったもの同士が理解し合えるために何ができるかを真剣に考え続けることの、その忍耐、方法、そしてその素晴らしさを伝えてくれた」と伝えてくださいました。

先生はお会いするたびに、自分の研究を、人々が相互理解を深めより良い世界を創るために使ってほしいとおっしゃっていました。そのスピリットと心を少しでも受け継ぎ、橋をかけていくことを続けたいと、限られた力しかありませんが、心から思います。

宮森千嘉子


WRITER

宮森 千嘉子

Hofstede Insights Japan
ファウンダー
取締役
マスターファシリテーター

サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。英国、スペインを経て、現在米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」(ファーストプレス)がある。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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