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MILAN2018 Conference Report
前編
ヘルシンキに本部を構えるホフステード・インサイツ・グループ(HIG)では年に1度、世界各地で活躍するアソシエート・パートナー(AP)達が集合する機会があります。今年も10月初頭にミラノにて開催されましたが、会の模様を、HIJを代表して参加した間瀬と廣崎が2回に分けてお伝えします。
ホフステード・インサイツの仲間がミラノに大集合
初日からの2日間は現地の組織人事コンサル・ブティックMIDAのオフィスをお借りしてグループ内の情報交換と勉強会。日頃はバーチャル会議で画面越しにやりとりをしている仲間達とリアルなハグをして再会を喜び合い、エスプレッソを片手に席に着いたら、話題は早速「国境を越えたビジネス」について。ここのところ増加している多国籍企業でのプロジェクト事例について、各国のAPによる連携事例が紹介された後、Blended Learningの専門家による研修設計のワークショップがありました。
題材としてとりあげられたのは実際にプロジェクトとしてホフステード・インサイツ・グループが実施した「とある欧州国外務省の依頼による、在外公館での現地スタッフと赴任スタッフの相互理解改善を目的とした研修」。
このプログラムでは、eラーニングと集合研修、講義とワークショップ、コーチングといった手法を、赴任前と赴任後に夫々数回に分けて構成し、その中で赴任先の国民文化の多様性を紐解き、相互理解が進むようにデザインされていました。各種の手法にホフステード博士の国民文化研究の知見を織り込み、多文化環境における、より良いコミュニケーションやマネジメントが進むようにプログラム設計する様は、HIGならではで、そのアウトプットに参加した一同は盛り上がりました。
世界中から集まった仲間が異文化の見本になる
ところで、この会合では、扱う題材や学びの内容にも増して興味深いのが参加しているAPの多様性です。ホフステードモデルのエキスパートなだけに、敢えて「国民性全開」で発言したり振る舞ったりして笑い(と苦笑い?)をとるシーンも。
例えば、ベルギーのJean-Pierreが、最近の著書「Negotiate Like a Local」の背景にある思想について解説をしていると、ルクセンブルグのTatjanaが「それでその本の章立ては一体どうなっているのよ?」と突っ込んだり。ナイジェリアのOkayや私達日本人が「ふむふむ」と聞き入っているHQの新方針説明に対して、米国人のLiddyが真っ先に手を挙げて自分の意見を明確に述べたかと思うと、オランダのAletteが「どうして方針を決める過程で私達を巻き込んでくれないの」と絡んだり。
各文化圏毎に「典型的なローカル企業のエグゼキュティブ・グループ向けに異文化研修を紹介する」ロールプレイをしたときは、米国のLisaが理路整然としたエレベーターピッチで格好よくまとめたかと思うと、フランスのValerieは秘書に指示を出して上等なランチの予約をさせ、インドのDivyaはクライアントのトップに直接電話をかけてヒアリング。これ、米国・フランス・インドの典型的な文化の違いを表現しているんですが、それぞれ6次元の何の違いを表現しているのか、わかりますか?
日本からも発信
今回は試みとして我々日本勢もショート・セッションを1コマ担当しました。5次元目の「長期志向」を紹介する際に使えそうな日本の事例として、伊勢神宮の遷宮、トヨタ自動車の20年計画、松下電器の250年計画等を紹介。特に企業の事例については単に「時間的に長い」だけではなく「長期視野に立って世の中に貢献することを使命とする」ことを松下幸之助の哲学と言葉をお借りして伝えました。
参加した仲間達からは「徳を積む、という言葉を知っていても具体的なエピソードを思い浮かべることが難しかったので助かる」「長期と聞いて私達が思い浮かべるのは5年、せいぜい10年だが、そのような時間の話をしているのではない、ということを感じ取った」とのフィードバックがありました。
次回は廣崎から、3日目のオープンカンファレンスについて報告します。
間瀬 陽子
ファシリテーター
日本企業のシステム・エンジニア、米系ビジネスソフトウエア企業のマーケティング担当を経て戦略コンサルティングファームに参画。経営者の視点で企業経営に関わる醍醐味を求めて、通信、消費財、ユティリティ業界のプロジェクトに従事。同米系ファームで7年半に及ぶ人事マネジメントを経て、現職。コミュニティを構成する「人」と「協働」をライフ・テーマに掲げ、多様な取り組みをリードしている。国際基督教大学教養学部卒業、ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール経営学修士(MBA)、Kellogg Club of Japanディレクター、武蔵野大学大学院言語文化研究科非常勤講師、MBTI認定ユーザー