The Culture Factor

お問い合わせ

メールマガジン
登録

BLOGブログ

真帆のケンブリッジ大学留学日記 Vol.3 イギリスと日本の意外と似ているところ

2020.03.18 竹谷 真帆

真帆のケンブリッジ大学留学日記 Vol.3
イギリスと日本の意外と似ているところ

皆さんは見ず知らずの人と初めて会った時、まずどんな会話を交わしますか。とりあえず自己紹介からという人もいれば、今日この場所に来るまでどれくらいかかったか聞いてみる、など距離を近づけるための方法は様々だと思います。こんな時イギリスで鉄板の話題といえば天気に関してです。初対面の人とだけではなく、誰とでも使える非常に便利な話題となっています。それはなぜなのでしょうか。

私は最近、文化人類学者Kate Foxがイギリス人の文化や癖について観察したことを書いた“Watching the English” という本を読みました。実はこの本をイギリス人の友達に勧められて読んでみたのですが、なるほど!と納得する内容が詰まっていました。何故イギリス人がこれほどまでに天気の話が好きなのかということも。この本を読んでイギリス人の価値観や考え方について理解を深めることができたと思います。そしてイギリスと日本文化の似ている点にも気がつくことができたので、何点かご紹介したいと思います。

 

知らない人と話すのは気まずい

外国人といえば”よく話す”、”フレンドリー”などのイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、イギリス人は比較的他人との会話が苦手。ついつい気まずい雰囲気になってしまったり、話題に尽きてしまうのです。その短所をカバーするものがブリティッシュ・ユーモアだとFoxは言います。また、そんな時のお助けが天気の話題です。実際そこまで天気が良くなくても、最近は天気がいいね、と会話を交わせばポジティブな雰囲気に変えることができますし、天気の愚痴を一緒に言えば距離が近づいたように思えるのです。天気の話題は皆が天気のことについて考えているからではなく、自然と会話の中で使える道具なのです。

では逆に、最初に話してはいけないことは何なのか。実はこの本を読んでから、私も自分が犯してきた過ちに気づきました。それは名前から始めることです。天気の話などをしてある程度話が続いた後、去り際などにふと思いついたようにさりげなく「そう言えばお名前は?」と聞くのが自然な流れ。それを逆に会った時に聞いてしまうと、初っ端から相手に自分をさらけ出すようで何だか気まずい雰囲気になってしまうのです。実際私も両方試したところ、名前を聞いた時の返事が全然違いました。そしてそれを日本でも試してみると、日本人も会話の初めに名前を聞くとかしこまってしまうようで、カジュアルな雰囲気を壊してしまったような流れになってしまいました。イギリスも日本も急速に距離を縮めるよりかは、少しずつお互いのことを探るコミュニケーションが得意なようです。自然な流れで、まずはあまり個人的な話を持ち込まずに、距離を縮めることがコツなのかもしれません。

Negative Politenessとは

イギリスはとても礼儀正しい文化として知られています。そのため、直接的な表現を避け、争いのない円満な関係を保つように振舞います。現に私のフランス人やドイツ人の友達は、なかなか素直に反対意見を言わないイギリス文化に苛立っていました。そしてFoxは礼儀正しさをPositive PolitenessとNegative  Politenessに分類します。Positiveは相手を褒めちぎる文化、Negativeは自身を低くする文化。もうお気づきでしょうか、Negative Politenessの文化という面で日本とイギリスは非常に似ているのです。

例えばレストランで自分が頼んだ料理と違うものがきた時、「大変申し訳ないが、出された料理が頼んだものと違うのだが…」とイギリス人なら言うでしょう。日本人も同じような風に話すと思います。もちろんたまには怒鳴ったり、怒りをあらわにする人もいるのですが、比較的感情を出さずにまるで自分が悪いことをしたように話すことが、気づかないうちに癖になっているのです。道でぶつかった時も同じ。Foxは本を書くために自分からあえて人にぶつかって相手の反応を観察しました。観光客の外国人が「気をつけろ」「ちゃんと見ろ」と言う中、イギリス人は自分が悪くない場合も「すみません」と言う人が多かったそうです。

暗黙のルール

礼儀正しいイギリス人は日常生活において直接的に文句や批判を言うことが比較的苦手なようです。特に私のフランス人やアメリカ人の友達は何故イギリス人はこんなに物事をはっきり言わないのか、と愚痴を漏らすことがありました。しかし、直接的に文句や批判を言わないからこそ力を発揮するのが暗黙のルールです。暗黙のルールを破った者は周りから冷たい視線を浴びる羽目になります。例えば、Foxは本を書く材料を集めるためにチケット売り場の列に横入りした時の反応を観察しました。嫌そうな顔をされたり、自分の前に入られないように前との距離を詰めたり、隣の知人に文句を言ったり。ただ、直接的に注意してくる人はいなかったというのです。確かに日本でも敢えて注意をしてくれる人は少ないように思います。電車の中で音漏れしている人がいて周りが迷惑そうな顔をしても、わざわざ注意をする人はなかなかいません。

この暗黙のルールを知らないでイギリスに来た外国人にとって、ルールを説明してもらえないのはなかなか厄介なことです。私自身イギリスに住み始めてからは、自分の行いが文化的に合っているのか間違っているのか、理解に苦労しました。なんで直接的に教えてくれないんだろうと苛立つこともありましたが、日本人の行動に置き換えて考えると腑に落ちることも多くありました。

恥をかくのではないかと不安に思うより、自分から現地の人に聞いてみるといいですね。


竹谷 真帆

インターン

1998年東京生まれ。幼稚園年長から小学2年まで3年間アメリカに3年間住んだ後、小中高を日本で過ごす。高校2年から経団連の奨学金制度でドイツのRobert Bosch College UWCに2年間留学。2017年10月よりイギリスのケンブリッジ大学に進学。社会学と文化人類学を専攻している。

メールマガジン登録