パリで見つけた消費文化のトレンド(1)-未来の市場を読み解くカギは「女性性」?

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渡辺 寧(ホフステード・インサイツ・ジャパン株式会社)

 

 

■海外市場の消費者をどう理解するか?

雑誌「宣伝会議」11月号から、富士フィルム・フランスの山本氏とパリの消費文化を読み解く連載を書いています。パリに駐在中の日本人マーケターが見つけたパリのトレンドの紹介記事なんですが、私はそのトレンドを「文化」という切り口から解釈することを試みています。

ここでは、紙面の都合で詳しくは書けなかったこの「文化」の切り口から、未来の市場を紐解くヒントを書いていきたいと思います。

サステイナブルに生まれ変わるパリーエシカルなセレクトショップ「Merci」

 

海外市場でのマーケティングはかなり難しいですね。特に、日本等の1つの市場でマーケティングのトレーニングを受けてきた人にとっては、海外市場攻略は簡単ではありません。というのも、日本市場で培った「こうやれば商品・サービスの良さを分かってもらえる」という感覚が通用しないことが多い。

これは考えてみれば当たり前の話です。海外市場の消費者は、国や地域によって異なるわけで、その消費者を深く理解した上でその地域にあったマーケティング活動を計画しないと、現地のお客さんにはピンと来ません。

 

 

■日本人にとって海外市場攻略は簡単でない

日本の場合、国内市場がそれなりに大きかったという環境要因もあって、海外市場で成功している日本人マーケターの数が非常に少ないように思います。

確かに、海外で活躍する日本人の中には、「営業管理」や「本国との繋ぎ」で活躍されている方は沢山いらっしゃいます。しかし、クリエイティブダイレクションが上手いとか、市場からの示唆の抽出が上手いとか、異なる市場での刺さるメッセージ開発が上手いとか、そういう意味でのマーケティングで優れた方は相当少数なのではないでしょうか。

とは言え、グローバル市場を相手にしたビジネスが益々重要度を増している昨今、グローバルマーケターとしてどう成長していくか、その具体的な方法を持つことは重要です。「消費者文化」という切り口は、海外市場をエビデンスベースで客観的に捉え、適したマーケティング戦略を考える優れた補助線となります。ホフステード・インサイツ・ジャパンは、この「消費者文化」の読み解きを積極的に行っていきたいと思います。

 

■「女性性」からフランスの市場を読み解く

11月号では、パリのMerciというセレクトショップを取り上げました。Merciは経営の根幹に「社会貢献」を置く店舗で、利益の一部を積極的に社会貢献にまわしています。「センスの良さ」と「社会貢献」が高いレベルで融合しているのが特徴で、日本人にも人気の店舗です。

日本にも社会貢献を掲げる小売店は有りますが、Merciほど洗練されたイメージを持つところは稀ではないかと思います。なぜパリにはMerciのような店舗があるのか。

ホフステードのモデルから言うと、これは日本/フランスの男性性・女性性のスコアの違いを念頭に置くと理解がしやすくなります。日本の男性性・女性性のスコアは95。日本は、極めて男性性の強い文化の国です。それに対してフランスのスコアは42。これはフランスが女性性の強い文化の国であることを表します。

男性性の高い文化では勝者を称賛しますが、女性性の高い文化では、社会の中での弱者のケアに価値が置かれます。すなわち、文化的には、Merciのようなブランドビジョンの置き方は、そもそもフランス文化の中で価値を感じられやすいということになります。

 

■今日のパリは、未来の日本、かもしれない

ホフステードモデルを使ったワークショップをしていると、しばしば参加者から「日本のスコアが95って本当ですか? 最近はそこまで男性性高いとは思わないんですが・・・」というコメントをよく聞きます。この感覚、私もよくわかります。特に若い世代を見ていると、日本の社会は急速に女性性に寄ってきているように感じます。

と同時に、この「社会が女性性に寄っている」のは日本だけの現象ではないことも認識する必要があります。イスラエルの歴史家・未来学者のローレンス・トーブは、その著書「3つの原理 ーセックス・年齢・社会階層が未来を突き動かす」の中で、歴史の大きな流れとして、世界が女性性の方向に動いていると言っています。

確かに、昔と比べると日本の文化は女性性に寄っているように見える。しかし、文化は常に相対的なものなので、日本と同様に他国も女性性に寄っている=日本は相対的に男性性が依然として高い、ということなのではないかと思います。一方で、仮に日本文化がこの先も継続的に女性性に寄っていくのだとしたら、パリのMerciの例は、日本の未来を考える上でも参考になります。なぜなら、ちょっと未来の今よりも女性性に寄った日本文化においては、今日のMerciのような、女性性文化を基盤とする店舗が今よりも価値を感じられるかもしれないからです。

文化の差を意識しつつ、グローバル市場での現象を見続けることは、他の市場の未来を考える上でも参考になります。そんな視点でグローバル市場を見るのは面白いですね。

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