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新人の仕事が消える?:AI時代の新人教育 – 歩きながら考える vol.20

2025.04.10 渡邉 寧
「歩きながら考える」

今日のテーマは「新人教育とAI」について。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題をラジオ感覚で平日(月~金)の毎朝ラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

 

こんにちは。今日はジムに向かう道すがら、「AIが新人の仕事を奪う未来と教育の新ルート」について考えてみたいと思います。最近、3月31日のファイナンシャルタイムズの記事(「AIが奪う新人の成長機会」)が日本経済新聞に載っていて、ちょっと考えることがあったんですよね。で、大学卒業後のキャリアや教育のあり方がどう変わるか、歩きながらゆるく話してみようと思います。

AIが新人の仕事を奪うとどうなるか

まず最初に、AIが新人の仕事を奪うって話から。

記事では、AIがエントリーレベルの仕事を代替するって書いてありました。例えば、新人記者が書くような初級の記事とか、事務職のデータ整理とか、そういうのはAIがやった方が早いしクオリティも高い、と。この記事を書いているのは2025年4月ですが、文章生成や簡単なグラフ・イラストの作成はAIが出来てしまうので、新人の「入社して最初にやる仕事」がほぼ消える可能性が高いのはその通りだと思います。

で、これが何を意味するかというと、大学卒業したての若い人が「とりあえず就職して給料もらいながらスキルを磨く」っていうルートが難しくなるってこと。忙しいマネージャーからすると、AIに頼めばすぐに高品質のアウトプットが出てくるようになってしまったので、わざわざ新人に仕事を頼むインセンティブが減ってしまいました。

困るのはこれから社会に出てくる若い人です。AIと比較されたのではたまったものではありません。初歩的な仕事の作法に加えて、どこかで様々な職務スキルを獲得する必要があります。新人で就職するのが難しくなるとすると、代わりに、無給のインターンとか、お金を出してでも経験を積むみたいな状況になるのかもしれない。

しかしですよ。ここで、想像してみてください。大学出て、22歳から数年間、無給で働いて、ようやくお金が稼げるのが20代なかばとか後半とか。結構きついですよね、正直。

20代なかばまで無給だと何が困る?

ここでちょっと立ち止まって考えてみると、20代なかばまで無給って、経済的な自立が遅れるってことですよね。人生の幸福を考えた時、お金が稼げるようになるのって結構大事な要素じゃないですか。それが確立しないまま、20代を過ごすって、精神的にも金銭的にも厳しい。で、こうなると、どうなるかというと、「そもそも大学4年間って必要だったのか?」みたいな疑問が出てくるのではないかと思うわけです。

今って、高校出て18歳から大学で教養とか専門を学んで、22歳で卒業して就職っていう流れが当たり前だけど、AI時代にそれがベストなのかなって。だって、18歳から教養を学ぶより、社会に出て生の経験積んでからの方が、学ぶ意味とか課題意識がリアルに感じられるのではないかと思うのです。矛盾とか尊敬できる人とか、いろんな出会いがあって、そこから学びたいって思うこと、学生時代より多いかもしれない。研究者などは違うかもしれませんけどね。

対策としての教育の新ルート

で、ここからが対策の話。

この未来予測を踏まえると、学部教育を見直すニーズが出てくると思うんです。具体的には、教育のタイミングをずらして、社会経験と学びをハイブリッドにするっていう考え方。たとえば、高校卒業したらすぐ大学じゃなくて、10代後半から働いてみる。お金は稼げないかもしれないけど、仕事の経験積んで、その上で「もっと専門的なこと学びたい。教養を身に着けて深みを目指したい」って思ったら大学に行くとか。

面白いのが、東京大学が一部こういう制度を試験導入してるらしいんですよ。入試合格したらすぐ学部に行かなくても、社会経験積んでから入学できる選択肢を用意してるみたい。こういう流れが普通になるんじゃないでしょうか。入試はそのまま残して、18歳で合格したら、例えば10年以内ならいつでも入学OKみたいな権利設定にするとか。昔は施設のキャパシティの問題があったのかもしれないけど、今は定員の問題もオンラインで柔軟に対応できるんじゃないかと思います。

 

正社員にスキマバイトの仕組みを取り入れる?

未来の自分をどうデザインするか

この新ルート、個人的にはめっちゃ望ましいなって思うんですよね。10代後半から社会に出て、20代で経験と学びをハイブリッドに進めて、20代後半から自分の進む道を徐々に固めて行ってしっかり稼げるスキルを持つ。AIが新人の仕事を奪うなら、逆にその隙間を埋める形で、自分なりのキャリアをデザインするチャンスかもしれない。

企業側も、社会を構成する一員として、AI時代に若い人をどう育てるかを長期的かつ包括的に考えてほしいと思います。

おわりに

というわけで、今日は「AIが新人の仕事を奪う未来と教育の新ルート」を歩きながら考えてみました。20代なかばまで無給になるかもしれない未来と、それに対する教育の見直しアイデア、ちょっとワクワクするような怖いような感じですけど、どう思いますか?もし「自分ならこんな教育ルートがいいな」とか「AI時代にこう備えたい」みたいなアイデアがあったら、ぜひSNSでシェアしてコメントください!

ジムに着いたので、ここで一旦終わり。最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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