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未来の住民調査はどうなる?幸福度調査へのAIの統合 – 歩きながら考える vol.29

2025.04.23 渡邉 寧
「歩きながら考える」

今日のテーマは「住民調査とAI」の関係について。少し未来の住民調査がどうなりそうか考えます。このシリーズでは、筆者が街を歩きながら、日々の気付きや研究テーマについてのアイデアを語っていきます。ふとしたタイミングで浮かんだアイデアや、知的好奇心をくすぐる話題を平日(月~金)の毎朝ラジオ感覚でお届けしています。散歩中のちょっとした思いつきを、ぜひ一緒に味わってみてください。

こんにちは!今日はオフィスに向かう道すがら、ちょっと最近考えているテーマについて話してみようと思います。最近、住民意識調査ってどういう形式で行うと、よりよい政策立案に繋がるんだろうかということを考えていて、特に「AIが社会の課題をどう解き明かすか」っていうテーマが気になってるんです。2025年の今、AIが都市の医者みたいに、私たちの暮らしを「診察」して改善策を提示してくるようになるのだろうか。そんな話を、歩きながらゆるく考えてみます

AIが都市の「健康診断」をしてくれる?

まず最初に、今の住民意識調査の在り方とAIの組み合わせの可能性に関して。

住民意識調査って、よく行われると思うんですが、地域の人々が「生活はどうか?幸福度はどうか?不満に感じているところはあるか?」という感じで答えますね。生活に関わる要素を多面的に、抜け漏れなく聞いて、幅広くデータを集めて状況を把握します。たとえて言うなら、健康診断みたいな感じ。強い仮説があるというよりは、「問題は有るかもしれないし無いかもしれない」という感じで見ていくのだと思います。

一方で、仮説を置かずにデータを取って分析する、というのは、なかなか難しいなとも思うんです。幸福度とか地域の満足度って、住環境、人間関係、教育、福祉とか、いろんな要因が複雑に絡み合ってるじゃないですか。しかも、「住民」と一言に言っても、色々な人が居るわけで、地域内の小集団や個人によって、メカニズムが違うのだろうとも想像できる。だから、仮に「幸福度の指標が5点満点で3点です」と出たとして、これが良いのか悪いのかは、容易には判断できないと思うわけです。

で、思うのは、こういう分析こそAIの方が得意なんだろうな、ということ。人間だと「うーん、うちの地域の幸福度には問題があるのか?あるとしたらどこが問題なんだ?」って頭抱えちゃうけど、AIならこの「複雑なメカニズム」を仮説ドリブンではなくてデータドリブンで分析できそうですね。

この分野で先を行っていそうなアメリカの状況に関して、例えば、Googleの公共部門のカスタマーエンジニアリングディレクターの見解等を見ると(出所 “How Government May Use Generative AI in 2025 and Beyond“)、公共セクターでのAIの活用は、2024年に市民対応用チャットボットの導入が始まり、2025年はより広範なデータの分析やシミュレーションやエージェントとしてのAIアシスタントの活用が進むことが予想されているようです。こうした動きによって、従来の住民意識調査データの高度な解析や複雑な課題の可視化が可能となり、データドリブンな政策立案とサービス改善を強力に後押しする時代が到来しつつあるのだと思います。日本でも同様の動きになるんでしょう。

でも、AIが先回りしすぎると怖くない?

一方で、AIがこんな風に社会を「診断」して、政策まで先回りして決めちゃうって、ちょっと怖い話でもあるんですよね。

考えてみてください。AIがデータ見て、「この地域は福祉を強化すべき」って提案して、自治体がそれに対して対応する。便利そうだけど、これってちょっと父権主義的な感じもします。住民が主体的に自分たちが住む地域に関与する、というのは理想的すぎるのかもしれませんが、そういう理想像とAIによる「先回り」的な対応は相性が悪いようにも感じます。幸福度のためにAIが先回りするのは、どこまで推進すべきで、どこから先は住民が自分たちで決める領域として残しておくべきなのだろう?と考えてしまいます。

未来の地域行政をどうデザインする?

この2つの話、AIの進展のスピードと「地方自治のあるべき」から考えた活用の仕方は、どっちも2025年の今、めっちゃホットなテーマだと思うんです。日本の自治体でもAI活用はどんどん進むんだろうとは思います。行政は文書主義なので、AIによって効率化される余地は非常に大きいと思います。せっかくとった住民調査のようなデータと、その他の様々なデータを組み合わせて、地域の幸福度向上に繋がる様々な示唆が生まれることも期待されます。

でも、同時に、住民の主体性を担保しなくてよいのか、ちゃんと考える必要がある。住民参加とは違う方向性に進むことに関しても、本当にそれで良いのかどうか、よくよく考える必要がある。こういう議論がこれからの都市をデザインする鍵になる気がします。

まとめ

というわけで、今日は「AIが地域を診断する未来」を歩きながら考えてみました。みなさんはどう思います?「AIに都市を任せたい!」とか「いや、ちょっとそれは違う」って意見、ぜひSNSでシェアして教えてください!

最後まで読んでくれて、ありがとうございます。また次回の「歩きながら考える」で会いましょう!


渡邉 寧

博士(人間・環境学)
代表取締役
シニアファシリテーター

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。2014年に独立。2025年に京都大学大学院人間・環境学研究科にて博士号取得。専門は文化心理学、組織行動。最近の研究テーマはAIの社会実装 × 職場の幸福感 × 文化の違い

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