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デンマークの文化に見る幸福感 vol.11 – フォルケホイスコーレの食事

2023.03.13 祖父江 玲奈
フォルケホイスコーレの食事

デンマークの文化に見る幸福感
vol.11
フォルケホイスコーレの食事

世界幸福度ランキング上位3位内の常連であり、ここ10年で1位に4回もなっているデンマーク。ホフステードの6次元モデルで見ると、女性性が高く、個人主義という特徴があります。

幸福感を感じるデンマークの文化を紐解いていきたいと思います。


デンマークの料理と食事にまつわる文化を体験する、という目的で始まった、2ヶ月の冒険。

ご縁あって、友人の親戚がお仕事されているフォルケホイスコーレのキッチンにお手伝いとして入れていただけることになりました。

今回は、フォルケホイスコーレの食事についてご紹介していきます。

フォルケホイスコーレの食事

スカルス手工芸学校では、(長期・短期問わず)授業は9時から16時前まで。
1日に3回の食事と3回の休憩がありました。授業がある日、1日のスケジュールは大体はこんな感じです。

スカルス手工芸学校の食事時間

7:30〜
朝食(Morgenmad)
10:00〜
朝のコーヒーブレイク(Morgenkaffe)
12:00〜
昼食(Frokost)
14:00〜
午後のコーヒーブレイク(Eftermiddagskaffe)
18:30〜
夕食(Aftensmad)
19:45〜
夜のコーヒーブレイク(Aftenskaffe)

食事の準備ができると、食堂の入り口にある鐘を鳴らして知らせます。

食堂入ってすぐのテーブルに、全ての料理を並べてあります。生徒さんたちは入り口手前の棚にあるお皿やカトラリーを取って、テーブルの両側から料理を取りながら進み、自分の分の料理を持ってテーブルにつきます。食事は自由に取ってくる仕組みなので、あとでお代わりしたり、違う食べ物を取りに行ったりもします。
みんなが食べるテーブルに、お水を入れたジャグを用意してあります。コップはテーブルの人がまとめて、または自分で持ってくるようになっていました。

木曜日のスープの日。写真の奥が入り口、棚にお皿やカトラリーがあります
木曜日のスープの日。写真の奥が入り口、棚にお皿やカトラリーがあります

みんなで食べる食事

テーブルは11人掛け。対面で10人にお誕生日席1席です。
多くの場合は、コースを一緒に受講されている方たちが集まって座っていて、先生も一緒に食事します。当日の講座担当ではない先生が「一緒にいいかしら?」と言って入ってきたり、他のコースの人と一緒に食事をしたりする場合もあります。
コーヒーブレイクは朝と午後はクラスの途中なので、クラス単位でキリの良いところで休憩にきますが、大体みんな同じ時間に来ます。なので他のコースの人たちとも一緒になったりします。

3面に窓があって開放感のある食堂
3面に窓があって開放感のある食堂

みんな、一緒に食べることを楽しむ時間。
なので、一人で他のテーブルにつくよりは、入れてくれる?と言って間に入ったりして、結構むぎゅっと詰めて座ります。10人や11人、フルに詰めて座っていることがとても多いのです。
私はキッチンのお手伝いのため、ランチはキッチンスタッフと一緒にオフィスで食べていましたが、お茶の時間や夕食の時(キッチンスタッフが帰った後)は、短期や長期の生徒さんと一緒に食べていました。

食事はテーブルのみんなが終わったら、ごちそうさまでした(Tak for mad タックフォーメウ)と言って立ち上がり、食堂を出たところにある下膳棚に片付けます。お皿に残ったものをゴミ箱に捨てて、お皿やカトラリー、コップを種類別に分けて置きます。

食事を支える給食当番やミーティング

長期コースの生徒さん(Elev エレウ)は、寄宿生としての役割一つに、給食当番がありました。夕食の配膳、それに朝食や夕食のお皿洗いなどをお手伝いします。

テーブルを拭いて、各テーブルにお水のジャグを用意して。
紙ナプキンを補充して。
お料理を配膳用のテーブルに運んで、きれいに並べて。

食事が終わったら、みんなが下げたお皿のワゴンをキッチンに運んで。
ざっと洗って食器洗い機に入れて、お皿を片付けて。
テーブルを拭いて、次にお茶の準備ができるように。

また、デンマークの生徒さんは週末に自宅に帰ることもあるし、学校に残ることも。留学生は自分たちで料理したりもします。そのため、水曜日にはキッチンミーティングとして、キッチンスタッフと生徒さんで打ち合わせしていました。
寄宿舎にいるのは何人の予定なのか。作り置きの料理をお願いしたり。自分たちで作るなら、必要な材料を発注したり。

私は、日本からの留学生たちと、手毬ずしを作りました。生徒さんたちは、焚き火でマシュマロを焼いたりもしていましたね。

スカルスにいるときに作った、手毬ずし
スカルスにいるときに作った、手毬ずし

みんなでどのように過ごすのか。どうやったら、楽しく一緒に生活が送れるのか。協力して、スカルスでの時間を楽しいものにできるよう、みんなで食事の時間に関わっていくことも、生徒さんの役割でした。

みんなで一緒に食事をする喜び、という経験

デンマークでは、フォルケホイスコーレの共同生活を通して、ともに食事をする時間の大切さについて体感していくのだな、と思います。

フォルケホイスコーレでの共同生活は、人と過ごす楽しみが大きくあります。
生徒さん・受講生の方達を見ていると、手芸が大好きな仲間達と、おしゃべりしながら作業に没頭しています。同じコースに、興味が合う人たち、そして違う経験でいろんなことができる人がたくさんいるからです。
そしてその時間をより一層楽しいものにするのが、食事やケーキを一緒に食べて、好きな手芸などについて話す時間ではないかと思います。

テーブルの人たちで、お互いにお水や食べ物について気を配ること。
配膳や片付けなど役割を共有すること。
誰かが作ってくれたり、自分で作ったり。

そうしてみんなで一緒に食事をする時間を作るということが、社会で暮らしていく上で大切なこと、として学習されていきます。

この要素が、デンマークのフェレスピースニン(Fællespisining、みんなでごはん)という習慣につながっているのです。フォルケホイスコーレがデンマークのヒュッゲな時間を作る基盤になっているんだよ、とデンマークの友人たちが言う理由は、この体験によるのだな、と実感しました。


祖父江 玲奈

ファシリテーター

中央大学総合政策学部卒業。アクセンチュアにて、組織戦略、組織設計、人材開発戦略を中心とするコンサルティング業務に従事。多くのインターナショナルプロジェクトに参画する。その後、日産自動車株式会社にて、女性のお客様をターゲットとした商品開発を担当。グローバル共通/地域固有でのお客様調査、また男女差の科学的分析に基づいて多くの提案を行い、商品を実現した。商品開発でのアイディア創出プロセスにおいて、論理的・俯瞰的視点による多面的分析力、また画像/ビジュアルイメージやプロトタイプを通じた複合的な情報収集(キュレーション)のプロセスが、新しい商品像を生み出すために非常に重要であることを発見。イノベーションを生み出すアイディア創出方法を構築中。
青山学院大学ワークショップデザイナー講座 修了。デンマークデザインスクール KaosPilot Creative Leadership course 修了。シータヒーリング認定インストラクター/プラクティショナー

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