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デンマークの文化に見る幸福感 vol.2 – 休憩をとる習慣

2022.10.14 祖父江 玲奈
休憩をとる習慣

デンマークの文化に見る幸福感
vol.2
休憩をとる習慣

世界幸福度ランキング上位3位内の常連であり、ここ10年で1位に4回もなっているデンマーク。ホフステードの6次元モデルで見ると、女性性が高く、個人主義という特徴があります。

幸福感を感じるデンマークの文化を紐解いていきたいと思います。


前回、Kaffepause(カーフパウゼ)、コーヒーブレイクというデンマークの習慣をご紹介しました。
今回は、デンマークでどのようにしてKaffepauseが根付いているのか、その持つ意味を考えていきたいと思います。

1日に3回もあるコーヒーブレイク

以前、縁あって、デンマークのフォルケホイスコーレのキッチンで働かせてもらったことがあります。
フォルケホイスコーレはデンマーク発祥の成人向けの教育機関で、全寮制を基本としています。私が手伝っていたのはスカルスにある、手芸の学校。手芸ですので、参加者は女性ばかり。秋だったので長期(5ヶ月)の学生は10名程度でしたが、毎週異なる短期コースや週末コースがあり、毎週45名程度、夏休みや秋休みには70名程度が寮に宿泊する、忙しい学校です。

その中で驚いたのは、食事の多さ!量ではありません、回数です。
スケジュールはこちら。(時間はちょっとうろ覚えですが)

7:45〜
朝食(Morgenmad)
10:30〜
朝のコーヒー(Morgenkaffe)
12:00〜
昼食(Frokost)
14:15〜
午後のコーヒー(Eftermiddagskaffe)
18:00〜
夕食(Aftensmad)
20:00〜
夜のコーヒー(Aftenskaffe)

なんと1日に3回もコーヒーブレイクが!

ちなみに朝のコーヒー(Morgenkaffe)という名称ですが、Kaffepauseを示していて、おやつの時間という意味です。実際にはコーヒーや、紅茶などのお茶、水、果物やケーキなど、その時々で異なるものを用意していました。

ある日の午後のKaffepause。レモンケーキ。
ある日の午後のKaffepause。レモンケーキ。

コーヒーブレイクの意味

食事の回数に驚いた私が「一日中食べてる感じがする!お腹が空かないよ!」と言うと、デンマーク人の先生が言いました。私たち、食べるの大好きだから!ヒュッゲを理由によく食べるのよ、と 笑。
それも本当かもしれません。でも、食べなくても、このコーヒーブレイクはとても大切なものと考えられています。

ついつい、真面目な人は、もう少し仕上げたいと思って作業を続けたがったり。
また個人主義的な考え方では、みんなそれぞれ作業していて、集中しているのだから、個別に休憩にしたい。今は集中しているのに、と思う人もいるのではと思います。

でもその中で、デンマークのフォルケホイスコーレでは、一斉にこのコーヒーブレイクを取ることを大切にしていました。

みんなが休憩しに部屋を出て、新鮮な空気を吸うこと。
コーヒーを飲んで、リラックスして。
自分の隣だけでなく、いろいろな人と話すこと。

ちょっと自分のやっていることを説明したり、冗談を言って笑ったり。
隣のコースは何をやっているのか聞いて教室を見に行ったり、キッチンの私は焼いたケーキの話をしたり。

そうしてゆったりとする時間をとること、いろいろな人と繋がること。
それも一つの体験、学びとして考えられていたと思います。

先生たちの朝のコーヒー
先生たちの朝のコーヒー(集まり始めたところです)。

先生やスタッフも、毎日ではなくとも、一緒にコーヒーブレイクを楽しみます。いつもは生徒と一緒のコーヒーブレイクですが、週1-2回は先生と事務局、キッチン、設備管理のスタッフで一緒にコーヒーを飲み、パンとチーズを食べます。

生徒や授業の話をするのではなく、あくまでブレイク。旅行や家族、家の改装プロジェクトの話など、たわいもない話をしながら、お互いの顔をみて、一緒に過ごす時間を味わいます。

人とつながる時間というコーヒーブレイク

デンマーク以外にも、北欧諸国はコーヒーが大好き!ですが、それはコーヒーブレイクを大切にする文化からきているところがあるのではないかと思います。

隣国スウェーデンには、Fika(フィーカ)と呼ばれる過ごし方があります。Fikaはみんなでおしゃべりしながら、コーヒーやお茶などの温かい飲み物と甘いお菓子を楽しむ習慣のこと。名称はスウェーデン語のコーヒーを意味するKaffeの逆読みからきています。

あるアメリカ人の友人は、スウェーデンでの会議に参加してこのFikaに触れ、とてもびっくりしていました。驚いた理由を聞くと、仕事仲間とカフェに行って、仕事の話は一切なしだよ!と言われた、と。

スウェーデンもデンマークと同じ、個人主義で女性性の高い文化です。
アメリカも個人主義ですが、女性性が高い北欧の文化では、仕事の関係においても人とつながって話をする、その繋がりを大切にしているのですね。

日本では懇親会などの場でのコミュニケーションで人の繋がりを作ってきた側面がありますが、ワークライフバランスを学ぶ上では、仕事場で一緒に休憩をとる、仕事の話はなし!というスタイル、新しく取り入れるのも良いのではないかと思います。


祖父江 玲奈

ファシリテーター

中央大学総合政策学部卒業。アクセンチュアにて、組織戦略、組織設計、人材開発戦略を中心とするコンサルティング業務に従事。多くのインターナショナルプロジェクトに参画する。その後、日産自動車株式会社にて、女性のお客様をターゲットとした商品開発を担当。グローバル共通/地域固有でのお客様調査、また男女差の科学的分析に基づいて多くの提案を行い、商品を実現した。商品開発でのアイディア創出プロセスにおいて、論理的・俯瞰的視点による多面的分析力、また画像/ビジュアルイメージやプロトタイプを通じた複合的な情報収集(キュレーション)のプロセスが、新しい商品像を生み出すために非常に重要であることを発見。イノベーションを生み出すアイディア創出方法を構築中。
青山学院大学ワークショップデザイナー講座 修了。デンマークデザインスクール KaosPilot Creative Leadership course 修了。シータヒーリング認定インストラクター/プラクティショナー

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