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デンマークの文化に見る幸福感 vol.9 – 遊んで学ぶ料理の力

2023.02.08 祖父江 玲奈
遊んで学ぶ料理の力

デンマークの文化に見る幸福感
vol.9
遊んで学ぶ料理の力

世界幸福度ランキング上位3位内の常連であり、ここ10年で1位に4回もなっているデンマーク。ホフステードの6次元モデルで見ると、女性性が高く、個人主義という特徴があります。

幸福感を感じるデンマークの文化を紐解いていきたいと思います。


前記事 ヒュッゲを作る料理時間、でもご紹介したように、幸せな生活を自分で作る力として、料理を楽しむのがデンマーク流。

今回は、そんな幸せに生きるための料理の力を、デンマークの若者がどうやって学んでいるか、ご紹介したいと思います。

料理を面白がってみよう

デンマークで出会った、面白い取り組みがあります。
フードメーカー(Food Maker)(リンクはデンマーク語サイト)というプロジェクト型の取り組みで、若者向けに、食事を作って食べることを楽しむフードイベントを開催しています。

コンセプトはいたってシンプル。

人と出会って、食事を作って、
一緒に食べる

人とのつながり、
コミュニティ、食の大きな楽しみ

代表的な活動は、食べ物で遊ぼう!(Vi leger med mad)というイベント。16〜28歳の若者をターゲットに、若者が開催し、若者が参加する、若者だけのイベントです。

デンマークでは高校を卒業すると、基本的に実家を出ます。物価の高いデンマーク、一人暮らしはできないので、大体がシェアで住むことになります。

買い物してごはんを作る、それだけで大きなチャレンジですよね。そのチャレンジに対して、一緒に作って一緒に食べる。
三人寄れば文殊の知恵、と日本でも言いますが、みんなでやればできる!美味しい!楽しい!という発想です。

食べ物で遊んじゃうフードメーカー祭

このフードメーカー、数年に1度の大きなお祭り、フードメーカー祭(Food Makers Ferie)をやっています!2018年9月にデンマーク第2の都市オーフスで開催されました。若者のグループはもちろん、地元の料理学校やプラスチック容器の会社など様々な団体が出展。

参加者も提供する側も若者で、手を動かして参加することが必要なのは、普段のイベントと同じです。

エフタスコーレ(中学のオルタナティブスクール)の調理コースからは、典型的なデンマークのポテトスープに、いろいろな国からのトッピングで変わる味を楽しむイベント。トッピングはイタリア、メキシコ、日本から。トッピングは見えない箱に入っていて、匂いをかいで選びます。

リスコウ・エフタスコーレの料理コースの生徒たち
リスコウ・エフタスコーレの料理コースの生徒たち

参加者がアルミホイルで覆われた箱で匂いをかいで、どんなトッピングかな?と考え中。

他にも様々な、食べ物を遊んじゃうぞ!という出展がありました。いくつかをご紹介します

水をアップグレードしよう!

水をアップグレードしよう!
小さいウォーターボトルに、フレッシュハーブやスパイス、ベリーなどをお好みで何種類か入れるだけ。ちょっと香りのついたお水で、レベルアップ。

5分でアイスクリームを作っちゃおう!

5分でアイスクリームを作っちゃおう!
生クリームに好きな味を入れて、液体窒素と混ぜたら、ふんわり軽やかなアイスに!

電子レンジでカップケーキを作ろう!

電子レンジでカップケーキを作ろう!
紙コップにバターを溶かして、ホットケーキのタネと好きな味(ココアなど)を入れて、チン!スプレーチョコなどのトッピングをして出来上がり。

電キャベツ・ボウリング 笑

電キャベツ・ボウリング 笑
デンマークのキャベツは日本と違ってまん丸で、詰まっていてとても固いのでボウリングにはぴったり!

他には、チョコレートのテンパリング体験(いちごやマシュマロをチョコがけにして食べられます)、クリスマスクッキーのデコレーション、生牡蠣の殻むき競争や、カッティングボードを作る講座、などなど。

どれも日本でやったらちょっと怒られそうなくらい笑、の食べ物の扱いです。でも、どれもすぐにできて、ちょっと楽しいものばかり。簡単だし、友達とやってみようかな〜という雰囲気で、食べ物で一日中遊んじゃえるイベントばかりでした。

幸せな生活を自分で作る「料理の力」

今回、一緒に参加させてもらったリスコウ・エフタスコーレ(中学2-3年生向けのオルタナティブスクール)はオーフス郊外にあります。エフタスコーレは全寮制で、1年間親から離れて生活します。
そんな中で学生みんなの楽しみは、もちろん友達と過ごすこと。スポーツや街に買い物に出かけたり、大きなリビングルームでみんなでテレビを見たり、延々とおしゃべりしています。

そんなヒュッゲなひとときに、このエフタスコーレの学生の多くは、みんなで料理していました。それも、調理コースの子だけではないのです。(スポーツや冒険、ダンス、デザインなど様々なコースがあります)

たくさんのパンケーキだったり、クッキーだったり。どれも難しいものではないし、彼らがとても上手なわけではありません。

でも、彼らは知っているんです。
焼きたてのクッキーがあったら、熱々なだけでもご馳走なこと。
みんなでクッキーを焼いたら、形がおかしくても焦げていても、その全部の体験が楽しいこと。

みんなで料理して、
みんなで食べて、おしゃべりして。
それがなんとも言えず、楽しいこと。
お腹も心も、満たしてくれること。

「みんなでごはん」の価値は精神面でも健康面でもいいことがたくさん。

毎日の生活を、自分たちで楽しく幸せにできること。
そんな料理の力を、デンマークでは大切にしているのかなと思います。

2018年のフードメーカー祭の様子

祖父江 玲奈

ファシリテーター

中央大学総合政策学部卒業。アクセンチュアにて、組織戦略、組織設計、人材開発戦略を中心とするコンサルティング業務に従事。多くのインターナショナルプロジェクトに参画する。その後、日産自動車株式会社にて、女性のお客様をターゲットとした商品開発を担当。グローバル共通/地域固有でのお客様調査、また男女差の科学的分析に基づいて多くの提案を行い、商品を実現した。商品開発でのアイディア創出プロセスにおいて、論理的・俯瞰的視点による多面的分析力、また画像/ビジュアルイメージやプロトタイプを通じた複合的な情報収集(キュレーション)のプロセスが、新しい商品像を生み出すために非常に重要であることを発見。イノベーションを生み出すアイディア創出方法を構築中。
青山学院大学ワークショップデザイナー講座 修了。デンマークデザインスクール KaosPilot Creative Leadership course 修了。シータヒーリング認定インストラクター/プラクティショナー

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