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パリで働く、日本人マーケターの“トレンドレポート”(6)

2018.10.22 山本 真郷 / 渡辺 寧

Vol. 6
遠くて近い国「エチオピア」
【前篇】日本と通ずるおもてなし文化

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。
パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。
トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

アフリカでナンバーワンを誇るエチオピアの経済成長率

最後の成長市場と評されるアフリカ。
富士フイルムではその大半地域の事業展開(写真事業)をフランス経由で取り組んでいます。フランスが旧仏領を中心に歴史、経済、文化など、あらゆる面でアフリカとのつながりが深いためです。そこでフランス現地法人に勤める私も、アフリカに出張する機会が多くあります。
今回は直近で出張した「エチオピア」の動向を前編と後編の二回に分けてレポートしたいと思います。前編は「文化」の観点でビジネスのヒントに迫ります。

首都アディスアベバの空港に降り立ち、出迎えてくれた取引先の第一声は「長旅で疲れただろう。まずコーヒーを飲みに行こう」という、いかにもコーヒー生産国らしい言葉でした。同国はコーヒー発祥の地と言われ、豆の生産量はアフリカ1位(世界5位)、輸出額の約4分の1がコーヒーに依存しています。かつては干ばつによる飢餓に苦しみ、いまだ世界最貧国の一つですが、ここ10年間で平均10%レベルの目覚しい経済成長を遂げ、世界の注目を集めています(2014年経済成長率:10.3%、世界1位)。

「コーヒー」を軸としたシェアリング・ソサエティー

エチオピアは日本から遠く離れた異国ですが、興味深いことに日本に近い生活習慣やしきたりを持ち合わせています。
挨拶の際は腰を屈めてお辞儀をし、年配者を敬い、家族・地域の集まりを大切にし、庭仕事を好むなど、一昔前の日本を彷彿とさせます。国の歴史が古く、70年代まで王室が存在したこともあり、形式や儀式が重んじられているということが考えられます。

一方、日本人と大きく異なるのは、底抜けに明るい気質でしょうか。滞在中、取引先のトップ(年配者)自らが終始同行し、もてなしてくれた点も印象的でした。自分は立場が上なので、対応は部下に任せる、ということがないのです。同国では千年以上にも渡るコーヒーの長い歴史の中で、日本の「茶道」に似た「コーヒーセレモニー」と呼ばれる「客人をもてなす文化」が育まれ、現在も生活に根差した慣習となっていますので、こうした文化が背景にあるのかもしれません。

コーヒーセレモニーは客人の前で豆を煎るところから始まり、豆を粉砕し、ジャバナと呼ばれる素焼きのポットを使って淹れ、コーヒーを飲みながら語り
合います。コーヒーを淹れる工程は少なくとも一時間はかかりますが、一般家庭で一日に2 ~ 3回行われるそうです。
コーヒーセレモニーは結婚前の女性が身につけるべき作法のひとつとなっており、一部地域ではプロポーズでもコーヒー豆が使われるなど、コーヒーは人生の節目(冠婚葬祭)とも深く関わっています。

取引先で聞いた話では、プライベート・ビジネスを問わず、大切な話はコーヒーセレモニーで「シェアリング」するそうで、私たちも入れたてのアラビカコーヒーを飲みながら商談を進めました。
同国で日本企業のプレゼンスはまだまだ感じられませんが、日本文化が通ずる感覚を持ち合わせた国なので、日本企業進出の余地はあるのではないでしょうか。

集団主義文化の商習慣まずは信頼関係の構築から

オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステードは、国民文化を数値で表す研究をしています。この研究をベースにすると国によって商習慣の違いが分かりやすくなります。ホフステードは6つの次元で国民文化の差を説明しますが、その次元のひとつに「集団主義・個人主義(Individualism)」があります。スコアは0 ~ 100の間で動き、0に近くなると集団主義、100に近くなると個人主義になります。
エチオピアのスコアは20で、これはエチオピアが集団主義の国であることを示しています。

【図】
個人主義スコアの国比較
個人主義スコアの国比較
出展)Hofstede Insights Group

集団主義の文化では、仕事をするにはまず「人間関係」をつくることが求められます。人間関係をつくる中で、「人として信頼される」→「仕事をして成果を出す」という順番でビジネスが進んでいきます。これに対し、個人主義の文化では、仕事をするにはまず「成果を出す」ことが求められます。「成果を出す」→「人として信頼される」という順番でビジネスが進んでいきます。

そのため、集団主義の国で初めての相手と商談をしようとすると、まずお茶に誘われることがしばしばあります。お茶をしながら話すのは商談の具体的な中身ではなく、人となりや家族の話です。こうしたプライベートな付き合いが先にあり、その中で人間関係が出来ると具体的な仕事の話に進んでいくという具合です。
これは、アメリカなど個人主義の国で、単刀直入に相手のメリットを提示して素早く商談をまとめていくやり方とはアプローチが異なります。

エチオピアのコーヒーセレモニーは、こうした集団主義の文化における人間関係構築の欠かせないプロセスです。
アフリカをはじめ、多くの新興国で見られる集団主義文化でビジネスを円滑に進めるためには、こうした人間関係構築の機会に真摯に対応することが重要です。


WRITER

山本 真郷 / 渡辺 寧

- 山本 真郷 プロフィール -FUJIFILM Frances(フランス現地法人)
Directeur General Adjoin
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士フイルムに入社。入社以来、写真事業に従事し、チェキ(instax)のブランドマネージャー時代に数々のエポックメイキングな商品・販促を企画。著書に『非営利組織のブランド構築-メタフォリカル・ブランディングの展開』(渡辺との共著)。- 渡辺 寧 プロフィール -ホフステード・インサイツ・ジャパン取締役慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、ソニーに入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事した後、ボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。現在は独立し組織開発での企業支援を行う。

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