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パリで働く、日本人マーケターの“トレンドレポート(7)

2018.11.06 山本 真郷 / 渡辺 寧

Vol. 7
遠くて近い国「エチオピア」
(後編)中国のアフリカ市場攻略

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。
パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。
トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

変貌を遂げるエチオピアに押し寄せる中国

最後の成長市場「アフリカ」。中でも世界の製造業・小売業から、一際注目を集める国が「エチオピア」です。近年、世界トップクラスの経済成長を遂げ、消費市場及び生産拠点として有望視されているためです。

富士フイルムではアフリカ大半地域の事業展開(写真事業)をフランス経由で取り組んでいるため、私も「エチオピア」に出張する機会がありましたので、先月号に続きその動向をレポートします。

首都アディスアベバは開発ラッシュで、市内の至る所で建設が進んでいますが、驚いたのは建築現場の「仮囲い」が中国語で埋め尽くされていたこと。中国が官民一体で巨額の援助・投資を行い、道路、鉄道、発電所などの大規模インフラの整備を担っているのです。アムハラ語(同国公用語)で「新しい花」を意味するアディスアベバは、中国がその花を咲かせようとしているように映りました。レポートの後編となる今回は「中国のアフリカ進出がなぜうまくいくのか」、そのアプローチからビジネスヒントを探ります。

華人コミュニティを形成 中国式の新興国進出

中国によるアフリカ進出の狙いは(上位に中国政府が推進する「一帯一路」構想がありますが)自国の経済成長を維持するために必要となる莫大な「エネルギー資源の獲得」と「ビジネスチャンス」にあります。

進出のメカニズムは、まず中国側の企業・政府要人がトップセールスを行い、資源権益と引き換えに無償援助・借款で大型プロジェクトを請け負うことから始まり、建設で必要な機材や資材を本国から輸出し(貿易体制の確立)、大量の労働者を派遣します。

ここで特有なのが、派遣された労働者たちとビジネスチャンスを求めて自ら移住した中国移民とが合わさり、華人コミュニティが物理的空間(チャイナタウン)として形成されていく点です。同胞で生活を支え合い、やがてビジネス網となって中国産品がアフリカ市場に流通していくことになります。つまり、華人コミュニティが生活のセーフティネットと商業機能を兼ね備えた一大プラットホームとなっているのです。

アフリカで中国勢が躍進する一方、欧米企業の撤退が相次いでいます。主な撤退理由は「蔓延する汚職・腐敗に対応できない」ことや「消費市場の発展が想定よりも鈍い」(将来が見通せない)ためで、日本企業も同様の悩みを抱えています。それなのに、なぜ中国勢はこの問題を乗り越えられるのでしょうか。

新興国開拓に馴染む中国ならではの国民文化

アフリカ市場開拓において欧米・日本企業が苦戦する一方、中国が躍進の理由のひとつを国民文化の違いに求めることができます。オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステードは国民文化を6つの次元で数値化する研究を行ってきました。図1は、その内の2つ「権力格差」と「個人主義」の中国・エチオピア・日本のスコア比較です。これを見ると、中国の方が日本よりもエチオピアにスコアが近いことが分かります。中国もエチオピアも「権力格差が高く」「集団主義(=個人主義のスコアが低い)」文化です。

【図1】権力格差と個人主義スコアの国比較
【図1】権力格差と個人主義スコアの国比較
出展)Hofstede Insights Group

この文化パターンの国では、強い権力を持ったリーダー同士が物事を決め、集団はそれに従います。また、コミュニケーションが暗黙のうちに行われます。
会議の場で個人同士が明白に議論をして決めていくというより、非公式の場で権力者同士がお互いの面子を立てながら物事が決まっていきます。中国ビジネスでよく、宴会で取引先の重役と会食をしたら翌日に迷走していた商談があっさり決まっていた、というようなことがありますが、その背景にはこうした文化があります。

不確実性を恐れない中国

もうひとつ、日本と中国の文化で異なるのが、「不確実性の回避」です。図2は日本と中国の不確実性回避のスコア比較ですが、日本は極めて不確実性回避が「高い」文化なのに対し、中国は極めて「低い」文化であることが分かります。

【図2】不確実性回避の日本・中国スコア比較
【図2】不確実性回避の日本・中国スコア比較
出展)Hofstede Insights Group

不確実性の回避の高い文化では、「石橋は叩いてから渡るもの」です。アフリカ市場のような「まだよく分からない」領域に足を踏み出すには、情報収集をきちんとし、あらゆるリスクを洗い出し、計画をきちんとつくってから行動したいと考えます。一方の中国は不確実性の回避が低い文化です。この文化では「石橋は叩く前に渡るもの」です。まず進出してみる。行動しながら情報を集め、分析をし、行動を変えていくというアプローチを取ります。新興国市場は不確実なことであふれているため、国民文化の観点からは、中国のような不確実性の回避の低い文化の国の方が積極的に進出を進める傾向にあると言えます。


WRITER

山本 真郷 / 渡辺 寧

- 山本 真郷 プロフィール -FUJIFILM Frances(フランス現地法人)
Directeur General Adjoin
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士フイルムに入社。入社以来、写真事業に従事し、チェキ(instax)のブランドマネージャー時代に数々のエポックメイキングな商品・販促を企画。著書に『非営利組織のブランド構築-メタフォリカル・ブランディングの展開』(渡辺との共著)。- 渡辺 寧 プロフィール -ホフステード・インサイツ・ジャパン取締役慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、ソニーに入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事した後、ボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。現在は独立し組織開発での企業支援を行う。

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