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パリで働く、日本人マーケターのトレンドレポート(11)シェアリングサービス先進都市パリ 急成長アプリの「人気のヒミツ」

2019.05.08 山本 真郷 / 渡辺 寧

Vol. 11
シェアリングサービス先進都市パリ
急成長アプリの「人気のヒミツ」

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。
パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。
トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

不便さがビジネスを生む
パリと縁の深いUber

世界的に拡大するシェアリングエコノミー=共有経済。この大きな潮流の中で、シェアリングサービスの草分け的存在のひとつとなっている「Uber」(配車サービス)は、ベータサービスを開始した2010年からたったの8年で世界84カ国、800都市以上(6月時点)で利用されるまでに成長し、テクノロジーが瞬く間に「配車サービスの経済秩序」を変えた事例と言えます

同サービスはパリでも普及(利用数の多い都市トップ5)していますが、新興国での広がりにも目を見張るものがあります。先日、出張したガーナの首都アクラも例外ではなく、ショッピングモールでUberによる待機列を解消するため「Uber専用パーキング」が設けられていました。

Uberはサンフランシスコ発のスタートアップ企業ですが、そのビジネスプランは創業者がかつて訪問したパリでタクシーがなかなかつかまらなかった苦い体験から着想を得たそうです。こうした背景で、同社の海外進出はパリから始まり、直近では海外初の研究開発拠点も同地に開設することが発表されるなど、何かとパリと縁があります。このように、Uberのようなアメリカ発のシェアリングサービスがフランスに根を張る中、フランス発のサービスも頭角を現しており、今回はその中でも人気の高いアプリをご紹介します。

欧州で大人気の相乗りアプリ
「嗜好」を事前設定

フランスでは、パリ市が2007年に開始した自転車のシェアリングサービスの先駆け「Velib」を皮切りに様々なサービスが生まれています。

中でも評判が良いのが、中長距離のライドシェア(相乗り)サービス「BlaBlaCar」。フランスの公共交通機関は日本ほど発達しておらず、直通の交通手段がない遠方まで安価で移動できる点が人気の理由です。運転手と利用者でガソリン代や高速代を割り勘するイメージなので、タクシー料金とさほど変わらないUberとは一線を画すサービスとなっています。

同サービスでユニークなのは、運転手と利用者が事前に互いの「嗜好」を提示できる点です。サービス名は、運転手と利用者で「BlaBla
=ぺちゃくちゃ」おしゃべりをしながら旅をしようというコンセプトに由来します。ところが、実際は同乗者との対話を煩わしく感じたり、静かに過ごしたい人もいたため、利用者に「おしゃべりが好きか」を「1Bla」から「3 Bla」の三段階で設定できるように改良したところ、顧客満足度が一気に上がったそうです。

BlaBlaCarアプリ上の「嗜好」設定の画面。
おしゃべり・喫煙・ペット・音楽の許容度合いなどを設定できる。
BlaBlaCarアプリ上の「嗜好」設定の画面

フランスでは
不確実なことは嫌われる

Uber が一般的になり、ライドシェアへの抵抗は薄れているとは言え、知らない人の車に乗って旅をすることは、何が起こるかわからない不確実で未知な状況です

こうした不確実で未知な状況を目の前にしたとき、「まあ、どうにかなるだろう。とりあえず試してみよう」と思うか、それとも「何が起こるかわからないから、事前に情報を集めたり、十分に検討しよう」と思うか、どちらの傾向が強いかは文化によって変わってきます。

オランダの社会心理学ヘールト・ホフステードは、これを「不確実性の回避」という軸で定義し、国によってその傾向が異なることを明らかにしました。ホフステードの研究によれば、フランスの不確実性の回避のスコアは86です。これはフランスが不確実性の回避が高い文化であることを示しています。

不確実性の回避の高い文化では、人は未知の状況に不安を感じる傾向が強いので、事前に詳細な情報を知ることが必要と捉えられる傾向が強くなります。ドライバーが「おしゃべりが好きか」の度合いを事前に知ることが出来る仕組みは、不確実性の回避の高い文化では特に良く受け入れられると考えられます。

付け加えると、日本もフランス同様、不確実性の回避の高い文化です。(日本の不確実性の回避スコア=92)どんな人がドライバーなのかを知りたいという欲求の程度は、フランス同様に日本でも高いと考えられます。不確実性の回避の高い文化においては、未知のサービスの採用には二の足を踏む傾向が強くなります。そのため、市場導入を成功させるためには、しっかりした情報提供をしたり専門家のお墨付きをもらったり、といったサービス開発・マーケティング上の工夫が必要になります。


WRITER

山本 真郷 / 渡辺 寧

- 山本 真郷 プロフィール -FUJIFILM Frances(フランス現地法人)
Directeur General Adjoin
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士フイルムに入社。入社以来、写真事業に従事し、チェキ(instax)のブランドマネージャー時代に数々のエポックメイキングな商品・販促を企画。著書に『非営利組織のブランド構築-メタフォリカル・ブランディングの展開』(渡辺との共著)。- 渡辺 寧 プロフィール -ホフステード・インサイツ・ジャパン取締役慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、ソニーに入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事した後、ボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。現在は独立し組織開発での企業支援を行う。

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