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パリで働く、日本人マーケターのトレンドレポート(17)「ブラックフライデー」に反発―過剰消費の流れに歯止めか?

2019.12.05 山本 真郷 / 渡辺 寧

「ブラックフライデー」に反発―過剰消費の流れに歯止めか?

グリーンフライデーの公式Webサイト。
ストアロケーで賛同企業の活動内容も案内している(写真右)。

Vol.17
「ブラックフライデー」に反発
―過剰消費の流れに歯止めか?

ファッションを中心とした新しいライフスタイルの発信源である、フランス・パリ。
パリに駐在する日本人マーケターが街中で見つけた、新しいトレンドを紹介。
トレンドをマーケティングと異文化理解の2つのフレームから読み解きます。

「グリーンフライデー」が始動
もう過剰消費は放置しない

米国発祥の大型セール「ブラックフライデー」は今や世界各地に広がり、欧州でも大分、定着してきた印象です。今回はフランスにおける「ブラックフライデー」にまつわる動向を紹介したいと思います。

フランスでは「ブラックフライデー」が導入された2013年から5年で期間中の売上高が34%増えた(CRR 2018)との報告もあり、着実にその勢いは増しています。小売競争の激化に伴い「ブラックフライデー」の告知やセール開始時期は年々早まっており、もはや11月は「ブラックフライデー」一色という印象です。

ところが環境意識(質素倹約・再利用他)の高いフランスでは、経済優先の消費文化を疑問視する声も徐々に高まり、2017年にアンチブラックフライデーとして「グリーンフライデー」運動が立ち上がりました。

主催団体は過剰消費を促すことを避けるよう呼びかけ、2018年は150社が賛同しました。賛同企業は「ブラックフライデー」中にセールを行わず、店舗やWebサイトを閉める、あるいは売上の一部を寄附に回し、再利用やモノ作りを推進する(セールの代わりにワークショップ開催)など各々できることに取り組みました。

現段階では意識の高い企業が中心ですが、CSRを押し出したブランディングとして今後賛同企業が増えることが予想され、相反する2つの動きとどう向き合うか、各社検討が必要となりそうです。

フランスの消費行動の背景に
強い女性性と長期志向の文化

オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステードは国の文化をスコア化する研究を50年にわたって行っています。この研究を基にすると、フランス人の消費行動の背後にある文化的なメカニズムが見えてきます。

ホフステードは6つの軸で各国の文化の傾向を捉えようとしました。アメリカから来た「ブラックフライデー」に対し、フランスで「グリーンフライデー」という消費行動が起こった背景には、もちろんアメリカ的なものに対して懐疑的な態度を取ることが多い欧州の傾向とも言えるかもしれません。

しかし同時に、国民文化の観点から見ると、ホフステードの6つの軸のうちの2つの軸「女性性/男性性」と「短期志向/長期志向」の米仏間の差としても説明することができます。

下図は、この2つの軸のアメリカ合衆国とフランスのスコアの比較です。それぞれスコアは0~100の間で変わります。

【図】「女性性/男性性」と「短期志向/長期志向」のフランス・アメリカのスコア
【図】「女性性/男性性」と「短期志向/長期志向」のフランス・アメリカのスコア
出展)Hofstede Insights Group

これを見るとフランスとアメリカは2つのスコアの高低が、真逆になっていることが分かります。アメリカは、男性性が強い短期志向の文化なのに対して、フランスは女性性が強く、長期志向の文化なのです。

長期的に消費が与える
社会への影響を考えるフランス文化

アメリカのような男性性・短期志向の文化においては、「勝ち取り、短期間で欲求を満たす」ことが良しとされます。「ブラックフライデー」は、お得な商品を勝ち取って欲求を満たす狩場のようなものかもしれません。

対して、フランスのような女性性・長期志向の文化においては、そうした消費で欲求を満たすことは必ずしも称賛されません。それよりも大切なのは福祉社会を実現し、生活の質を高めることであり、短期的な欲求を抑えても、倹約に価値を置きます。

このような文化における価値観の差を考えると、アメリカ文化を体現した「ブラックフライデー」をそのままフランスに持ってきても、文化的に違和感を抱く人がフランスの中で出てくるのは、国民文化差の観点からは自然な流れだと言えます。

ところが、商戦期に日本でも広く報じられた大規模デモ(黄色いベスト運動)が重なったため、小売りや観光産業を中心にフランス経済は大打撃を受けました。「ブラックフライデー」の是非はさて置き、結果的には「グリーン」な年末商戦となったわけです。


山本 真郷 / 渡辺 寧

- 山本 真郷 プロフィール -FUJIFILM Frances(フランス現地法人)
Directeur General Adjoin
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士フイルムに入社。入社以来、写真事業に従事し、チェキ(instax)のブランドマネージャー時代に数々のエポックメイキングな商品・販促を企画。著書に『非営利組織のブランド構築-メタフォリカル・ブランディングの展開』(渡辺との共著)。- 渡辺 寧 プロフィール -代表取締役慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、ソニーに入社。7年に渡り国内/海外マーケティングに従事した後、ボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。現在は独立し組織開発での企業支援を行う。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程在籍。

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