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真帆のケンブリッジ大学留学日記
Vol. 1
~新入生
HIJのインターンとして今年の夏季休暇を過ごし、
ホフステードの六次元モデルにも触れて異文化理解の新たな視点を得た竹谷真帆が、
留学先のケンブリッジ大学に戻り、日々の生活で感じていることをご紹介します。
Matriculation – 入学
イギリスの中でも学期が始まるのが遅いケンブリッジ大学では入学式が10月に行われます。入学式といっても、日本のように新入生全員が大ホールに集まるわけではなく、マトリキュレーションと呼ばれる儀式が各カレッジ(大学が31のカレッジに分かれている)にて行われます。カレッジのガウンを着て記念写真を撮ったのち、1人ずつ規則が書かれた書類に署名をして、正式に学生として認められたことになります。その為、ケンブリッジ生は入学年度のことをMatriculation Yearと呼んでいます。
この様な伝統的な儀式を耳にすると、いわゆる文化の違いを感じるかもしれません。但し、文化は表面的な儀式だけではなく、目には見えない価値観や習慣を含むものとして捉えることができます。その為、ここでは新入生の大学での最初の一週間がどの様に国別の価値観につながっているのかを考えてみたいと思います。
Fresher’s Fair
– クラブ活動への勧誘
まず、10月の1週目に行われるのが “Fresher’s Fair” です。見本市のように各クラブがブースを出すので、新入生は自由に歩き回って、入りたいクラブの情報を入手できます。スポーツ、ボランティア、音楽、活動内容はそれほど日本とは変わらないかもしれません。強いていうならば、人種差別や男女差別など社会的な問題に特化した活動が盛んなことです。
このFresher’s Fairが決定的に日本の大学と違うのは勧誘のスタンスでしょう。合格発表の際から勧誘が始まる日本とは違い、このFresher’s Fairではブースの後ろに立っている者は大きな声で人を引きつけようとはしません。もちろん、活動に興味は持ってもらいたいのですが、新入生が自分から興味のあることにアプローチをすることが当然とされています。
さて、これらの例を通じ見えてくるのは、国別の個人主義・集団主義(IDV)の違いです。スコアを比べてみると、日本(46)、イギリス(67)、ドイツ(89)、の様に比較できます。日本がこの中では最も集団主義に近く、イギリスが中間、ドイツは個人主義が強いということになります。この違いは上記の例にあらわれていると思います。
国別の個人主義・集団主義(IDV)の違い
日本ではクラブ活動への勧誘は、これから一緒に活動する仲間を探す最初の重要なプロセスです。しかし、イギリスでは活動を通じた仲間意識は日本ほど強くない様に感じます。仲間を探すというよりは、活動への興味があるのかどうか、ということに重きを置いています。そのため、多くの活動は年の途中から参加することも可能で、全員で一緒に活動を始めるという意識は薄いのです。日本と比べて、イギリスの人は周りが何を行なっているかに関心がない様に思います。各々が好きなことを行えばいい、そして何をしようと自分にはあまり関係ない、という感じでしょうか。もちろん、親友のレベルになるとまた話は違うのですが。
大学のコミュニティに新入生が馴染めるような心遣いは個人主義の強いドイツよりはイギリスの方が多く見られます。ドイツ人の友達はイギリスの大学に来て、周りの人と終日会って話すことに違和感があるのに対し、イギリス人がドイツに行くと周りが冷たく、心細く感じるかもしれません。現に、私のドイツ人の友達は毎日知らない人と話すことにあまり慣れていなかったため、ひどく疲れたと言っていました。
今回の例は大学という場ですが、多くの組織でも歓迎の方法は国文化によって異なるでしょう。そして新天地への馴染み方やサポートの必要性も文化によって違います。その為、新たな文化圏に移住する場合は歓迎の方法が違うかもしれないということを念頭においておくといいかもしれません。そして移住する人の母国の文化を経験した人に、初めの慣れない時期をサポートしてもらうとかなり心強いのではないでしょうか。
竹谷 真帆
インターン
1998年東京生まれ。幼稚園年長から小学2年まで3年間アメリカに3年間住んだ後、小中高を日本で過ごす。高校2年から経団連の奨学金制度でドイツのRobert Bosch College UWCに2年間留学。2017年10月よりイギリスのケンブリッジ大学に進学。社会学と文化人類学を専攻している。