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異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」(4)不確実な未知の出来事に対する対処法:不確実性の回避

2020.01.27 宮森 千嘉子

異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」(4) UAI

異文化理解のフレームワーク
「ホフステードの6次元モデル」

Vol.4
不確実な未知の出来事に対する対処法 : 不確実性の回避

文化の次元とは、他の文化と比較したときに相対的にとらえることができるもの。
ホフステードは、ある国で生まれ育った人々の物事の選好が、国ごとにどう異なるかを6つの次元(切り口)に体系化し、目で見ることのできない文化的価値観の違いを説明します。

未来に何が起こるのか、知ることはできません。誰もが、そのことを理解しています。
でも、「未来は不確実である」という事実をどう取り扱うかは、国の文化によって異なります。
「未来に何が起こるのかわからない」というあいまいで未知、予測不可能な状況に不安と脅威を覚え、ストレスにさらされることを回避しようとする次元を「不確実性の回避:ある文化の成員が不確実な、未知の状況に対して不安を感じ、それを避けるために信仰や制度を形成している程度*1」といいます。

*1「多文化社会原書第三版: ホフステード他」(有許閣, p177)

世界のスコア 不確実性の回避

不確実なこと、曖昧なことを嫌う文化

不確実性を回避したいという傾向の強い国では、予測可能性を高めれば不確実性を回避できると考えるため、多くの成分化された規則、制度があり、日々の生活の中にも様々な慣習的な規則があります。
なぜなら、人々が不安やストレスを感じやすく、それをできるだけ避けるために、ルール、仕組み、約束事を感情的に必要としているからです。

不確実性の回避度が高い国の特徴
  • 人生に絶えずつきまとう不確実性が脅威です。それを取り除くために形式、ルール、規則が必要とされ、構造化された環境を求めます。
  • ストレスが高く、不安感があります。
  • トップマネジメントは日々のオペレーションにフォーカスします。
  • 医師や弁護士など、「その道のプロ」である専門家を信頼する傾向があります。
  • 学生は「正しい答え」を求め、教師が全ての回答を示すことを期待します。
不確実性の回避度が高い国

中東諸国、中南米諸国、ポルトガル、ベルギー、ロシア、ポーランド、日本、ルーマニア、フランス、 ブルガリア、韓国、ドイツ、台湾など。

不確実なこと、曖昧なことを気にしない文化

ドイツと英国は、多くの共通点を持っていますが、不確実性の回避のスコアには大きな差があります。イギリスの社会学者ピーター・ローレンスは、ドイツでは、たまたま列車が遅れると、禁欲的とも悲劇的ともいえる調子でその事実が伝えられます*2。電車が時刻表通り運行されると「ラッキー」と考えるイギリスは、曖昧さや不確実なことを受け入れる国です。

イギリスには、成文の憲法がありません。憲法はマグナ・カルタや権利章典などの法律、慣習法、そして判例法など、多様な法源によって成立しています。またイギリスからの移民たちによって作られた米国の憲法は、1945年以降6回改正されています*3。つまり、未知の体験であっても、リスクの度合いがわからなくても、まあとにかくやってみよう。法律が機能しなければ、撤回するか改正していこう、と考える傾向が強いのがイギリス・アメリカに代表されるアングロサクソン諸国といえます。

北欧諸国や、中国やシンガポールなどの中華圏、インド。こうした国々においても、規則ややり方にとらわれません。不確実性の回避度が低い文化では、本当に必要なルールのみが存在し、それは忠実に守られます。基本的には結果さえ出ればやり方はどうでも良いと考えているので、仕事の進め方も人それぞれ。成功するためにリスクを取るし、失敗を恐れません。こうした国ではこれまでとまったく違ったやり方(Out of box thinking)、失敗してもトライし続けること(Trial and Error)が推奨されます。彼らは不確実性や曖昧さに直面しても不安やストレスを感じず、リラックスしています。現場のことは現場に任され、ルールの運用も臨機応変というのが彼らの流儀なのです。

イギリスに長く住んでいる友人のエピソードでこんな話がありました。彼女が車の運転をしている際、一方通行を気づかずに逆走し(まだGoogleマップのなかった時代のこと)、警官に呼び止められてしまったそうです。そこで彼女が、「日本から来たばかりなのでこの辺の地理に詳しくなくて」と正直に告白したら、「次からは地図で確かめてから来てね」とあっさり見逃してもらえたとのこと。そして、別れ際に警官が言ったそうです。「イギリスには『禁止されている事以外すべて許される』という諺があるんだよ」と。

*2Peter Lawrence, Managers and Management in West Germany, Croom, 1980 p133

*3諸外国における戦後の憲法改正【第4版】国立国会図書館

不確実性の回避度が低い国の特徴
  • 人生とは不確実なもの、不確実なことが自然。ルールや形式、構造にはこだわりません。
  • ストレスも低く不安感もそれほどありません。
  • 専門家や学者より、常識や実務家を信頼する傾向があります。
  • 学生は学習のプロセス(自由で良いディスカッションの場)を求め、教師が「わからない」と答えても気にしません。
不確実性の回避度が低い国

ジャマイカ、シンガポール、デンマーク、スウェーデン、香港、ベトナム、中国、イギリス、マレーシア、インド、米国、インドネシアなど

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宮森 千嘉子

ファウンダー

サントリー広報部勤務後、HP、GEの日本法人で社内外に対するコミュニケーションとパブリック・アフェアーズを統括し、組織文化の持つビジネスへのインパクトを熟知する。また50 カ国を超える国籍のメンバーとプロジェクトを推進する中で、多様性のあるチームの持つポテンシャルと難しさを痛感。「組織と文化」を生涯のテーマとし、企業、教育機関の支援に取り組んでいる。英国、スペインを経て、現在米国イリノイ州シカゴ市在住。異文化適応力診断(IRC) , CQ(Cultural Intelligence) , GCI (Global Competencies Inventory), 及びImmunity to Change (ITC) 認定ファシリテータ、MPF社認定グローバル教育教材<文化の世界地図>(TM)インストラクター、地球村認定講師、デール・カーネギートレーナーコース終了。共著に「個を活かすダイバーシティ戦略」(ファーストプレス)がある。青山学院大学文学部フランス文学科、英国 アシュリッシビジネススクール(MBA)卒。

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