BLOGブログ
文化とマネジメントの専門家集団であるHofstede Insights Japanのファシリテーター/コンサルタントは経歴も個性も様々。自身の異文化体験について、また日々感じていることをリレー形式で書いてまいります。
こんにちは! シニアファシリテーターの廣﨑淳一です。
今から30年ほど前の話です。生まれも、大学までの学校教育も日本だった私が最初の就職先に選んだのはアメリカ企業の日本支社でした。配属先の直属の上司は1年の任期で日本に赴任していたアメリカ人で、ふたりの先輩はともにアメリカの大学を出た日本人でした。そこに英語がまったく出来なかった私が入ったのですからさあ大変。グループ全員でのコミュニケーションがとれないストレスを抱えることとなりました。その当時、後に自分がアメリカに本社を置く4つのグローバル企業に30年もの長きにわたって勤めることになるとは、全く想像ができませんでした。
私のマネジメントスタイル
なんとか最初の会社で7年が経った頃、マネジャーへと昇格した私のマネジメントスタイルは自然と過去のマネジャーたちを踏襲していました。そのほとんどの期間、アメリカ人が私の上司だったのです。そのスタイルとは上司として仕事の方向性や大枠を示すものの、その進め方は部下の自主性・自発性に任せ、問題があった時にはいつでも相談に乗るので部下から連絡をするというものです。部下から連絡がないということは、自主性を発揮してうまく仕事を進めてくれているのだという理解です。
マネジャーとしての実績をあげ自信がついてきた頃に、インドのソフトウエア開発チームのマネジメントが私の職責に加わりました。それまでと同様にスタッフには友達のようにオープンに接し、意見を求め、現地に出向いた際には親愛の情を示すために、会議前には飲みものを振舞ったりしていました。というのも、アメリカでは自分よりもはるか上席の者が同様にするのを見ていたからでした。
しかし、現地のスタッフとの距離は縮まることはなく、また、社運をかけたシステム開発プロジェクトは遅れがちで、その品質も目を覆うようなものでした。定期的な会議で「どんなに悪い知らせでも叱ったりはしない。むしろそうした行動は称えられるべきだ。安心してオープンに教えてほしい」とか、「マネジャーとしてみんながよりよく働く環境を提供したい」という言葉が伝わらない状況をむなしく感じていたのです。
それぞれの文化で求められるマネジメント
ホフステードモデルを学んだ今ならば、それぞれの文化で求められるリーダー像やリーダーと部下のコミュニケーションのあり方、たとえば何が動機づけにつながるのか、どうすれば効果的なフィードバックができるのかの方法など、アメリカとの違いを意識してが説明できますが、当時の私はアメリカ文化で機能していたマネジメントスタイルが受け入れられないことに焦り、空回りしていたのです。
いまビジネスの現場で同じような問題で苦しんでいる人には、ぜひホフステードモデルを学んでほしいと思います。相手の行動や言動から判断するのではなくそれらを引き起こす深層にある価値観を理解し、お互いの文化的な位置関係を知ることで異文化対応力は確実に向上することでしょう。
▼過去のファシリテータ/コンサルタントブログ記事はこちらからもご覧いただけます。
廣崎 淳一
シニアファシリテーター
モトローラ勤務後、アクセンチュアでITコンサルティング、シスコシステムズで日本及び東南アジア担当CIO(情報担当役員)、マイクロソフトで情報システム統括などを歴任。多くのグローバルプロジェクトや、グローバル組織をリードするかたわら、文化が持つインパクトを身をもって体験した。組織の成功のためにダイバーシティとインクルージョン(D&I)の重要性に気づき、以降は、シスコとマイクロソフトにてD&I活動のスポンサーを務める。また、働き方改革についても、シスコとマイクロソフトでの体験を通じ、多くの講演経験を持つ。現在は次世代リーダーの育成と組織開発に力をいれ、スピーカー、ファシリテーターやコーチとしてクライアントの成長をサポートしている。テンプル大学経営学修士(Executive MBA)。
2019年11月から代表取締役